弁護士・柳原桑子先生が、堅実女子のお悩みに答える本連載。今回の相談者は宮崎亜弥さん(仮名・34歳・IT関連会社勤務)。

「夫と結婚5年になるのですが、3年前から家庭内別居をしています。夫は結婚してから、家に帰ってくると会社のグチしか言わず、結婚前と結婚後では全く人格が変わってしまったのです。そのうちに私の仕事の内容に嫉妬するようになり、次第にディスるように。それまでも小さなケンカがあったののですが、決定的だったのは”オマエみたいなバカにできる仕事なんて、そもそも簡単なんだよ”など、ひどいことを言われたとき、私がブチ切れてしまい夫婦の仲が険悪に。それ以来、3年間互いに一言も口をきいていないし、なるべく生活時間はかぶらないようにして、家庭内別居をしています。

この状況がお互いに楽だったのです。そもそも結婚していた方が社会的にも信用要素になっていることを感じるし、離婚は面倒。今住んでいるのは、夫の親戚が貸してくれている物件で、3LDKで駅からのアクセスもいいのに、家賃はたったの12万円。これ以上の新しい住まいを探すのも大変です。今、家賃は夫が払い、光熱費などは私が負担し、お互いが“いないもの”として同居しています。家事も完全に別々なので、この生活は比較的快適です。家にいても、お互いのことを無視しています。

しかし、最近、私に好きな人ができました。その人とはデートをしていますが、今のところ肉体関係はありません。相手はバツイチで独身主義の男性です。このまま、関係を進めたいのですが、これだけ家庭内別居をしていても、法律的には不貞になるのでしょうか。もし夫にバレて、そのことを責められたら、どのように反撃すればいいのでしょうか」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

この場合、法律的にはあなたは婚姻しているので、夫以外の相手と肉体関係をもつようになれば、不貞行為に該当すると考えるべきです。

もっとも婚姻関係が破綻していると判断されれば、不貞行為とはならないです。しかし、婚姻関係の破綻の判断については、夫婦相互で認識が一致するならば良いのですが、自分は破綻していると思っても夫がそう思っていなかったら、不貞を巡り争いになるでしょう。

裁判になった場合、あなたのケースは一緒に暮らしており経済的にも協力しているようであり、会話はなくとも、婚姻関係が破綻しているとまでは判断されない可能性が高いように思われます。

別の男性と親交を深めたいならば、今の婚姻を離婚して終了させ、それからにしてはどうでしょうか。

自分は夫婦生活が破綻していると思っていても、相手の感情や客観的な状況により”破綻はない”とみなされてしまえば、不貞になる可能性も高い。



■賢人のまとめ
一緒に生活をしていれば、会話はなくとも、婚姻関係が破綻しているとまでは判断されない可能性が高いです

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/