9月28日から10月15日まで、福岡県筑後市の九州芸文館で開催される「SL鉄道博」に、蒸気機関車(SL)の「原寸段ボール模型」が展示される。

制作する島英雄さん(67)を取材した。

全長21.65メートルの「段ボール」模型

工芸家の島英雄さんが、同市の九州ダンボール株式会社内の特設工房で「C62形蒸気機関車の原寸段ボール模型」を作っている。

全長21.65メートル(機関車本体+炭水車)で、全高3.98メートル、全幅2.88メートル。総重量は推定3トン。

2016年5月から休止期間を挟みつつ制作を続けており、今月28、29日に組立作業を行う。

出典:「C62蒸気機関車原寸段ボール模型を作る」HP

約2年かけて博物館巡り実測

島さんは2013年にも、古い段ボール4000個を集めて「D51形」の原寸段ボール模型を制作。

全長19.73メートルの模型は日本各地で展示され、大好評を博した。

段ボール箱でこんなにも大きなモノを作れるんだ、ということを知ってもらいたかったんです。

出典:「D51蒸気機関車原寸段ボール模型」HP

本職では建築・設計の仕事をしていた島さん。

原寸模型の制作では、まずは実物をスケッチして実測値を記入。1カ所につき、角度を変えて何枚も描くという。

約2年かけて博物館で展示されている保存機を巡り歩き、実測部位約1000箇所、3000点のスケッチを描いた。

出典:「D51蒸気機関車原寸段ボール模型を作る」HP

次に、実測スケッチに基づいて実測図面と工作図面を作成。A3版、B3版合わせて500枚の工作図面を描いた。

図面を基に構造部材や動輪、運転室などの部品を作成し、12人が15時間(2日間)かけて組み立てたという。

出典:「D51蒸気機関車原寸段ボール模型を作る」

幼いころから鉄道ファン

島さんは物心がついた頃には鉄道ファンだった。小学校に入るころには当時主流だったHOゲージ(1/80の模型)の制作に励んだという。

かつて東京に交通博物館(現在はさいたま市に移転)があったころ、自作模型の運転会や品評会が定期的に催されていました。

Oゲージ(1/45)という大型の真鍮模型を持ち込む大人たちの技術力の高さに対抗するためには原寸模型しかないという「思い込みの境地」に至り、当時まだ世間には出回っていなかった段ボール箱やバルサ材を使って創作活動を開始しました。

軽くてナイフでカットでき、糊付けだけで組み立てられるので、私としては大きな模型加工には最適な材料だと思いました。

小学生だった昭和30年代初頭は、荷物の運搬は木箱が主流で、段ボール集めには苦労したという。

「蒸気機関車を原寸で作ろう」と思い立ったのは小学校高学年のころ。その後、15歳になって集めていた図面を基に実行に移そうとしたが、当時は受験勉強が忙しく断念したそうだ。

こだわりは「どこまでも図面に忠実」

制作中のC62形は、建築の現場で培ったという「段ボールの加工技術」を集結させた作品だ。

子供のころから通算約50年間、段ボールを素材にして創作してきたことの集大成としてC62形を作ろうという考えも、かねてより抱いていました。

出典:「C62蒸気機関車原寸段ボール模型を作る」HP

計画を実現するにはメーカーの協力が欠かせなかったが、九州ダンボールの社長からの「熱烈なラブコール」を受けたこともあり、実現に至ったという。

制作にあたっては「どこまでも図面に忠実に作り込むこと」と「段ボールの素材の可能性を追求するために、加工方法の研究成果を生かすこと(今回は14カ所)」にこだわっている。

C62形」を選んだ理由

数ある蒸気機関車の中からC62形を選んだのには理由がある。

島さんによると、前作のD51形は生産台数が1000両を越す機関車で、日本のどこでも見ることができた。さらに、大きくて目立つので各地の子供たちにとってヒーローだったという。

一方、C62形は49両のみ。しかも、東海道本線の花形特急だったにも関わらず、運行末期には北海道の函館本線で4両しか残らなかった機関車で、鉄道ファンとしては神格化された絶対的な存在だという。

出典:「C62蒸気機関車原寸段ボール模型を作る」HP、濱勲氏撮影

古い段ボールを集めて作るD51、真新しい段ボールシートで作るC62、この順番で制作する計画はかねてから持っていました。

D51は子供たちに、C62はかつての子供たち、つまりSLの神様として憧れていたかつての鉄道好きの子供たち(50歳代以降でしょう)にプレゼントしたいと考えました。

模型に取り付けるナンバープレートは「C62 51」だ。

 

出典:「C62蒸気機関車原寸段ボール模型を作る」

当初は50両目として「50」にするつもりだったが、テレビアニメ版「銀河鉄道999」の車両が「C62 50」だったことから考え直したという。

気になるのは「銀河鉄道999」の存在でした。あの機体には「C62 50」のプレートが輝いており、今でも宇宙のどこかで走り続けています。やはり「C62 51」がふさわしいと思いました。

情熱とロマンを持ち続ける島さんの蒸気機関車には、見た目以上に大きな思いが詰まっていた。