市場規模1.6兆円 米「マットレス業界」を革新するスタートアップ

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新興ブランド勢の躍進が目覚ましい米マットレス業界で、さらなる変革が起きようとしている。市場規模150億ドル(約1.6兆円)のマットレス市場は近年、オンライン販売を行うスタートアップの台頭によって転換期を迎えていた。

9月上旬、新興ブランドの一つであるリーサ・スリープ(Leesa Sleep)が、全米に80店舗余を展開するインテリアのセレクトショップ「ウエスト・エルム(West Elm)」での販売を開始した。

リーサは、小売大手ターゲットからの7500万ドル(約80.7億円)をはじめとする多額の資金調達で有名なキャスパー(Casper)や、パープル(Purple)などのライバル社に比べるとメディアの注目度はまだ高くないが、今年の売上1.5億ドル(約161億円)超を見込んでいる急成長中の会社だ。

リーサとウエスト・エルムには、社会貢献を重視する企業としての共通点がある。リーサは10台のマットレスが売れるごとに1台を寄付しており、これまで2万台近くを50以上のホームレスシェルターに提供してきた。

一方、上場企業ウィリアムズ・ソノマの傘下にあるウエスト・エルムは、環境や人権に配慮した商品展開で知られ、2017年時点で全体の20%を占めるフェアトレード製品の割合を2019年には40%に引き上げることを表明している。

バージニア州バージニア・ビーチに拠点を置くリーサは2014年、ダイレクトマーケティング業界のベテランであるウルフと、祖父の代からマットレス製造に携わるジェイミー・ディアモンスタインが創業。同社は今年6月、エコ家庭用品メーカーのセブンス・ジェネレーションのCEO、ジョン・レプルーグルの主導で2300万ドル(約24.8億円)を資金調達したばかりだ。

新たにリーサの会長に就任したレプルーグルは「リーサは真心と目的意識を持った企業です」と言う。

「年商1000億円」が必達課題

出資を受けたリーサは今後、マットレスに加えてプラットホーム型のベッドや枕を開発し、より多くの企業と提携することで5年以内に年商10億ドル(約1080億円)を目指す。

「それがレプルーグルから与えられた課題です。『(リーサに)参加するなら、5年後には(売上を)10億ドルにしたい』と言われました」とウルフは語る。同社はまた、ウエスト・エルムの店舗がある10の地域に合計1000台のマットレスを寄付する予定だ。

一方、ウエスト・エルムの好調ぶりも著しい。ウエスト・エルムの他にキッチン用品ブランドのウィリアムズ・ソノマや家具ブランドのポッタリー・バーンなどを擁する親会社のウィリアムズ・ソノマ社の昨年の総売上高51億ドル(約5490億円)のうち、9億7200万ドル(約1050億円)がウエスト・エルムの売上だ。成長率も他ブランドより高く、この3年間は2桁の収益増を記録し続けている。

ウエスト・エルムはまた、B2Cオンライン販売の新興マットレスブランドを店頭で扱う小売の先駆けでもある。キャスパーやリーサなどの新興ブランドは、スプリングの入っていないマットレスを圧縮して梱包することで配送コストを抑え、手頃なマットレス通販ビジネスを実現したが、ウエスト・エルムはそれらのブランドに新たな販売経路を提供してきた。

「私たちは常にブランドを刷新する方法を模索しています」と同社のマーチャンダイジング部門のドン・マチョッカは話す。

ウエスト・エルムのかつてのパートナー企業であるキャスパーは、今年はじめにターゲットと提携し、6月からターゲット店頭での販売を始めた。ターゲットは当初、10億ドルでキャスパーの買収を試みたものの交渉が成立せず、7500万ドルを同社に投資することで落ち着いたと報じられている。

ウルフによると、リーサにもウエスト・エルム以上の規模を持つ小売チェーンからのオファーがあったという。しかし、ウルフはよりスタイリッシュで、社会貢献を企業理念に掲げるウエスト・エルムと組むことを選んだ。

ウエスト・エルムとの提携により、リーサはウィリアムズ・ソノマ傘下の他のブランドにもパイプができたことことになる。ウルフはポッタリー・バーンなどでの展開も視野に入れているのだろうか? 

「そうなることを願っています。実際、ウィリアムズ・ソノマやポッタリー・バーンの人々を紹介してほしいと頼みました」とウルフは笑う。「でもその前に(ウエスト・エルムで)我々の力を証明しなければなりません」