ホームのすぐ端が日本海に面している信越線の青海川駅(筆者撮影)

隣の芝生は青く見えるもの。それは駅だって同じである。毎日通勤通学で使っている駅は、別に何の特徴も見どころもないように見えてくるし、正直言って色あせて見える。が、楽しい旅で訪れた駅や若き日の思い出の駅は、ココロの中でキラキラ輝いている。そして、まだ訪れたことのない駅は、きっとすばらしい体験をさせてくれるはず……。

というわけで、この夏JR東日本が実施したのが「みんなで決める! JR東日本1634駅ランキング」。「景色が奇麗な駅」や「住みたい駅」など、5つのカテゴリーごとにSNSを通じた投票で順位を決めるというもので、その最終結果が8月下旬に明らかになった。投票総数2671票というのがなんとも微妙な気がするが、それはさておき、その結果にちょっと突っ込みを入れつつ紹介させていただきたい。

海ばかりの中で1位は山の駅

まずは「景色が奇麗な駅」から。人は「海」にあこがれるものなのだろうか。1位の姨捨(おばすて)駅以外はいずれも海が見える駅。見えるどころか、海と駅との距離が限りなくゼロに近いような駅ばかりがランクインしている。

■景色が奇麗な駅
1 姨捨(長野県)   67
2 海芝浦(神奈川県) 48
3 青海川(新潟県)  36
4 根府川(神奈川県) 35
5 千畳敷(青森県)  12

2位の海芝浦駅はご存じ鶴見線の“有名駅”のひとつ。改札口の先は東芝工場の敷地内という通勤専用駅のような位置づけだが、改札内に小さな公園が用意されており、夜には東京湾の工場夜景が楽しめる。オジサンが1人で訪問すると、いちゃつくカップルたちにアテられるリスクもあるけれど……。

3位青海川(おうみがわ)駅は“いちばん海に近い駅”とも言われるようにホームの真下に日本海。4位の根府川(ねぶかわ)駅は相模湾沿いの駅。ホームから初日の出を望むべく訪れる人も多いという。5位の千畳敷駅は五能線の駅で、日本海の荒波に削られた奇岩が迫る……と、海駅ばかりが人気を博す中で1位に輝いたのは海とは無縁の姨捨駅だ。


善光寺平を見下ろす絶景が人気の姨捨駅(写真:Shiryu / PIXTA)

姨捨駅は、筑摩山地を越えて長野と松本(正確には篠ノ井―塩尻)を結ぶ篠ノ井線の駅。眼下には武田信玄VS上杉謙信の川中島合戦の舞台にもなった善光寺平を望むことができる。棚田に映る“田毎の月”は国指定の名勝にも指定されており、姨捨駅は昼夜問わず楽しめる絶景ステーションだ。

5月に運転を開始した豪華クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」も、1泊2日コースの初日夜に訪れる。四季島の利用者は、専用の夜景ラウンジでのんびりくつろげるとか。この専用ラウンジ、普通列車で訪れた人はもちろん立ち入れず、善光寺平の絶景とともに何とも言えない世間の厳しさを感じさせてくれる。

「訪れたい駅」はマニアック!

次いで「一生に一度は訪れたい駅」。ほかのランキングと比べれば、マニアックな結果となったのがこちらだ。

■一生に一度は訪れたい駅
1 土合(群馬県)     47
2 東京(東京都)     23
3 三厩(青森県)     20
4 行川アイランド(千葉県)16
4 姨捨(長野県)     16

1位の土合(どあい)駅は下りホームまで462段もの階段を降りなければならない“日本一のモグラ駅”として有名だ。が、その下りホームに到着する列車は1日わずか5本だけ。そのため、訪問者の多くは列車ではなく車でやってくるという説も根強い。薄暗いホームへの階段を降りていく時の心境やいかに。


「秘境駅」として知られる行川アイランド駅(写真:tarousite / PIXTA)

2位の東京駅は言わずと知れた日本の代表駅だし、3位三厩(みんまや)駅は本州最北端の駅、4位の姨捨駅は「景色が奇麗な駅」でも1位に輝いたように超のつく絶景駅。と、1位の土合駅を含めて“行きたい理由”がよくわかるのだが、異彩を放つのが4位の行川(なめがわ)アイランド駅だ。

こちら、千葉県勝浦市にある外房線の駅で、もともと遊園地・行川アイランドのアクセス駅として開業した。が、2001年に行川アイランドが閉園したことで秘境駅化。閉園後の行川アイランドは廃墟マニアに人気があるとかで、「訪れたい」のはそれに関連しているのか、それとも実態にそぐわぬ楽しげな駅名ゆえなのか。いずれにしても、名前だけで楽しい駅だと思って行ったら後悔するので注意してくださいませ。

■子どもと行きたい、連れて行きたい駅
1 大宮(埼玉県)   87
2 東京(東京都)   30
3 横川(群馬県)   19
4 舞浜(千葉県)   13
5 成田空港(千葉県) 12

次は「子どもと行きたい、連れて行きたい駅」。2位の東京駅にダブルスコアの差をつけて1位に輝いた大宮駅は、近隣に鉄道博物館があり、新幹線から在来線までさまざまな列車が行き交う鉄道ファン垂涎の駅のひとつ。鉄道博物館に行けば子どもはもちろん大喜びだが、それ以上に鉄道好きのお父さんが大喜びだ。


「峠の釜めし」で有名な横川駅(筆者撮影)

2位の東京駅はいったいなぜ?という感じも少々あるが、日本の鉄道の顔たる駅だからか。3位の横川駅はあの「峠の釜めし」の駅。今では軽井沢までの碓氷峠越えの鉄路は途切れて北陸新幹線に役割を譲ったが、駅近くにある「碓氷峠鉄道文化むら」ではEF63形電気機関車の運転体験もできる。1位同様、子どもをダシにお父さんが行きたい駅である。

4位は駅に行きたいというよりはディズニーランド(ディズニーシー)に行きたいということだろう。発車メロディはディズニーソングだし、改札口を出ればもうそこは夢の国。ただし、ディズニーの反対側にはウキウキ気分も吹っ飛ぶほどの寂しげな世界が広がっている。5位の成田空港も舞浜と同様、駅というより海外に行きたいだけではないかと突っ込みたい。羽田空港も国際線が充実している時代だが、やっぱり海外旅行の玄関口は成田なのである。

思い出の駅は「北の玄関口」

■思い出深い駅
1 上野(東京都)  41
2 大宮(埼玉県)  26
3 仙台(宮城県)  23
4 高崎(群馬県)  19
5 逗子(神奈川県) 14


「北の玄関口」上野駅。かつては夜行列車も数多く発着していた(筆者撮影)

今日びどれだけの人が上野駅に思い出を持っているのかどうかはわからないけれど、とにもかくにも1位の上野駅は歴史ある“北の玄関口”。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」でも、谷田部みね子こと有村架純は上京時に上野駅に降り立った。『あゝ上野駅』の大ヒットを引くまでもなく、集団就職で上京してきた東北人にとっては思い出の駅だろう。

が、むしろ上京の思い出以上に「北斗星」「カシオペア」「あけぼの」などの夜行列車に乗った鉄道ファンの思い出が多そうな気もする。ちなみに、上野発青森行きの夜行列車「はくつる」は2002年、「ゆうづる」は20年以上前の1994年に廃止されている。

……と、どう転んでも思い出の駅1位に納得の上野駅に対し、2位以下は正直ナゾだらけ。大宮駅はターミナル駅だし、仙台駅は東北旅行の思い出や東北人にとっては愛着のある駅、ということなのだろう。だが、高崎や逗子に至っては皆目見当がつかない。逗子駅はもしかすると海水浴の思い出なのだろうか。

そして、注目すべきはこの「住みたい駅」だ。

■住みたい駅
1 大宮(埼玉県)   234
2 柏(千葉県)    184
3 武蔵小杉(神奈川県)27
4 蘇我(千葉県)   25
5 恵比寿(東京都)  21


「住みたい駅」ランキングで1位に輝いた大宮駅(筆者撮影)

JR東日本のランキングというよりは東武野田線(アーバンパークライン)のランキングじゃないかと見紛う結果。1位・2位の大宮と柏が3位の武蔵小杉に圧倒的大差をつけている。

大宮駅は確かにエキナカも駅ビルも充実しているし、東京方面にも新宿方面にも出やすいから便利なのは間違いない。が、「住みたい駅」トップになるほどかと言われると……? 2位の柏は東の渋谷。都会的な雰囲気と地方ののんびりムードの両方をいいとこどりできるという意味では、まあわからなくもない。


「住みたい駅」ランキングの2位となった柏駅前。そごうは2016年9月末に閉店した(筆者撮影)

そんな上位に大差をつけられた3位の武蔵小杉や5位の恵比寿は、不動産情報サイトなどのランキングでも上位に食い込む人気タウン。異論を挟む余地はない。4位の蘇我駅も、都心から千葉市より遠いという点を考慮しても、京葉線の通勤快速が途中新木場しか停まらずに東京まで一直線というあたり、通勤の利便性と家賃などの安さというバランスを考えれば納得である。

すべての駅にドラマがある

というわけで、いかがでしょうか。意外な結果もあれば、納得の結果もあったランキング。全体を通じてみると、大宮駅が2冠を含む3カテゴリーでランクインしているのが印象的だ。鉄道駅のランキングだけあって、“鉄道の町・大宮”は実に強いのである。

もちろん、JR東日本(に限らず全国、全世界)には魅力的な駅がまだまだたくさんある。むしろ、すべての駅に歴史があるし、ドラマがあるものだ。この機会にこれらの駅を訪れる鉄道旅行の計画を立ててみるもよし、逆に普段通勤通学で使っている駅の魅力を探してみるもよし。どちらにしても、きっと駅に対する新しい思い出ができるに違いない……。