吉川元偉・前国連大使(桐原正道撮影)

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 国連安全保障理事会が北朝鮮への制裁を強化することへのロシアの反対姿勢は、私自身が国連大使だったころ、ときに中国より強いと思ったことがある。

 この背景には、安保理におけるポリティクス(政治)とロシアの経済的利益の確保があるとみている。

 安保理で接した当時のロシア大使は、北朝鮮のためというよりも、ロシアの発言権維持と経済的利益のために振る舞っていた感がある。例えば、北朝鮮を非難する議長声明について、米中両国はじめ各国が合意しているにもかかわらず、理屈をつけて採択を遅らせることがあった。また、対北制裁決議2270の採択にあたっては、ロシアが関係する企業を制裁対象から外すよう求めたと聞いている。

 慣例によって北朝鮮決議案を起案する米国が中国とは事前協議する一方、自分たちとは協議しないことにロシアは不満を持っており、米国に対して「決議案を事前に見せなければ横になるぞ、北朝鮮問題で協力してほしいなら、シリア問題などロシアが重視する問題で協力せよ」と圧力をかけていると思う。中国との間では、安保理において協力し合うとの「合意」があるとみている。

 ロシアは、「北朝鮮は自分たちが作った国だ」という気持ちがあると感じるが、北朝鮮問題はロシアの重大外交案件ではないだろう。関心は、貿易と北朝鮮労働者という経済的利益の確保ではないだろうか。ロシアの協力を引き出すためには、このような背景を踏まえて働きかける必要がある。(聞き手 黒沢潤)