圧巻のパフォーマンスでA代表デビューを飾ったバルベルデ。末恐ろしい大器だ。(C)Getty Images

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 ウルグアイ代表を率いるオスカル・タバレス監督は、ぎりぎりまで決めかねていたという。新進気鋭のボランチが、はたしてワールドカップ予選の熾烈な戦場で通用するのか──。
 
「いきなり先発で起用してどこまでやれるのか。誰もが期待しているのは分かる。だがこれはそう容易いミッションではないのだ。それでも最後は……本能に任せたよ。彼に託そうと決めたんだ」
 
 9月5日、ワールドカップ南米予選で19歳の大器が国際Aマッチデビューを飾った。ウルグアイア代表の中盤で獅子奮迅の働きを見せたのは、フェデリコ・バルベルデ。アウェーのパラグアイ戦にボランチで抜擢登用されると、攻めては長い距離を駆け上がって敵ゴールを脅かし、守っては鋭い読みと激しいチャージでピンチを的確に摘み取った。
 
 ほぼパーフェクトな内容に華を添えたのが、0-0で迎えた76分のスーパープレー。相手DFのクリアボールを、ゴール前30メートルの位置から右足アウトサイドでインパクトし、鮮やかにねじ込んだのだ。チームはその先制点で優位に立ち、過酷な敵地アスンシオンで2-1の快勝。南米予選2位の座をキープした。
 
 自画自賛したのが、タバレス監督だ。「私は賭けに勝った。そしてこれはウルグアイ・サッカー界にとっても大きな勝利と言える」とまくし立て、「文句の付けようがないパフォーマンスだったね。御見それしたよ」と脱帽した。8月31日のアルゼンチン戦は出番なしだったバルベルデ。その試合で重鎮MFアルバロ・ゴンサレスがイエローカードを頂戴し、累積警告のためパラグアイ戦が出場停止に。大きな穴を埋める代役は、はたして……。指揮官は19歳の才能に命運を託したのだ。
 
 ウルグアイの国内メディアも「バルベルデが国際デビューした歴史的一日」「ニューヒーロー誕生」「19歳の天才がセレステ(水色、代表チームの愛称)を救った」など、手放しで称えた。
 
 さらにFIFA公式サイトも特集記事を掲載。そのプレーぶりをこう伝えている。
 
「クレバーな対応を見せつつ、ハードワークを厭わないMFだ。19歳の青年は理想的なリンクマンであり、とりわけ守備から攻撃への切り替えのところで力を発揮する。右足から繰り出すパスはセンスに溢れていて、球際の強さも特筆に値。なにをやらせても非凡な選手だ」
 世界中に衝撃を与えたバルデルデだが、ウルグアイ国内では当然、早くから天才と謳われてきたエリートだ。
 
 実はタバレス監督がバルベルデに初めて会ったのは、いまから6年前、彼がまだペニャロールの下部組織に在籍していた13歳の頃だったという。「とてもシャイで、小柄で、やせっぽちだった。でも明らかにほかの子どもたちとは違っていたね。フットボールのセンスはずば抜けていた」と回顧する。
 
 名門ペニャロールでは16歳でプロデビュー。すぐさまレアル・マドリーの目に留まり、昨夏に18歳で5年契約を交わした。2016-17シーズンはカスティージャ(Bチーム/スペイン3部)で30試合に出場して3得点。今夏には韓国で開催されたU-20ワールドカップに参戦し、不動の中軸として母国ウルグアイを4位へと導いた。この大会では個人賞2位の「シルバー・ボール」に選ばれている。
 
 U-20ワールドカップでの活躍を受け、マドリーのジネディーヌ・ジダン監督はバルベルデをトップチームに帯同させると明言。プレシーズンキャンプでも十二分にアピールしていたが、バルベルデは「プリメーラ(1部)での経験を積みたい」と上層部に直談判し、デポルティボ・ラコルーニャへのレンタル移籍が決まった。
 
 入団決定時、受け入れ先のペペ・メル監督は「フェデリコは中盤ならどこでもこなせるし、センターバックとしても十分使える守備力がある。大いにチームを助けてくれるはずだ」と期待を口にした。開幕戦は相手がマドリーだったため出場できず、2節はベンチを温めたが、1部デビューを飾るのは時間の問題だろう。
 
 そしてこの男も、バルベルデのポテンシャルに惚れ込んだようだ。自身のツイッターで2ショット写真を掲載したウルグアイの英雄、ルイス・スアレスである。
 
「あいつは化け物だよ。正真正銘のね。あそこでフェデリコにチャンスを与えて、素晴らしい内容を披露させたのだから、やはり監督(タバレス)は流石だと思う」
 
 主軸の高齢化、とりわけ中盤のそれが顕著なウルグアイ代表に、久方ぶりのビッグタレントが台頭した。ウルグアイは予選突破目前で、来夏のロシア・ワールドカップでは間違いなく若手注目株のひとりとなるだろう。そして今シーズンのリーガ・エスパニョーラでは、柴崎岳(ヘタフェ)や乾貴士(エイバル)とのマッチアップも楽しみだ。
 
 幼少期からのニックネームは「パハリート(小鳥)」。ちょこちょこと走り回る様からそう名付けられたようだ。ダイナミックなプレースタイルが身上のバルベルデは、いままさに大空へ羽ばたかんとする「アルコン(鷹)」のごとしだ。