支持率どん底のマクロン大統領、それでも成功すると言える理由

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1789年8月4日、フランスの革命派議員らは、貴族階級の特権とアンシャン・レジーム(旧政治体制)の廃止を可決した。その218年後、エマニュエル・マクロン仏大統領は、凝り固まった同国の労働法が一般人に与える特権を一部廃止しようとしている。これにより、新たなフランス革命が勃発しつつある。

フランスの世論調査大手数社によると、ナポレオン以降にフランスを率いた人物としては最年少となるマクロン大統領の支持率は、5月大統領選後の64%から8月には36%に急落。また、調査会社ハリス・インタラクティブの世論調査からは、大統領の政治手腕に信頼を寄せる仏国民は46%で、6月中旬のピーク時から13ポイント低下したことが分かった。

仏国民の間で、極右の選挙勝利をかろうじて逃れた安心感と喜びが次第に薄れ、政権に対する懐疑的な見方が戻ったのだろう。マクロンには、政策と個人の双方の面で評価が下されている。

手痛い失敗

仏国民は、軍トップの辞任に発展したマクロンの国防予算削減方針や、金融危機ピーク時よりもさらに厳しい緊縮政策の提案について思案中だ。また、企業が今より簡単に労働者を雇用・解雇できるようにする労働法改革と住居手当の削減も議論の的となっている。

歴代仏大統領の大半は就任後に寛大な支出を行うため、左派がマクロンの緊縮政策にすでに否定的な反応を見せていることも当然と言える。社会党のフランソワ・オランド前大統領も先日、仏テレビ局BFMに対し「役に立たない犠牲をフランス国民に強いることがあってはならない」と苦言を呈した。

若さゆえの経験不足の問題もある。マクロン自身のみならず、閣僚の4分の3も政治経験のない人物だ。こうした状況で、議会民主主義の仕組みに関する十分な理解や訓練を怠れば、米政権の二の舞となる。

マクロン個人に対しては、メーキャップ代に3万ドル(約330万円)超を支出していたことが報じられ、否定的なコメントがソーシャルメディアにあふれた。また、妻のブリジットに政府内で正式な有給ポジションを与える提案も撤回された。

新たなスタイルに切り替え?

マクロンは危険を察知し、すぐにコミュニケーション戦略の抜本的見直しを図った。8月には辛口テレビジャーナリストのブルーノ・ロジェプティを「大統領府公式メッセージの広報責任者」として任命し「大統領のツイッターアカウントを含むあらゆる手段」による情報発信を任せた。

だがこのサプライズ人事の前から、マクロンは報道陣に対して開放的になった。ジャーナリストに口を閉ざした初期の方針は捨て、望ましくない質問にも回答し、記者会見でも以前に比べてリラックスして発言するようになった。

先日、公式訪問したオーストリアでクリスティアン・ケルン首相と共同記者会見に臨んだ際、オーストリアの失業率が4.5%とフランス(9.6%)の半分以下である点に言及したマクロンは「経済大国の中で大規模な失業にいまだ苦しんでいるのはフランスだけ。フランスの労働市場がうまく機能していないことが問題」と指摘した。

反マクロン派も、この発言には賛成だろう。問題はどうやってこれを解決するかだ。世論からの大きな反発を和らげるには、マクロンは緊縮政策という「ムチ」に見合った「アメ」を用意しなければならない。この一つとしてエドアール・フィリップ首相は、給与から差し引かれる社会保障費を現在の水準(基本給の25%ほど)から下げることを提案している。

マクロンは成功するだろうか? 単にこの任務を実行する人が他にいないという理由に加え、自身の政党が国会で過半数を占めていることから、彼には成功する他に道はないだろう。

マクロンの大勝利を受けて政敵は混乱し、どの勢力も今後の政治的な行動を見極めることのみに注力している。一方で仏国民は、極右の国民戦線や極左のメランションのような一点集中型の政治家にうんざりしている。

こうした事情を背景に、マクロンの政党「共和国前進」は、崩壊した政界に唯一残った面々だという理由だけでも、変革の公約を実現できる可能性は高い。ある大統領報道官は先日、BFMラジオに対し「私たちは国の改革のためにここにいる。政府が改革を進めるために一部の国民の怒りを買ったとしても、その犠牲を払う価値はある」と話した。

あるいは、欧州経営大学院(INSEAD)のフレデリク・ゴダール教授(行動科学)が先日フェイスブックに投稿したように「仏国民がマクロンに不満なのではなく、マクロンが仏国民に不満だと言う方が正しい」のだろう。