ここへきて世界的な核軍縮の動きが止まっている(写真:Han Jong-Chan/Yonhap/via ロイター)

核廃絶を目指す努力は、時として目的に反する結果を招くことがある。核なき世界の実現は口で言うほど簡単ではない。

冷戦終結以降、世界の核備蓄は著しく減少した。ロシアと米国の核兵器はそれぞれ8割減少。英国とフランスはもともと少なかった備蓄を一段と縮小させている。1968年に調印された核不拡散条約(NPT)の批准国として、そうする義務があったからだ。

西欧の核軍縮が止まったワケ

だが、最近は核軍縮の動きが止まっている。ロシアは核戦力の近代化を進め、公式声明で核兵器に言及するケースが増えている。西欧の核軍縮が止まったのは、これが理由だ。一方、米国も核戦力近代化の検討を進めている。

パキスタンは核弾頭原料の生産を継続。中東から核を一掃しようとする試みは、イスラエルのせいで暗礁に乗り上げている。そして、北朝鮮の核への野心が新たな核戦争の危機を創り出している。

こうした中、核兵器禁止条約が122の国連加盟国によって採択された。しかし、残念なことに、当初は価値ある人道的な試みだったものが、ひどく欠陥だらけの提案に終わってしまった。

まず、核保有国がいっさい支持していないため、この条約では核弾頭は一つも減らない。さらに問題なのは、この条約でNPTが弱体化するおそれがあることだ。国連常任理事国5カ国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)を含む広範な国から支持を得ているのはNPTだ。

そして、核抑止力をも条約違反としたことで、核兵器禁止条約は同盟国の核の傘に守られている欧州と東アジアの安全を現実に危険にさらす可能性がある。

全面的な核軍縮は一気にはなしえない

当初草案には、核を抑止力とすることを明確に禁じる文言はなかったが、7月に採択された最終案は違った。これは重大な変更だ。

条約の支持者は、核兵器禁止の世論が高まれば、核保有国は核を放棄せざるをえなくなると言う。あまりに浮き世離れした考えだ。単に国際的な批判が高まるだけで、中国、イスラエル、パキスタン、ロシアが素直に核兵器を手放すだろうか。少しでも現実を知っていたら、誰も真に受けない話だ。

結局のところ、全面的な核軍縮は一気にはなしえない。それより、NPTに基づく漸進的アプローチのほうが目的にかなうだろう。