メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官Tさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。「警察官の違反もみ消しの実態」について語られた前回に続き、今回は「警察官を動画撮影したがる民間人」の現状など、興味深い裏事情を明かしています。

軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その11

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Tさん:私が交番勤務時代に近隣の住民の方から似たようなクレームが来たことがあります。道路の逆走に関してだったんですけど、警察官になってまだ1年目だったでしょうか。若い巡査が道路の逆走を頻繁にしていたようなんです。

そのクレーム入れてきた方は小学校のPTAで理事を務めている女性でして、「学校の前で自転車の逆走を警察官がされていると、生徒たちにも悪影響が出てしまいますのでやめてほしいんです。警察官は市民の模範になる運転をするべきです!」と結構強い口調で…。私がちょうど交番にいましたので、そのクレーム対応を致しました。

しかし、逆走しているのがどの警察官なのかその段階ではわからず、論より証拠が警察官の仕事でもありますので「大変申し訳ありませんでした。今後そのようなことのないよう努めます」みたいな当たり障りのない対応をしたのが悪かったんでしょうね。「逆走している警察官を調べてくれないのでしたら、こちらでその証拠を用意します!」と、何かのスイッチを入れてしまったのかどうか不明ですが、その方の逆鱗に触れてしまったようで、怒って帰ってしまったんです。それから1週間か10日ぐらいしてからでしょうか、再びその方が交番を訪れたのです。

吉田:おお、不謹慎ながら何かドラマチックな展開に期待してしまいます!(苦笑)

Tさん:当時は今ほど自転車の無謀運転に対して法律的な厳しさはなかったものの、そこはやっぱり小学校のPTA理事。自転車も左側走行を守らせたり、歩道走行は注意したりと結構理事の方は交通安全に関して厳しいと伺っていました。

そしてその理事の方が交番へやってきまして、ポータブルDVDプレイヤーで何かしらの映像を見せるんです。何かと思ったら、小学校の校門前で自転車で堂々と逆走している警察官だったんです。その警察官の映像を見ると、横顔の特徴で私の先輩であることが確認できたんですけども、既に先輩は別の所轄へ異動になっていて、私がいた交番には在籍していませんでした。まさか証拠となる映像を……と言いますか、小学校の防犯カメラの映像をPTA理事の方が持参するとは思っていなかったので、驚いたのと同時に、巡査部長含め、改めてその小学校へ数名で謝罪しに行ったんです。

吉田:偉いですね。警察官は謝らないことで有名なのに!

Tさん:既に異動して在籍していないとはいえ同僚のミスですし、特に子どもたちには模範となる運転を心がけるのが警察官の使命ですから謝罪することは当然だと思いました。巡査部長は渋々足を運びましたが(苦笑)。

吉田:上司ってもんはそういうもんです(笑)。論より証拠を実践したPTA理事の方は個人的には賞賛に値しますよ。

Tさん:動かぬ証拠ですからね。最近では一般の方が我々警察官を撮影して観察するのを興味本位ならぬ趣味にしているとの話も聞きます。

吉田:それはどういうことですか?

Tさん:YouTubeとか動画投稿サイトへアップロードするネタ作りなんですよ。これが結構問題になってまして、警察官は公務中ですと肖像権がありませんので、ビデオ撮影されても何も文句は言えないことを利用してなんですけどね。

吉田:例え公務中で肖像権がないにしても、その公務を妨害するような撮影の場合はダメじゃないですか!

Tさん:そういうのを知らない方もやはり多いようで、まぁ基本撮影されたとしても私たちはその撮影理由とかを伺う程度しかできないですからね。交通違反で捕まった場合や職務質問された瞬間から、スマートフォンで動画を撮影し始める方が増え始めたんです。

吉田:でも、それって僕ら民間人からすると、警察官って威圧的な態度で押さえ付けてくる感じで常にマウンティングしてくるじゃないですか。僕は撮影する側を応援しちゃいますけどね。公務を妨害しない程度の撮影でしたら積極的に行なうべきだと思います。

Tさん:私たち同僚の間では正直撮影されるとやりづらいのは間違いないんですが、ヘタな発言もできなくなりますし、撮影されたら動画投稿サイトへ掲載される、と最初からそういう頭で接するようにはしてますけどね。

吉田:クルマでしたらドライブレコーダーが会話から全てを撮影してくれていますので、その映像をインターネットへ流すのは世界中で行なわれていますし、”誰かが見ている感”を警察官へ与えることは弱者の僅かながらの抵抗だと思ってます。Tさんは撮影されたことあります?

Tさん:ええ、ありますよ。私の場合は自転車対自転車の接触事故現場でですね。

交差点での出会い頭での接触事故だったんですが、その日は雨が降ってまして、被害者側の自転車に乗っている男性は優先道路を走行。加害者側の女性は自転車運転中に傘をさして片手運転で一時停止無視での飛び出し。

男性は女性が一時停止無視で飛び出してくるとは思わず衝突した被害者だったんですが、その女性の自転車の真横へ激突したもんですから、女性は数メートル先へ飛ばされて全身を打っていた様子だったんですね。

吉田:男性はケガはなかったんですか?

Tさん:なかったですね。女性の自転車の左側面から衝突する感じでしたので、フロント部分の前輪箇所がぐにゃって曲がってましたけども。

吉田:こんなこと言うとドライだと捉えられてしまいそうですが、女性側の自業自得ですね。東京都では自転車運転中に傘をさすことは禁止ですし、路面や標識に当然一時停止の”止まれ”サインはあったと思うんです。僕の考えでは、その女性は自転車だって車両という認識欠如だったのではなかろうかと。軽車両だって車両なんですから一時停止は当たり前なので、同情の余地はないですなぁ。僕は男性のほうを支持します(苦笑)。

Tさん:どちらが正しくてどちらが悪いのかは司法判断ですからなんとも言えませんが、個人的見解では男性側が確実に被害者です。しかし、ここから急展開したんです。男性がスマートフォンを取り出して動画の撮影を始めたんですね。女性がケガしている現状を目の当たりにしている現場で。当然周囲には目撃者やギャラリーが集まってきていたんですが、その男性は一切ケガ人介護をせず、無言で動画を撮影しているだけ。

吉田:なんだか怖いですね。もちろん、それって男性が事故の状況を警察へ提示するために、女性が飛び出してきたのが悪い=過失を分からせるためだったんじゃないでしょうかね。

Tさん:鑑識はそのような事故直後の映像があったりすると大変助かるんですけども、警察官という立場上、そして道路交通法的にも、交通事故が発生した場合、加害者と被害者などを含め、その現場で最初に行なわなければならないのは負傷者の救護なんですね。道路交通法でも救護義務として定められているので、動画撮影に夢中になっていたこの男性の行為は義務を果たしてないとして、逃げているわけではないですが”ひき逃げ扱い”で重罪処分を課すことになりました。

吉田:えええええええ!?!?!?

(次回へつづく)

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出典元:まぐまぐニュース!