25年の音楽的変遷と新たな音楽性をみた「真夏の夜の夢 2017 -Night of Pacifico-」(撮影=HAJIME KAMIIISAKA)

 THE ALFEEの高見沢俊彦のソロプロジェクト「Takamiy」が、活動25周年を記念して8月30日にベストアルバム『美旋律 〜Best Tune Takamiy〜』をリリース。それを引っ提げたソロコンサート『真夏の夜の夢 2017 -Night of Pacifico-』が9月2日・3日の二日間、パシフィコ横浜・国立大ホールでおこなわれた。この公演でみたものは、25年の音楽的変遷と、新たな音楽性。そして奥深さだった。スペシャルギタリストとして鳥山雄司を迎えた今回。インタビューで「サウンドも変わると思う」と語っていたコンサートでどのような音楽をみせたのか。計8000人を動員したコンサートのうち、3日公演のもようを以下にレポートする。

華やかな空間

撮影=HAJIME KAMIIISAKA

 台風が過ぎ、すっかり秋めいてきたこの日、海からは心地良い風が流れ込んでいた。客席の前に広がるのは、豪華な装飾をあしらったステージ。13の菱形オブジェがステージ背面に連なるようにあり、ちょうど真ん中にあるエントランスから階段を経て花道が伸びている。その先には菱形の演壇。主の登場を待つマイクスタンドがポツリと置いてある。そこで、Glenn Miller「In The Mood」やcount ba sie「flight of the foobirds」などといった米国の隆盛を物語るジャズ音楽がBGMとして流れていた。まるでブロードウェイミュージカルが始まるのではないかと思わせるような華やかさがあった。おのずと観客の心も踊る。

 開演時刻が少し過ぎたところで、場内の明かりが落とされ、デジタルサウンドのSEが鳴り響く。それをバックに無数の青色のライトが踊るように辺りを照らす。やがてエレキギターのサウンドが加わり、ライトの色は赤へと変色する。エレキの残響音のなかで、エントランスにはマイクを持ったTakamiyの姿が。大歓声に包まれるなかドラムカウントが始まる。興奮のなか今宵の宴は、観客の心をグッと引き込む意表の「ULTRA BURN」で始まった。

 紫と黒のマントをなびかせて優雅に花道を歩くTakamiy。怒涛のハードロックサウンドのなかで凛と突き抜ける歌声。ステージ前方で高らかに歌い上げ、菱形の演壇に戻った時、大きな剣を掲げるその後ろでは、水の波紋のような光がいくつも浮かんでは消え、浮かんでは消えた。メロディに入り込むパイプオルガンを思わせる旋律は、中世へと誘うようであり、Takamiyはまさに騎士のように勇ましかった。

 曲を終え、大歓声を浴びなら「エデンの君」「雷神の如く」を立て続けに披露する。「エデンの君」からエレキギターを身にまとった“騎士”は、欲情のなかで揺れ動く愛の行方をハードロックにのせて表現する。サウンドは赤く染まる大地のように広大でどっしり、ギターサウンドはその大地を切り裂くように重厚でいて鋭い。一方、赤、青、白などと場内をめくるめくように縦横無尽に照らす無数のライトは空のように様々な表情を見せる。その天と地の間で歌い上げているのがギターという剣を突き付けるTakamiy、そんな光景が広がっていた。

心地良いグルーヴ

撮影=HAJIME KAMIIISAKA

 曲を終え一旦、明かりが落とされると、バスドラの低音が一定のテンポで鳴り続ける。そこに観客の低拍子が加わる。「ライブオブパシフィコへようこそ! 去りゆく2017年の夏。今宵、思いっきり楽しめる最高のライブを作りましょう。最後まで宜しく!」と挨拶すると、EDMサウンド、そしてギターサウンドが踊り出し、ベースとドラムが跳ね出す。「ダンシングばけーしょん!〜ダイエット編」、そして、80年代のエレクロミュージックを彷彿とさせる「Fire」へ続く。

 このコンサートの布陣は、スペシャルゲスト・鳥山雄司(Guitar)を筆頭に、吉田太郎(Drums)、ただすけ(Keyboards)、佐藤大剛(Guitar)、安達貴史(Bass)。鳥山が参加した影響もあろうが、ハードロックのなかにも、これまでクラシックコンサートにも参戦しているTakamiyの身体に脈々と流れているクラシック、そしてジャズの要素が垣間見え、心地良いグルーヴを生んでいた。特に、「ダンシングばけーしょん!〜ダイエット編」は顕著で、前面に出ていたベースの音を軸に、ファンキーなギターは観客の心を前のめりにさせていた。

 またこの日は、演奏曲をブロックごとにわけ、クラシックコンサートなどにみられるように、演奏前にはTakamiyによる曲の解説が入れられた。多くのアーティストが作詞として参加した『Kaleidoscope』では「万華鏡を意味していますが、色んな方に詞を頼んで、俺が曲を作ったアルバムですけど、どんなふうに俺の事を思っているか知りたいじゃん。だからそれには良い調査なんだよね。だけどまさかストレートに“高音おじさん”とくるとは。他になかったのか(笑)」とユーモアを交えて解説。その流れで、リリー・フランキーがElvis Woodstock名義で歌詞を描いた「Super Star」を披露した。

 「Super Star」は、歌詞の世界観、そしてTakamiyの姿を表現するように太陽が昇るがごとく、白光のライトから下から上へと照らし、「仮面の宴」では菱形オブジェが薔薇のように赤く染まった。ライトとオブジェが見せるアートな空間のなかで美しきメロディが優雅に流れる。特に「仮面の宴」でのTakamiyのギターソロはどこか泣いているように感傷的に音色が広がった。「東京ロンリー・ナイト」では、Takamiy、そして、鳥山雄司、佐藤大剛の3人がモズライトのギターを構え、波打つようなギターを特徴とするGSサウンドを再現。その後、『主義-Ism:』制作のため英ロンドンに渡った頃の想い出を明かしながら、そのアルバムにも収録されている壮大なバラード「17の時に逢いたかった」を届けた。はっきりとした言葉、品高き歌声はどこか美空ひばりをも彷彿とさせた。

 Takamiyのソロ25年分の音楽に触れながら、時空を超えて時代を行き来しているような感覚もあったコンサートも佳境に向かう。変形フライングギターに持ち替えたTakamiyは「Takamiyメタルの神髄をここから行ってみましょうか」と語り、雷鳴轟く「VAMPIRE〜誘惑のBlood〜」から「月姫」へ、そして、「嵐が丘」へ。白鳥が優雅に羽を広げるように繊細な歌声を届ける一方で、サウンドは全てを巻き込む竜巻のように力強い。炎柱がいくつも立つなかで「Fantasia 〜蒼穹の彼方」を放つ。ギター、ベース、ピアノと音を紡ぎ、鳥山のギターが雄叫びを挙げる、一方のTakamiyは心を震わすようにアームでロングストロークする。興奮に満ちた会場はとてつもない熱気に包まれ、そのまま本編を終えた。

鳥山とのパフォーマンス

Takamiy、鳥山雄司、佐藤大剛による共演(撮影=HAJIME KAMIIISAKA)

 アンコールを受けて再び登場したのはTakamiyと鳥山。Takamiyはアコースティックギターを、鳥山はモズライトを抱えている。コンサートへの裏話を明かしながら「高校時代好きだった」という「Without You」、そして「Fiance」を披露していく。楽器はたった2つだが、幾つもあるように深みがあった。英語詞にみるTakamiyの歌声はまた趣が変わり、曲の世界観を美しく蘇らせていた。

 「Techno Glamorous」からは他のメンバーも加わる。地を這う重厚なサウンドが鳴り轟くなかで、レザーは場内を差す。EDMサウンドが誘ったメロディはやがてファンクにとって代わる。「誘惑の太陽」からは、Takamiyはヘッドマイクをつけて、ステージの左右を往来。観客の近くに身を寄せて歌い上げていく。「恋の花占い」ではギターカッティングが心地良く体を躍らせ、「誰よりもLady Jane」では振付にスコップを使うコミカルな演出で観客の心をくすぐった。

 アンコールラストは「騒音おばさんVS高音おじさん」。Takamiy、そして、鳥山、佐藤の3人がエンジェルギターを身に纏い、奏でる。超絶サウンドのなかで踊るユニークな言葉。観客も興奮の度合いを高め、それを細かく揺らす拳で表現する。途中のフレーズ<部屋でエレキを弾かないでちょうだい!>を吉田太郎、<やかんのお湯がわいてるわよお!>をただすけがそれぞれ“熱演。ギターではステージ前に3人が身体を寄せて弾き合う。佐藤がライトハンドをみせれば、鳥山は乗りまくりのギターサウンドを奏で、Takamiyは腰を落としながら優雅に弾く。佐藤は反った身体をTakamiyに預け、弾きじゃくる。銀テープが様々な光を反射させながら舞い、絶頂の渦のなか、アンコールは終わった。

垣間見えた新たな音楽性

撮影=HAJIME KAMIIISAKA

 エルガーの「威風堂々」が流れるなかステージを後にする。しかし、再びアンコールの大歓声が巻き起こる。再び登場したTakamiyは「今年はライブ漬けで最高の人生」と振り返り、青春群像小説『音叉(おんさ)』で小説家デビューすることにも触れる。小説を書くことをTHE ALFEEの坂崎幸之助、桜井賢に伝えたところ「ギターケースに必ず1冊小説が入っていた。だからいつかは書くとは思っていた、と言われた」と明かし「これでもう一つ表現方法が手に入る」との思いを語った。

 そのなかで最後に届けたのは、13年に発売されたアルバム『雷神』に収録されている「孤独なRudy Boy」だった。今回の『美旋律 〜Best Tune Takamiy〜』には収録されてなく、歌い直しはおこなわれていないが、最後にこの曲を“歌い直す”ことで、25周年の歩みを総括するようだった。そして、歌い終えたTakamiyは笑顔に満ち溢れていた。

 『美旋律 〜Best Tune Takamiy〜』は、第2期(2007年以降)のなかから選曲し、歌い直したベストアルバム。今回は、それを引っ提げたコンサートだった。同アルバムを通じてTakamiyの音楽的変遷に触れることができるとともに、改めてTakamiyが作り上げるメロディの美しさ、メタルの気持ち良さを体感することができる。また、今コンサートでは改めて、曲は形を変えながら生き続けていることを再確認した。

 そして、前記にも触れたが、鳥山の参戦、クラシックコンサートの経験は、曲のなかに脈々と流れていることをうかがわせた。それはTHE ALFEEの「あなたに贈る愛の歌」にもあらわれたように、クラシックやジャズを通して広がる新たな音楽性が垣間見えた気がした。今後、どのような音楽をみせてくれるのか、益々楽しみになった、そんなコンサートだった。

【取材=木村陽仁】

セットリスト

01. ULTRA BURN
02. エデンの君
03. 雷神の如く
MC
04. ダンシングばけーしょん!〜ダイエット編
05. Fire
MC
06. Super Star
07. 仮面の宴
MC
08. 東京ロンリー・ナイト
09. Night of Rouge
MC
10. 17の時に逢いたかった
MC
11. VAMPIRE〜誘惑のBlood〜
12. 月姫
13. 嵐が丘
14. Fantasia 〜蒼穹の彼方

EN01. Without You
MC
EN02. Fiance
EN03. Techno Glamorous
EN04. 誘惑の太陽
EN05. 恋の花占い
EN06. 誰よりもLady Jane
EN07. 騒音おばさんVS高音おじさん

WEN01. 孤独なRudy Boy

25年の音楽的変遷と新たな音楽性をみた「真夏の夜の夢 2017 -Night of Pacifico-」(撮影=HAJIME KAMIIISAKA) 撮影=HAJIME KAMIIISAKA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA Takamiy、鳥山雄司、佐藤大剛による共演(撮影=HAJIME KAMIIISAKA) 撮影=HAJIME KAMIIISAKA