(写真提供=SPORTS KOREA)

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北朝鮮の6度目の核実験によって、ますます緊張感が高まっている朝鮮半島。そんななか韓国では、“女性の徴兵制”がにわかに注目を集まめている。

韓国大統領府のホームページには「国民請願と提案」というコーナーがあり、韓国国民が大統領府にさまざまな請願ができる。一定の水準以上の支持を受けた請願に対しては、大統領や各長官が直接返答するのだが、そこで嘆願されたのがきっかけだ。

「女性も軍隊で一般兵となるべき」という主旨の請願が8月30日に上がり、それから10日も経たない9月5日には署名者数が10万人を突破。韓国メディアも「“女性も軍隊に送れ”…“女性徴兵制”大統領府の国民請願で10万人署名」(『朝鮮日報』)などと報じたのだ。

金正恩氏を広告に…韓国に緊迫感はなし?

よく知られている通り、韓国では成人男子に約2年間の兵役が義務つけられている。

スポーツ選手であろうと財閥の御曹司であろうと関係ない。韓国男性にとって、徴兵は“国民の義務”だ。

そんななかで男性だけではなく、“女性の徴兵制”までもが論じられているところに、現在の緊迫した朝鮮半島情勢を連想されるだろうが、北朝鮮問題が議論に火をつけたわけではないと考えられる。

もちろん、情勢が情勢なだけに注目を集めているイシューではあるが、根幹にあるのは別の意識かもしれない。

というのも、私も先週まで韓国にいたが、韓国の市民レベルでは昨今の朝鮮半島情勢に対する危機意識はほとんどなく、金正恩氏を商品広告として使っている企業もあったほどだからだ。

では、なぜ今、“女性の徴兵制”が論じられているのか。

韓国で広がるフェミニズムと女性嫌悪

“女性の徴兵制”が注目を集めている理由は、どちらかといえば「男女平等」に対する意識の表れかもしれない。

請願文には「女性も男性と同じ一般兵として義務服務して、義務を履行した国民であれば男女差別なく同一に恩恵を受けることが正しい」といったことが書かれているし、ネット上の「同等の待遇を求めるのであれば、同等な行動をするべき」「男女平等時代なのだから女性も軍隊に行くべき」といった意見は、その証拠だろう。

韓国では女性の社会的、政治的、経済的権利を男性と同等にするという「フェミニズム」が急速に広がっている背景がある。

にもかかわらず、「男性が女性におごることが当たり前」「男性が荷物を持つのが当たり前」といった社会風潮も根強い。

そんな社会風潮を否定した日本人女性作家がいたが、「日本女性の従順さは精神病レベル」「日本の女は奴隷みたい」などと誹謗中傷を受ける悲劇が起こってしまったほどだ。

「男性が逆差別を受けている」といった意見も少なくない。

その反動からか、韓国では近年、ネットから始まりついには現実世界でも蔓延するようになった“ミソジニー”がイシューとなってしまっている。
(参考記事:ネットからついには現実世界にまで…韓国社会に蔓延する“ミソジニー”の正体

そんな韓国で注目を集めている“女性徴兵制”だが、実際に女性の徴兵制を実施している国は十数カ国ある。2016年7月に女性徴兵制を取り入れたノルウェーをはじめ、来年からはオランダとスウェーデンでも女性の徴兵制が導入されるという。

韓国もこういった趨勢に乗っていくのだろうか。注目したい。

(文=慎 武宏)