“逃げそうな風情”ですが……

写真拡大

 2014年のクーデター以来、インラック前首相(50)はタイ軍政に対峙する人々の象徴。現職時代の「職務怠慢の罪」で起訴されていたのだが、その判決が下る8月25日を前に、突如として国外逃亡した。

「逃亡ルートや現在の所在など、未だに情報は錯綜していますが、問題は、この状況が誰にとって得か。明らかに軍政側ですよね」

 と話すのは、東南アジアを幅広く取材しているジャーナリストの大塚智彦氏。

「インラック氏は、有罪判決が出てもずっと闘う姿勢をたしかに見せていました。甘言を弄されたのか脅迫だったのかは分かりませんが、判決直前に軍政側が相当な圧力をかけて出国を促したと見るべきです。そもそも、軍政側から出国を制限され、常に厳しい監視下にあったのですから、軍が意図的に見逃さない限り国外へ出られるはずがないのです」

“逃げそうな風情”ですが……

 29日現在、同氏の動静は不明なままだが、軍の圧力を避けてドバイやシンガポールで国外生活を続ける兄・タクシン元首相(68)と合流したとみられる。そもそも兄妹のシナワット家はタイ有数の名家。携帯電話会社AISの創業などで莫大な資産も誇る。金持ちケンカせずの格言通りなのか。

 タクシン派は急速に求心力を失う流れだ。が、軍政側はなぜこの時期に動いたのだろうか。

「タクシン派対反タクシン派の衝突が再び懸念される状況だからですね。国際的に非難される軍政ですが、4月に新憲法を発布して、来年はいよいよ総選挙を行う予定。民政移管のプロセスが進む中、世界に混乱を見せるわけにはいかないのです」(外信部デスク)

 とくにこの10月下旬には、プミポン前国王の葬儀を盛大に行い、伝統国家ぶりを国際社会に印象付けたい。各国の要人が招かれ、秋篠宮殿下も参列する。

 軍政側もそれなりに切羽詰まっていたのである。

「週刊新潮」2017年9月7日号 掲載