神戸戦では最後までアグレッシブに走り切ったが、いまひとつ精度を欠いていた。写真:川本 学

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 日本代表から戻ってきたばかりの時とは対照的に、ヴィッセル神戸戦を終えた井手口の表情は硬かった。
 
「今日は90分を通してコンビネーションもうまく作れなかったし、なによりいつもより切り替えが遅くて、噛み合っていかなかった。連動した守備もできていなかったですしね。チームとして、全体的に一つひとつのプレーの判断やプレースピードが遅かったと思います。いい時のサッカーって、もっと切り替えも早いし、何よりもっと全体が連動して戦えているので、それをもう一度みんなで取り戻さないと結果は出せないと感じました」

 
 それは自分自身に対して投げかけていた言葉でもある。試合前から「こういう厳しいコンディションでも闘えるのが当たり前、という選手になっていかないといけない」と話していただけに、ハードな代表戦2試合を終えて、チームに合流したばかりという事実を言い訳にしたくはなかったのだろう。
 
 前半こそ相手の守備に苦しめられ、本来のプレーは形を潜めた印象だが、後半に入り2点のリードを許してからは、ダブルボランチからインサイドハーフへとポジションを変えながらもプレーを加速。4分と表示されたアディショナルタイムも含め、最後まで果敢にペナルティエリアに突入していくなど、走りきった、戦いきったという印象も。それでも、全体をトータルして判断すれば、プレーの精度を含め、本来の姿に比べやや精彩を欠いたと言わざるを得ない。本人も反省の言葉を口にする。
「今日は守備から攻撃に切り替わる際に、いいボールを前線につけられなかったし、実際、パスが足もとばかりになっていた部分もありました。試合の状況に応じて、足もとにつけるところと、スペースを狙うところの使い分けができないと、相手の守備は切り崩せないと思うので、そこは改善していく必要があると思います」
 
 そして、同時にこの一戦は井手口にとって、これまで以上に『日本代表』として戦うことの期待、責任を感じることになった部分もあったはずだ。
 
 この日は、同じ関西を拠点とするヴィッセル神戸との対戦ということもあって、市立吹田サッカースタジアムには31775人の観衆を集めたが、井手口が持ち味の『守備力』でボールを奪うたびに、サイドチェンジのボールをピタリと受け手の選手に送り込むたびに、そして果敢に攻撃に絡んでシュートを放つたびにどよめきに近い歓声が起きた。これは、オーストラリア戦前にはなかったものだ。
 
 ただ、改めて言うまでもないかもしれないが、井手口の本来の持ち味はあのオーストラリア戦で見せた『ミドルシュート』に代表される、得点力ではない。もちろん、ガンバでも昨年末あたりから『ゴール』の意識は高まっているし、その意識の変化が実際にゴールを生んでいるのは事実だが、変わらぬ最大の魅力は、体幹の強さと読みの速さを生かして、危険なシーンで確実にボールを奪い取れる守備力と、90分を通して走り切る運動量だ。それがあってこそガンバも、井手口自身も加速する。
 
「期待してもらうのは有難いですが、僕はもともと、ガンガンと点を取るタイプの選手ではない。僕としてはまず、守備での貢献を一番重要視しているし、それを徹底した上で期待に応えられるアシストやゴールを続けてとれる選手になっていきたい」
 
 もちろん、本人もこうした考え方を『ベース』に、さらなる強さと正確性を備えることで、進化を求め続ける決意でいる。
 
取材・文:高村美砂(フリーライター)