SILENT SIRENの愛がこもった最大級のリスペクトとおもてなし 『サイサイフェス2017』での景色

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「ただいまより、サイサイフェスを開催いたします!!」

 すぅ(Vo&Gt)の高らかな宣言により、SILENT SIREN主催『サイサイフェス2017』がはじまった。「こんなバンドに出て欲しい、コントやトークもやりたい」とメンバー自らがアイデアを出しながら企画を練り、2014年に初開催となった『サイサイフェス』も今年で4回目。毎回、SILENT SIRENと交流のあるアーティスト、メンバーが好きなアーティストが集まる、“サイサイの現在”を象徴するような夏フェスだ。今回は3つのステージが設けられ、バンドからアイドルまで全18組のライブが繰り広げられた。

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 8月30日の新木場STUDIO COASTは快晴の空色の下、ピンク色の賑わいを見せていた。

 あいにゃん(Ba)画伯による今年のキービジュアル、エド・ロス風に描かれたマスコットキャラクター、サイサイくんのピンクフラッグがお出迎え。カラフルな販売車両による多彩なフードコーナーにフェス気分が高まる。中でも人気を集めていたのは、こってりラーメンでおなじみの「天下一品」。サイサイフェス限定「サイサイスペシャルラーメン」が来場者の舌を唸らせていた。ひなんちゅ(Dr)が学生時代にアルバイトをしていた経緯もあり、CM出演をはじめこれまでも多くのコラボレーションを果たし、今回の出店に至った。ちなみにひなんちゅより「天下一品は“天一(てんいち)”と略されるの嫌います」とのこと。

 メインステージのスタート時間より少し前、会場に入ってきたばかりの人たちの拳を振り上げさせたのは、ラウンジステージのHEADLAMP。「NEW ORDER」「夏、駆けっ娘」と、アツくも爽快なナンバーが夏の終わりの激情を揺さぶってくる。

 メインステージのトップバッターを飾ったのは、フレンズ。おかもとえみ(Vo)、ひろせひろせ(Key)の掛け合いによるツインボーカル、the telephonesの長島涼平がベースを務める話題の5人組、渋谷系ならぬ“神泉系”バンドだ。小粋なシティポップと独特のユーモア性で会場をあたためていく。「なんだか元気のないたろうくん(三浦太郎/Gt)を魔法の言葉で元気づけていく」というなんとも不思議なミュージカル「元気D.C.T〜プロローグ〜」も、普段はこうした他人様のイベントではやらないそうだが、すぅのお気に入りということで特別にセットリストに組み込まれ、連呼される魔法の言葉「タタンパ!タタンパ!プピプピプピ〜」とともに会場内は和やかな空気に包まれた。

 続いて登場した、バンドじゃないもん!は「君はヒーロー」でスタート。甘夏ゆずがギターとキーボードを抱え、望月みゆのベースがブンブンうなり、鈴姫みさこが笑顔を振りまきながら骨太なドラマーと煌めくアイドルの顔を巧みに使い分けていく。ラストの「しゅっとこどっこい」では七星ぐみの「あわてんぼうのみなさん、バンもん!とサイサイが送る、リラックス体操のじかんで〜す!」の掛け声で、サイサイ4人が乱入してのリラックス体操。アイドルとバンドを縦横無尽に行き来する怒涛のようなステージでオーディエンスを魅了した。

 さて、お次はシークレットゲスト。登場したのはなんと、ピコ太郎だった。とはいえ、事前発表されていたシルエットですでにバレバレ。「こんなにおごそかな雰囲気になるんですねぇ」と、場内ノーリアクションの洗礼を受けながらも、世界的大ヒットナンバー「PPAP」をはじめ、既に来年のお盆を先取りしたという“ピコ太郎史上最も長い”新曲「Love & Peace ONDO」をライブ初披露。最後はサイサイ4人とのコラボ「フジヤマディスコPPAP」で今年3月の武道館公演以来の再共演を果たした。テレ朝動画『サイサイてれび!おちゃの娘サイサイ』ではおなじみ、過去には『サイサイフェス』の司会を務めてきた古坂大魔王との縁もあり、絶妙なトークとともに息のあったステージを見せた。

 ラウンジステージにはリアクション ザ ブッタ。昂ぶった情熱が迸るサウンドに佐々木直人(Vo&Ba)の妙に色気のある歌声がつきぬける。うってかわって、HelloMusicの独自のポップセンス、ちぃ太(Vo&Gt)の甘い歌声とバルクに響くガレージサウンドが心地良い。HelloMusicは『サイサイフェス2015』内で行われた「teenaオーディション」の優勝者だ。

 この「teenaオーディション」は今年も行われている。「20歳以下で編成されたバンド。又は20歳以下のソロヴォーカリスト」という条件で音源審査、サイサイメンバーによる2次審査を経た4バンドがテントステージで熱いライブを繰り広げていたのだ。

 なんと9歳のメンバーもいるという小学生ガールズバンド、Acc’entが「八月の夜」「KAKUMEI」といったSILENT SIREN楽曲を演奏し、場内を沸かせた。「私たち、盛り上がらないんで休憩がてら聴いてください」と、内包的ながらもエモーショナルなドリームポップを響かせた女性ベース&ボーカル、女性ドラマー、男性3人によるtoroloは、ひなんちゅの後輩にあたる中央大学杉並高校のバンド。GROWING’Sは、中学生とは思えない骨太なギターと野太いボーカル、アグレッシヴなドラムが印象的な兄弟ロックデュオだった。大阪から来たというMade in Raga-saは、メリハリのついたリズムのエッジを効かせたギターロック。ニヒルにキメた男性メンバーの中で紅一点ベーシストのしなやかなグルーヴが光っていた。4組ともまったく異なる音楽性と個性を持ったバンド。オーディション結果については後ほど記したい。

 メインステージに戻ろう。すぅが「『閃光ライオット』に出ていた頃(2009年)から好きでコピーしたこともある」という、GLIM SPANKY。亀本寛貴(Gt)のエスニックなフレーズが響き、松尾レミ(Vo&Gt)がゆっくりと歌い始める「アイスタンドアローン」。亀本のブルージーで枯れた極上のギターと、松尾のハスキーでスモーキーな歌声に酔いしれる。亀本がサイサイのことを「キレイな人たちだから最初はビビってたけど、気さくないい人たちだった」と言いつつ、「いつもはTシャツのサイズはMなんですけど、サイサイTシャツはLじゃないと着られなかった。タイトめな作りで、やっぱりその辺は厳しい」と会場の笑いを誘う。「いつまでも瞳をキラキラさせて、好きなものは好きと言える大人になりたいという願いを込めて作った曲」という松尾の紹介ではじまった「大人になったら」が場内とオーディエンスの心に深く響いた。

 「お笑い芸人のような名前で、」と、お笑い芸人のようなテンポの良いコミカルなMCで空気をやわらげつつも、しっとりと美しいハーモニーで観客の心を惹きつけた吉田山田。吉田結威のアコースティックギターに山田義孝の歌が乗り、そこにまた吉田が声を重ねていく。おそらくここにいる大多数が彼らのステージをはじめて観たのであろう。息遣いまで絶妙な2人の澄んだ歌声に、思わず「うまっ、」という声がフロアから上がり、吉田が自身の母への想いを綴った「母のうた」では、どこからかすすり泣く声も聞こえた。

 その頃、ラウンジステージを彩っていたのは、SILENT SIRENの所属事務所の後輩アイドルグループだ。映画をモチーフにした6人組、閃光ロードショーはロックテイスト溢れるナンバーをエネルギッシュに、読モBOYS&GIRLS×Zipperアイドルオーディションから誕生した26時のマスカレイドはキラキラとしたフレッシュなステージで、2グループとも異なるアイドルらしさでファンを熱狂させていた。

 テントステージでは、人気中学生モデル、ネネ(Vo&Gt)とレイナ(Vo&Ba)によるユニットSCALLAと、SILENT SIRENのライブサポートを務めていたギタリスト“みっちー”こと、michirurondoが、それぞれのガールズロックを展開していた。

 ラウンジステージとテントステージ、2ステージのライブがすべて終了すると、メインステージで「teenaオーディション」の結果発表が行われた。見事優勝に輝いたのは、Made in Raga-sa。 SILENT SIRENのライブにオープニングアクト出演という栄冠を手にし、さらにフェンダーの真っ白なテレキャスターがサイサイメンバーの手より贈られた。

 昼間よりさまざまな活気に包まれてきたこのフェスも残すはメインステージのみ。「キレイなお姉さん4人の前に、こんなむさ苦しい男が出てきてすいません!」感覚ピエロのお出ましだ。彼らの必殺技、サウンドチェック時の国民的アイドルグループのカバーでオーディエンスのハートを一気に鷲掴み、1曲目の「CHANGE MY LIFE」で会場全体の空気を完全に掌握した。ダンサブルな楽曲、タイトな演奏とキレのあるのステージング、横山直弘(Vo&Gt)の煽り……、どこかシニカルで確信犯なこのバンドはライブがなんたるかを分かっている。ノイジーな疾走感が暴走する「質疑応答」、「今日YouTubeで視聴年齢制限が掛かったHな曲」と「A BANANA」をたたき込み、「O・P・P・A・I」爆弾投下。サイサイメンバーの名前を入れ込んだコールアンドレスポンスで場内は興奮の坩堝と化した。感覚ピエロらしい圧倒的爆演で熱気が最高潮に達した会場をトリのSILENT SIRENへと渡す。

 満を持して登場したSILENT SIREN。ここまでいろんなアーティストからパワーをもらってきた彼女たちは、初っ端からフルスロットルで「爽快ロック」を放つ。間髪入れずにアッパーな「八月の夜」で昂揚を加速させ、キラーチューン「吉田さん」を畳み掛ける。いつもとは違い、あえて私服でステージに立つ姿は、気合いが入りつつもどこかリラックスして場を楽しんでいるように見えた。

 それが豹変したのが「フジヤマディスコ」だ。昨年末のライブ初披露以来、演奏されていくたびに印象が変わっていったこのダンサブルなナンバー。あいにゃんのスラップはどんどんグルーヴィーになっていき、ひなんちゅのリズムはますます図々しさが増している。もちろん、いい意味での存在感だ。そこに乗っかるすぅの歌はどこかアイロニカルで、すべてを見透かしたようにゆかるんが高らかにジュリ扇を振り回し、悠々と鍵盤を鳴らす。彼女たちの演奏にここまでの“アクの強さ”を感じたことがあっただろうか。自由闊達、型破り。それでいて、培った経験からの貫禄と余裕を感じる。せめぎ合う4人の個性が生み出すバンドマジック、SILENT SIRENのバンドとしての強度をまじまじと見せつけられた瞬間でもあった。

 この日、初披露となった10月11日リリースの新曲「ジャストミート」。すぅが「高校野球を見ながら作った」と紹介されたこの曲は、手グセで弾かないギターリフと切れの良いリズムが心地よく、サイサイらしさ全開のひたすらキャッチーなメロディが耳に残る。そんなノリの良いナンバーに、初めて聴くオーディエンスも腕を上げて全力で応えていく。

 ひなんちゅの刻む祭囃子のリズムに合わせて、湧き上がる「わっしょいわっしょい!」の掛け声。サイサイくんもステージに登場しての「What show is it?」、フロア全体が旋回するタオルに埋め尽くされた「ぐるぐるワンダーランド」でSILENT SIRENのステージは終了した。

 「アンコールは出演者のみんなが盛り上げてくれるということで」とすぅが口にすると、ピンクのサイサイフェスTシャツを着た出演者全員がステージに集合。バンドじゃないもん!の甘夏ゆずがギターで参加し、「みんなで歌って踊って、騒いでいくぞーー!!」ゆかるんの掛け声で「チェリボム」が始まる。ピンク色になったステージとフロア、みんなが所狭しとなりふり構わず踊り乱れるさくらんぼダンス。SILENT SIRENが創り上げる『サイサイフェス』らしいハッピーな景色が広がり、最高のフィナーレを迎えた。

 アーティスト主催のフェスやイベントも多い中で、これほど主催アーティストの色が出るイベントも珍しい。「こんなにカッコイイ人たちがいるんだぞ、ということを私たちのファンにも知ってもらいたいし」イベントの最中、すぅが語っていた何気ない言葉にすべてが込められているような気がした。「バンドマンの友だちが少ないのがコンプレックスだったんです。ちょっとずつ自分たちの気持ちを伝えて、こうやって対バンしようよって言ってくれたり」出自ゆえの偏見や誤解も多くあったぶん、そうした想いは人一倍強かったのかもしれない。

 ライブ合間の各出演者とのトーク、他アーティストのステージをずっと袖から見つめ、ときにフロアで観客と一緒になってノリノリで手を上げている。前日は準備のために4人揃って買い出しに出かける……、そんな彼女たちが創っているフェスなのだ、楽しくないわけがない。ものすごくDIYで、どこか学生時代の文化祭を思い出す懐かしさもあったりする。それは、出演者と来場者に向けられた、SILENT SIRENからの愛が込められた最大級のリスペクトとおもてなしだ。

「あれだけ有名な人達でも終始イベント中会場を駆け回り、イベントを作り上げている姿を見て心から感動した!めちゃくちゃバンドマン。血の通った最高のバンド、イベント!」 ーー生松圭吾(HEADLAMP/Gt)Twitterより

 最高のイベントを最高の状態で終えた彼女たち。イベントの成功はもちろん、『SUMMER SONIC』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』をはじめ、この夏は例年以上にさまざまなイベントに出演した経験と自信が如実に表れたステージでもあったように思う。そして休むことなく、6月よりはじまった『5th ANNIVERSARY SILENT SIREN LIVE TOUR 2017『新世界』』の後半戦が9月からスタートする。海外公演、そして「軌跡」と「奇跡」を掲げた11月の日本武道館2Daysが待っている。“てっぺん”に向かってひたすら突き進むSILENT SIREN。次はどんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。(冬将軍)