中国のハイテク技術が「世界標準」になることの脅威――急成長の裏に倫理観やプライバシーの軽視が…

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世界に先駆けてキャッシュレス社会を実現させた中国だが、人工知能や先端医学の分野でも中国は今、アメリカを抜く勢いで発展しようとしている。しかし、その裏に大きな懸念材料があった。日本も無関係ではないのだ!

◆中国発の先端技術が世界標準になると、いったいどうなる!?

 人工知能(AI)やロボティクス、フィンテックなど世界的に注目を集める次世代産業において、中国の存在感が急激に増している。その勢いは、すでに米国を抜き、世界的な主導権を握りつつある。

「AI研究という観点では、もはや中国が最大勢力です」と口火を切るのは、世界のAI事情に詳しい電気通信大学の栗原聡教授だ。

「8月に開催された『IJCAI2017』という国際AIカンファレンスでは、参加人数でも、採択論文数でも中国がトップ。一昨年まで米国がトップでしたが、中国が追い越してしまった」

 AI関連の特許出願数も米国は首位を守っているが、伸び率では中国勢が凌駕しつつあるという。中国のテクノロジー動向に詳しい川ノ上和文氏は言う。

「’05〜’09年と’10〜’14年の各期間ごとの件数を比較すると、中国は約2.9倍で、米国は1.2倍にとどまっています。ちなみに日本は3%減という状況です」

 こうした状況で今、懸念されるのは中国発のハイテク技術が「世界標準」になることの脅威だ。まず、世界の自動車メーカーが鎬を削る自動走行分野を見てみよう。中国IT最大手「百度」が進める「アポロ計画」は、同社が開発する自動走行車のプラットフォームを、各国の大手自動車メーカーに公開。各社が持つノウハウや技術を取り込もうという計画だ。中国は世界最大の自動車市場であると同時に、欧州・日本に比べて実証実験やテスト走行を行いやすい、言い換えれば規制が緩い環境にある。同計画に米フォード、独ダイムラーなど50社が参加している。深センを中心にIoTツアーを手掛けるコンサルタントの白井良氏は言う。

「百度の狙いのひとつは、自動走行分野で“データの王者”になること。世界中を走る自動車から走行データを吸い上げることで自社のAIを強化させ、市場を独占したい。アポロ計画を見るに、データ収集という戦場において百度が自国の優位性を利用して世界に一石を投じた印象があります」

 一方、AI×医療・ヘルスケア分野でも中国は世界の先を行く。

「中国では現在、ものすごい勢いでヘルスケア関連のベンチャーが設立されています。中には、『アジア最速のユニコーン企業』として注目されているiCarbonXも含まれます。同社は中国人の数百万人の生体情報を基にゲノム解析を行い、健康状態に合わせたヘルスケアサービス、またデータに基づく予防医学の提供を目指しています。また、ベンチャーではないですが、世界最高峰の機材をそろえたゲノム解析企業・BGIの存在感も高まっています」(川ノ上氏)

 中国ではすでに100社以上が誕生しているが、その多くは医療情報のビッグデータを利用したものだ。例えばウェアラブル端末も数多く開発されているが、血圧や体温、血糖値、睡眠時間などがクラウド上で共有され、スマホにフィードバックされる。また各患者のカルテやCT・MRI画像などをビッグデータ化し、治療に役立てるシステムも開発されている。しかし、こうした製品やシステムは、医療情報の取り扱いに厳しい日本や欧米では許されていない。

◆人工知能が人間を裁く「AI裁判官」登場か

 このように、中国は次世代モビリティの目玉である自動走行や最先端医療の分野で破竹の勢いを見せているが、何が問題なのか。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・河鐘基氏は指摘する。

「中国におけるテクノロジーの急速な進化を懸念する人たちはまず、その『倫理観』を危惧しています。例えば日本の最高裁判所にあたる最高人民法院は、7月に『AI裁判官』を実用化していく可能性を示唆しました。また、すでに上海では警察の捜査を支援するAIが導入されている。司法や治安維持の場で、人間の権利侵害や、ときに人の命に関わるケースも出てくるでしょう。こうした、人工知能が人間を裁く行為は日本や欧米ではまだまだ議論が必要で、研究もできません」