潜在的な痴漢は10万人以上いる!? 痴漢撲滅を目指すのに必要なことは

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 見知らぬ男女がスシ詰めの満員電車。世界的に稀有なこの異常空間を背景に、日本は世界一の痴漢大国だ。何度捕まってもやめられない常習者から、痴漢として認知されないグレーゾーンを攻めるビギナーまで、その数は凄まじい。

 法廷で検察官に本気で怒鳴られた経験のある人は滅多にいないだろう。加納裕司氏(仮名・43歳)は、電車内での痴漢行為がもとで過去に3回刑務所に収監された経歴を持つ、筋金入りの常習者だ。

「忘れもしません。3回目の実刑を打たれた裁判で、私が証言台に立ったときのことです。『あなた、女性を何だと思ってるんですか。裁判を何だと思ってるんですか。あなたは社会で相当迷惑な人になってるんですよ!』って大きな声で検察官に叱られましたよ。だけど、そんなこと言われたって仕方がないでしょう。知らないうちにスイッチが入ったみたいになって、無意識のうちにやっちゃうんですから」

 そううそぶく加納氏は、3回目の逮捕後、強制わいせつの罪で起訴された。第1回の公判までは保釈中の身としてシャバで暮らしていたのだが、この貴重な自由の期間中にも、何度も痴漢行為を重ねていたという。

「電車に乗っていると、痴漢をされたがっている女性というのがわかるんですよ。強打者はピッチャーが投げた球が止まって見えるっていいますけど、あの言葉、私にはわかる気がするんです」

 まるで痴漢の達人のような口ぶりの加納氏だが、逮捕されたのは第1回公判の1週間前。担当弁護士は、「これじゃ反省していないと思われても仕方がない」と頭を抱え、検察官は冒頭の怒鳴り声を発したという次第だ。

「『今後はもう決して電車に乗らないと誓ってください』と裁判官に促されたので、そのようにちゃんと宣誓したのですが、結局は実刑判決を食らいました。ちょっと量刑が厳しすぎて納得できない、おかしな裁判でした」

 反省の色はゼロ。現在は派遣社員としてマジメに働いているというが、彼はきっとまた再犯するだろう。彼がここまで痴漢にのめりこむ理由とは何なのか……。

◆痴漢されたいという歪んだ妄想と現実

 痴漢として逮捕されれば大きな社会的制裁を受けるし、家族の絆にもヒビが入る。リスクを軽々と踏み越えてまで、なぜ彼らは犯行に走るのか。痴漢の心理に詳しい精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏によれば、痴漢には特有の歪んだ女性観があるという。

「例えば、『露出の多い服を着ている女性は性欲が強く、痴漢されたがっている』『車内で寝ていたり酔って前後不覚になったりして隙が多い女性は触られたがっている』『女性は男性から痴漢されることで性的満足を得るものだ』などと彼らは考えます」

 痴漢されたのは女性の側に責任があり、男性には罪がない。日本社会に今も根付いている男尊女卑的な性差別文化を暴走させた発想だが、要は、性的幻想(ファンタジー)である。だが、痴漢たちは自分の行為を正当化するロジックが幻想であることを自覚しないままに、さらにそれを進化させ、こじらせていく。

「電車に座っている女子高生8人組を、男がじっと凝視していたとします。彼女たちは男の視線に気づいて別の車両に移動しますが、1人だけスマホに熱中していてそのまま座っているコがいました。このとき、痴漢は『俺がジロジロ舐め回すように見ていて気持ち悪いからみんなどこかにいってしまった』と考えます。この認識は正しい。ですが、残っている1人については、『このコだけは俺に痴漢されたくて残っているんだな』と本気で思ってしまう。そして実際に触って逮捕されてしまいます」

 本人としては「OKと言ってたはずなのにどうして?」と納得できず逆ギレすることもあるという。