4歳、5歳、3歳の順で多い(写真と本文は関係ありません)

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おたふく風邪(流行性耳下腺炎)による合併症のひとつに、難聴がある。日本耳鼻咽喉科学会は2017年9月5日、過去2年間で難聴になった人が少なくとも336人いたとする調査結果を公表した。

基本的に症状が軽いおたふく風邪だが、もし難聴になると現在は有効な治療法がない。J-CASTヘルスケアの取材に応じた耳鼻咽喉科の男性開業医は、「怖い病気」と表現した。

3〜6歳で約60%を占める

日本耳鼻咽喉科学会の発表によると、2015〜16年の全国調査で、336人中詳細のわかった314人のうち、約8割に当たる261人が日常生活に支障をきたす高度の難聴になった。また14人が両耳とも難聴となり、うち11人は補聴器の使用や人工内耳の埋め込みをしている。難聴になったのは5〜10歳の子どもが多かった。

おたふく風邪は、ムンプスウイルスの感染により耳下腺が腫れ、おたふくのようにぷっくりと膨れるのが特徴。国立感染症研究所によると、報告患者の年齢は4歳が最も多く、5歳、3歳と続く。3〜6歳で約60%を占める。発熱などはあるが、通常1〜2週間で治る。同研究所がウェブサイトに掲載している年別の発生報告数を見ると、2000年以降では2001年の25万4711件が最多で、2004〜06年、2009〜11年はそれぞれ連続で10万件を超えた。2013〜14年は4万件台と減っていたが、15年には8万1046件と急増した。取材にこたえた耳鼻咽喉科医も、「この1、2年はおたふく風邪の患者が増えている感触です」と話す。

日本耳鼻咽喉科学会の報告数だけを参考にすると、年間「万単位」の患者数がいる中で難聴になる割合はそれほど多くはないと考えられる。ただ、いったん難聴になると治すのが困難だ。耳鼻咽喉科医はJ-CASTヘルスケアに、以前母親に連れられてきた、「片耳が聞こえない」という小学生の患者を診察したことがあると明かした。母親に経緯を聞いたところ、おたふく風邪にかかった後に症状が出たとの話だった。ただ診察の時点では、患者がおたふく風邪から時間が経過していたため、難聴は別の原因だった可能性もある。いずれにしろ、難聴の治療は難しいとの判断をせざるを得なかった。

定期接種中止となって20年以上過ぎている

おたふく風邪は比較的症状が軽度で、「軽い風邪程度としか感じなかったり、ほとんど症状がなかったりする人もいます」と、耳鼻咽喉科医は説明する。ところが、たとえ本人が気づかない程度の症状だったとしても、難聴にならないとは限らないようだ。

難聴の有効な治療法がないため、日本耳鼻咽喉科学会では予防接種を推奨する。かつては法律に基づいて行政が費用負担をする「定期接種」だった。ところが副作用が見つかり、1993年以降は基本的に自己負担となる任意接種となった。そのためワクチンの接種率は低下している。

取材した耳鼻咽喉科医によると、定期接種が中止となって既に20年以上過ぎていることから、「ママ世代」でもワクチン接種していない人が珍しくない。「子どもはもちろん、おとなでも過去におたふく風邪にかかっていなければ、個人的には予防接種を勧めます」と話した。成人で過去の記憶があいまいな場合、耳鼻科で検査をすれば自分がおたふく風邪にかかったかどうかが分かるという。