いい洋服を着れば運気も上がる? 辛酸なめ子がファッションに奮闘! 共感必至の『おしゃ修行』【インタビュー】

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 「辛酸なめ子さんはいつも着ているお洋服がかわいくて、ついつい雑談はファッションのことばかりになるんです」と語るのは『おしゃ修行』(双葉社)の担当編集者。服は山ほどあるのに着ていくものが見つからない。流行にのってみたいけど、アイテムの使い方がわからない。「ちょっとしたときにおすすめですよ」と勧められて買った服、でもそれって一体いつのこと? おしゃれコンプレックスを抱きつつ、それでもおしゃれになりたいと奮闘する姿に共感必至のファッションエッセイ。書籍化を記念して著者の辛酸なめ子さんにお話をうかがった。

■辛酸さんに似合う服はコンサバ系!?

――「いつだって服に助けられてきました」で始まる本書。「心の隙間を埋めたい時、テンションをあげたい時は服を買うのが効果的」という一文は、多くの読者の共感を呼ぶんじゃないでしょうか。昔から、ファッションには興味があったんですね。

辛酸なめ子(以下、辛酸): 高校時代は焦りに襲われていたんですよね。自分はずっとダサいまま生きていくんだろうかって。ちょうどそのころDCブランドブームが起きて、『オリーブ』や『アンアン』などの雑誌に載っているのは絶対に買えない値段の服ばかり。両親はストイックな人たちで服を全然買わなかったし、お小遣いの少なかった私は、スカート1枚買うにも必死で。自分で働いて服を買えるようになりたいって思ってました。

――じゃあ今は、わりとファッションにはお金をかけるほうですか。

辛酸: あのころに比べたら、まあ。物欲を原動力にして生きてきた世代ですしね。私もファッション誌の「編集者の私物」みたいなのを見て、こんなにお金使っても大丈夫なんだ、って勇気をもらったし、おしゃれには相変わらずコンプレックスがありますけど、自分の物欲をさらけだしつつ、あまりお金を使わないらしい今の若い子たちにも購買の楽しさを伝えられたら、と思ってこの本を書きました。

――根本的な質問なんですけど、そもそも「おしゃれ」ってなんだと思いますか?

辛酸: なんでしょう……。バランスをとる、みたいなことですかね。

――バランス。

辛酸: 私、大学ではグラフィックデザインを学んだんですけど、ファッションって自分の見た目をデザインするということかなって。自分にとって気持ちのいい外見と内面のバランスをとったほうが、運気もあがるし、まわりの人にもいい印象を与えられるのかなって気がしますね。

――でもそれが一番難しいですよね。自分のイメージはこう、と思って着ようとした服が似合わないことってないですか。

辛酸: そういえば、骨格診断を受けたとき、本当はコンサバ系が似合うんだって言われたことがあります。

――コンサバ系! 辛酸さんのイメージとは真逆です。

辛酸: ふんわりしたワンピとか、今流行りのオーバーサイズの服とか買っちゃうことが多いんですけど、藤原紀香さんみたいな白シャツにタイトスカートのほうが似合うって。なんだか生き方を否定されたような気持ちになりました。

――悲しいですね。

辛酸: 諦めはつきましたけどね。身長とか骨格のバランスは、やっぱり大事なので。ガウチョパンツも、ちょうどいいものに出会うまで3〜4着は買ってだめにしましたし、ワイドのデニムとかは全然似合わないんです。はいてる姿を写真で見たら、やばかった。店員さんが着ているのを見たときはすごく素敵だったのですが……。それでいうと、おしゃれは自分に似合うものを知っているかどうかも大事ですね、きっと。

■ハイブランドショップは、パワースポット?

――本書で、ハイブランド(2万円以上)とファストファッション(1万円以下)、どちらを着るかで運気が変わるかという統計をとっていたのはおもしろかったです。

辛酸: 単純に、自分の気持ちが変化しますよね、着るものによって。高い服を着ているときは自信が出るから、お店の人に丁寧に接してもらえるし、気分も高まるっていうようなことはあるんじゃないかと思います。あとは値段だけじゃなく、たとえば生乾きの服を着ていると自尊心が低下して、悪いことばっかり引き寄せそうですし。染みがついているだけでも、精神的に左右されるじゃないですか。

――ご自身ではあまり、ファストファッションは買わない?

辛酸: 買いますよ。ZARAとかユニクロとか、寂しいときにふらっと入っちゃう。店の灯りに。こんなに安い値段でかわいい服が買えるんだってテンションがあがるし、心に隙間に滑り込んできますよね。それで、キャミソールみたいなトップスを買っちゃったりします。別に必要じゃないのに。

――あるあるですね(笑)。

辛酸: 逆にハイブランドのお店は、一流の人たちのオーラがみなぎってるのか、緊張感があるのか、何かにとりつかれたような気分がしたときに入ると体が軽くなります。思い込みかもしれないけど、雰囲気のよくないお店で出される料理はおいしくない、っていうのと似た感じなんじゃないでしょうか。とはいえ、ハイブランドだからといって中古で高く売れるかというとそうでもなくて。

――古着屋さんは案外シビア、と本書でも書かれてましたね。

辛酸: そうなんです。今求められているブランドじゃないと、どんなに元値が高くても値段がつかなくて……。デザインにもいろいろありますし。そう思うと、買うときにも「このブランドには値段つくのかな」とか考えながら買っちゃいますよね。渋谷西武や新宿伊勢丹の2階に置いてあるブランドだったらいいのかなとか。

――買うとき、すでに売ることを念頭に置いてるんですか(笑)。

辛酸: つい最近まで着ていた服が0円だって言われると、自分も0円なのかって気分になっちゃいますし。でもこの本にも書きましたけど、アクセサリーがいちばん難しい。タグがないし、箱も捨てちゃったりするから、よほどのブランドじゃなきゃ売れない。天然石も処分に困るし。

――天然石には寿命があるっていいますよね。

辛酸: 色が変わってくると効果が薄れるとか聞きます。私も、邪気があるところでは、ブレスレットが弾け飛んだりします。

――え!?

辛酸: 以前、ある食事会で男性が不倫自慢を始めたんですよ。そこそこにゲスい内容で……。そうしたら、つけていたムーンストーンのブレスレットがぶちきれて。色情霊や女性たちの怨念が来たんだなと思いました。そうしたらもう、寿命ですよね。土に埋めるのがいいって言われますけど。

――フリマに参加したり、レンタルファッションに手を出したり、ファッション系のパーティに一人で参加したり。本書ではさまざまな体験をされていますが、何か改めて発見はありましたか?

辛酸: ミシンカフェで服をつくってみたんですけど、全然だめで。家に帰って着てみたら布がバラバラになるし、そもそもボタンをつけることもできなかったし。どんなに安い服でもボタンがまっすぐついているのを見ると、プロの手でつくられていることの偉大さを感じるようになりました。大量生産の裏側にも、ちゃんと人の手があるんだってことがわかって、服を着ることへの感謝も生まれましたね。

――最後に、読者にこの本をどんなふうに楽しんでいただきたいですか。

辛酸: そうですね、こんなふうに買っては失敗している人もいるんだと知っていただければ。最近、某ブランドバッグを出品したんですが、値段をさげても買い手がつかなくて。私もまだまだ試行錯誤の日々です。

――そこですか(笑)。

辛酸: 失敗して、散財しても大丈夫ということで。読者の方には、日本経済を活性化するためにもっと、物をたくさん買ってほしいですね。

取材・文=立花もも