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もくじ

前編
ー それはまるで儚い夢のように
ー すべてが「笑い」 技術を凌駕
ー V8ヴァンテージ 男気と色気

後編
ー それはまるで儚い夢のように(9月10日公開予定)
ー すべてが「笑い」 技術を凌駕(9月10日公開予定)
ー メガーヌ含め「形あるものはいずれ土に」(9月10日公開予定)

それはまるで儚い夢のように

スタート直後の不機嫌そうにも聞こえるシューッという響き。その直後のブワァっという轟音が、どこか悲しく聞こえてしまう。

騒がしいノイズは、4500rpmを超えるとバルブが開くヴォグゾールVXR8 GTS-Rのエグゾーストからのものだ。聞き間違えのないようなV型8気筒エンジンが発する強烈な音は、もう最後になる。悲しいことに。

オーストラリアの自動車メーカーの現地生産終了に合わせて、ヴォグゾールが10年に渡って英国に輸出してきた、ホールデン・コモドアの生産も終了となる。

くわえてPSAグループの参加に入ることにより、この並外れたサルーンは早々に姿を消すだろう。

海外進出に失敗した企業のように、VXR8は機会を掴むことはできなかったが、悲しんでいても仕方ない。ヴォグゾールのスーパーサルーン、VXR8 GTS-Rはこのブランドで最強のモデルとなる。

大騒ぎしながらお別れするとしよう。

この他にも今年、われわれを楽しませてくれたクルマの何台かが姿を消すことになる。

モデルライフはVXR8より長かったものもあれば、短かったものもあるが、概ねそれらは秀でたパフォーマンスの持ち主だ。

その1台1台が悲しくさせる。VXR8以外は、今後数カ月で新しいモデルに置き換わるのが救いだ。しかし、フロントマスクは顕微鏡で見た昆虫のような、個性溢れたVXR8の生産が終了してしまうことが悲しいことに違いはない。とりわけGTS-Rは特別だ。

すべてが「笑い」 技術を凌駕

GTS-Rの英国での価格は£74,500(1060万円)で、わずか15台が販売された。6200ccのV型8気筒に吸気周りの変更とソフトウエアのアップグレードをくわえ、姿勢安定制御装置も付いてくるが、GTSと比較して11ps向上している。

586psと75.0kg-mのパワーが有れば、不平を言うひとはいないだろう。GTS-Rは劇的に速い。強烈な8つのシリンダーは、メイ首相率いる勢いのない政治とは裏腹に、1880kgのボディを一気に加速させる。

アクセルに軽く触れるだけで分厚いトルクが湧き、ロングギア比の設定もあって3000rpm以上エンジンを回さずとも交通をリードすることが可能だ。もちろん燃費は酷い。

アクセルを踏み込めば、エグゾーストパイプのバルブ開放とともに笑いが溢れるようなサウンドが響き、6000rpmに向けて加速度が徐々に増していく感覚が得られる。

ただしGTS-Rで本当に注目すべき点は直線での爆発的な加速だけでなく、ワインディングでのドライビングフィールにある。

大柄なボディはコーナー毎にロール/ピッチが大きいものの、その動きはしっかりコントロールされている。コーナーでのロールは重いなりに遠心力で沈むが、減衰力も適切でスプリングで跳ね返すような挙動はない。

とりわけ洗練されている印象はないが、GTS-Rの存在感は揺るぎなかった。

現代の最新技術、ダウンサイジングターボエンジンやデュアルクラッチギアボックス、アクティブエアロなどの装置が備わらないからと言って、アストン マーティン・ヴァンテージもそうであるように、クルマの美点が失われるとは限らないのだ。

V8ヴァンテージ 男気と色気

アストン マーティン・ヴァンテージは2005年にリリースされたが、毎年のように洗練性を増してきた。

操作系すべての適切な手応え、クラッチペダルやシフト、ステアリングの重さ、ハンドブレーキの硬さなど、最初は少し力がいるように感じるが、すぐにクルマとの一体感に変わるはずだ。

今回のクルマは300限定生産のAMRバージョン。AMRはAston Martin Racingの頭文字で、ル・マンでのクラス優勝を果たしたアストン マーティンのパフォーマンス・ブランドとなる。

今後、工場のあるゲイドンを代表する高性能モデルがリリースされる可能性もあるが、今のところはステッカー類とインテリアの派手なトリムが追加された程度だ。

しかし、それでクルマの魅力が失われたわけではない。

低速域では指揮者のいないオーケストラ演奏の様に不協和音が響くのだが、ペースを上げると一変する。ヴァンテージの場合、スピードこそが指揮者となる。乗り心地や操舵性、エンジンとミッションなどすべてが調和してくる。

V型12気筒エンジンを積んだヴァンテージと比較すればスピードは劣るが、V型8気筒4700ccのエンジンは特徴的なサウンドを聴かせてくれる。

クルマは高次元でバランスされ、完璧に路面に追従しステアリングからのインフォメーションも絶えることがない。これと同様なドライビングを体験できるモデルは他にないだろう。

アストン マーティンが間もなくリリースする新モデルが、どんな変化を果たしているのか楽しみだ。