振り込め詐欺防止の啓発用の看板を置いているATMもある=福岡市中央区

写真拡大

 振り込め詐欺などの被害を防ごうと、高齢者による現金自動預払機(ATM)を使った振り込みの利用を制限する取り組みが、金融機関で広がっている。

 3月に福岡ひびき信用金庫(北九州市八幡東区)が、九州・山口では初めてサービスの制限を始めたところ、被害を食い止める成果も出た。(村上智博)

 ◆「賛同者は多い」

 今年4月、福岡ひびき信金の利用者から、同信金に「ATMで振り込みができない」と相談があった。窓口で確認したところ、詐欺の可能性が浮上した。

 「電話先の言うがまま振り込んでいれば、被害に遭う可能性が高かった」(広報担当者)という。

 このケースを含め、同信金が高齢者の振り込み制限を始めてから、2件の詐欺被害を阻止できた。反対に、詐欺被害は1件も起きていない。

 同信金業務部の堀田経博・業務統括グループ長は「犯行グループには『ひびき信金の利用者には、詐欺を働いてもダメだ』と思わせる効果があった。高齢者からも利用制限への苦情はなく、賛同者が多い」と語った。

 振り込め詐欺や、医療費などの還付を装った還付金詐欺など、特に高齢者を狙った犯罪は後を絶たない。

 警察庁によると、今年の上半期だけで「特殊詐欺」は全国で約8800件発生した。被害総額は約186億円と、毎日1億円を上回る被害が生じている計算になる。被害者は、65歳以上が7割を超える。

 さまざまな形態はあるが、犯行グループは、言葉巧みに高齢者をATMへ誘導し、多額の現金をだまし取る。行員が警戒する金融機関ではなく、商業施設のATMが使われるケースも少なくない。

 被害を防ぐ一つの策が、高齢者によるATMの振り込み制限だ。警察庁は今年に入り、金融庁や全国銀行協会を通じ、ATMの利用制限を要請した。

 九州・山口では福岡ひびき信金に続き、7月に宮崎銀行と、山口フィナンシャルグループ(FG)傘下の山口銀行や北九州銀行が制限に踏み切った。

 山口FGの場合、70歳以上で、過去1年半にキャッシュカードでの振り込み実績がない利用者を対象に、カードで振り込める限度額を1回あたり最大10万円とした。

 8月には十八銀行や肥後銀行も導入した。

 ◆窓口でも確認

 大分銀行は今年11月をめどに、70歳以上で、過去3年間にATMで振り込みをした実績がなければ、ATMでは送金できなくする方向で検討している。

 多額の現金の振り込みを希望する場合には、窓口まで来てもらう。そこで銀行側が声をかけ、取引内容を確認する。

 同行総合企画部の担当者は「大分県警から『一日も早く対策を講じてほしい』と強く要請されている。ATMのシステム改善にコストはかかるが、対策を急ぐ必要があると判断した」と語った。

 ふくおかフィナンシャルグループ(FG)傘下の福岡、熊本、親和の各銀行やも同じ11月に、振り込みサービスに一定の利用制限をかける方針だ。

 西日本シティ銀行は、対象を高齢者に限らず、7月に入り、ATMでの1日当たりの利用限度額を従来の半額の50万円に制限した。同じグループの長崎銀行も9月19日から同じ措置を取る。

 全国でみると、今年7月末現在で、39都道府県の232を数える金融機関が、ATMの利用制限を導入した。

 その結果、67件の被害阻止につながったという。