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子どもへのわいせつ問題を起こして処分を受けた教員が、別の都道府県で再び教壇に立って、問題行動を起こしていることを受けて、文部科学省は来年度から、都道府県教育委員会の間で運営する「教員免許管理システム」の大幅改修に乗り出す。処分情報を共有して、問題教員が別の場所で雇用されることを防ぐことが狙いだ。

共同通信によると、教育職員免許法で、懲戒免職処分や分限免職処分、禁固以上の刑を受けた教員の免許は失効すると規定しており、免許管理システムにも登録されるが、現行のシステムは検索方法が複雑で、情報共有がうまくいってないという。また、停職以下の処分は官報にも載らず、自己申告頼みだという。

過去には、埼玉県の公立小学校で教諭をしていた際に、児童売春・ポルノ禁止法違反(提供)容疑で逮捕され、罰金の略式命令と教育委員会からの停職6か月の懲戒処分を受けたにもかかわらず、愛知県の公立小学校に臨時任用講師として採用され、今度は女児に対する強制わいせつ容疑で逮捕されたケースがあるなど、情報共有の課題が指摘されていた。

今回のシステム改修では、自治体の個人情報保護の規定の違いにより、免許の失効理由や、官報に載らないような情報をどこまで共有できるのかは不透明だというが、過去の処分歴を共有して、問題教員を雇用しないようにすることに課題はないのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●一律に制限すると、職業選択の自由に対する大きな制限となる

「公立学校の教諭という前提でご説明します。

地方公務員の任用は、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならないとしており(地方公務員法17条)、特に採用に当たっては、受験成績によって決めるのが基本となっています。これは、縁故採用や不正採用などを排し、採用の公正を図るのが趣旨です。もちろん『受験成績』には面接などの評価も入りますが、公になっていない過去の処分歴などについて、評価の対象とするにはおのずと限界があります。

また、同法の定めによる場合でなければ、分限による降任、免職や懲戒処分をすることができないと定め(第27条)、一定の身分保障がされていますので、別の地方公共団体職員であった時期の処分と同じ理由で処分することもできませんし、過去の処分があったことを隠して採用されたことだけを理由に懲戒処分することも基本的にはできません。

もちろん教育職員免許法による免許状が懲戒処分などにより失効や取上げになっており、教職員に就くのに必要な免許状がないにも関わらず採用された場合には、失職なり懲戒処分を受けることがあり得るのは当然です」

では、どういった場合が問題になりうるのか。

「免許状の失効や取上げがなく、必要な免許状を有している者が採用されるケースです。

過去にわいせつな行為をしたものの、地方公務員法上の欠格事由や教職員免許法上の免許状失効事由に該当しない程度の処分を受けた人の採用を一律に制限することは、職業選択の自由に対する大きな制限となってしまいます。

また、過去の事案において、重大とは言えない処罰や処分を受けた人が、就職に大きな制限を受けてしまうという結果になれば、事実上教職員での再起や更生の道を閉ざすことになりかねません。

さらに、本人の同意なく、そうした情報(処分内容や処分理由など)をデータベース化することも行政機関個人情報保護法や個人情報保護条例上、やはり問題があります。

もちろん、新たに別のわいせつ行為を犯してしまったような場合には、新たな刑罰や懲戒処分等を受けることになりますし、その処分を決めるに当たっては、過去の同種の処分歴というのも参考にされ、結果的として地方公務員法上の欠格事由にあたることになり、教職員から排除されうることになります。

しかしながら、単に過去に処分歴があったという事実が一人歩きしてしまうと、その人の不利益が大きく、また扱い次第では本来の目的以外の運用がなされてしまう事態になりかねないものであって、こうしたシステムの構築や運用は慎重にならざるをえません」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:弁護士法人ASK市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/