【編集部コラム】長谷川ガンバの5年間に及ぶサクセスストーリー完結へ

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▽突然の一報。ガンバ大阪は7日、長谷川健太監督と来シーズンの契約を更新しないことを発表した。クラブは「長谷川監督からの卒業はこのタイミングだと判断」と説明。近年の戦いぶりを振り返ると、長期政権による“手詰まり感”が散見されていただけに、フロントの決断は理解できるが、このタイミングでの発表に違和感を覚えたのが正直なところ。ただ、クラブ上層部は後日、このタイミングで発表した理由に関して、「J2降格の苦渋を味わった2012年の失敗を繰り返さないため」と異例の速さで決断した内幕を明かしている。

▽今シーズンのG大阪は、明治安田生命J1リーグ残り10試合の時点で、首位の鹿島アントラーズに13ポイント差の7位。3年ぶりの王座奪還は厳しい情勢であり、クラブも無冠に終わった昨シーズンから鑑みてシーズン終了後の監督交代という決断に至ったのだろう。どんな形でクラブから去ることになったとしても、名将は名将。長谷川監督が5シーズンで積み上げてきた功績は多大なものであり、チームに1つ目の黄金期をもたらした西野朗元監督と共に、名監督として語り継がれていくに間違いない。

◆絵に描いたような成功の数々
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▽長谷川監督がG大阪の指揮官の座に就いたのは、2013年だった。当時のG大阪は、J2初参戦のシーズンということもあり、クラブ史上最悪の状況。立て直しは容易ではなかったはずだ。しかし、就任1年目の2013年は、J2優勝で1年でのJ1復帰に貢献。翌2014年には、前人未到の昇格初年度での国内三冠(Jリーグ、Jリーグカップ、天皇杯)に導いた。その結果、個人としてもJリーグ最優秀監督賞を初受賞。これ以上ない、絵に描いたようなサクセスストーリーとなった。

▽長谷川体制3年目以降も進撃は続く。2015年には天皇杯を連覇を達成。その他、AFCチャンピオンズリーグでの4強入りや、Jリーグ チャンピオンシップの決勝進出、Jリーグカップ3年連続決勝進出など、“タイトルに手が届く位置”までチームを導く凄腕を発揮してきた。そして、リーグ戦こそ優勝争いから遅れをとっている今シーズンにおいても、9月時点でYBCルヴァンカップ4強に進出。天皇杯もベスト16まで勝ち上がっており、長谷川監督のG大阪でのラストイヤーも十分にタイトル獲得の可能性を残している。

◆派手さ<勝利
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▽長谷川体制を語る上で欠かせないのが組織的な守備だ。攻撃的なスタイルを真骨頂としてきたチームカラーだけに、守備的な戦いに見慣れなさもあったが、それこそ長谷川監督が就任当初から築き上げてきた常勝軍団復活の礎。そして攻撃面は、かつての2大エースであるFW宇佐美貴史(現デュッセルドルフ)や、FWパトリック(現サンフレッチェ広島)に象徴されるように、個の力に秀でた選手が牽引。西野監督時代と比べれば派手さに欠けるものの、以前よりも隙が減り、より勝利に徹する集団に生まれ変わった。

▽その戦いぶりは、シーズンを占う一戦や、タイトルが懸かった大事な試合でより効力を発揮した。記憶に新しい2014年11月に行われたJ1第32節の浦和レッズ戦(2-0)は、そのチームスタイルが如実に現れたベストゲームの1つ。また、2014年に行われたJリーグカップ決勝の広島戦(3-2)や、2015年に行われた天皇杯決勝の浦和戦(2-1)も、長谷川体制下で印象に残る好試合だったといえるだろう。

◆“育成者”としての功績
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▽もう1つは選手育成だ。名前を挙げればキリがないが、MF阿部浩之(現川崎フロンターレ)、MF大森晃太郎(現ヴィッセル神戸)らに始まり、ユース出身のMF井手口陽介、MF堂安律(現フローニンヘン)ら若手を戦力として育成。さらに、かつて指揮した清水エスパルスから連れてきたFW長沢駿やDF三浦弦太のポテンシャルを引き出すなど、“勝負師”としてだけでなく、“育成者”としての功績も計り知れない。特に、井手口や堂安においては、カテゴリーこそ違えど、今や日本代表の主軸を担うほど。長谷川監督の見極める力と育成力は確かだった。

◆成功物語のラスト
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▽多くの成功を5シーズンにわたってもたらせた“成功者”長谷川監督の後任は誰になるのか。G大阪U-23を率いる宮本恒靖監督(40)が後任候補に挙がっていたが、他にも今シーズン途中までヴィッセル神戸を率いたネルシーニョ氏(67)の名前も伝えられており、外国人監督の招へいも視野に入れているようだ。ただ、忘れてはいけないのは、まだシーズンの途中。クラブ10冠目を狙う長谷川監督も退任発表を受けてのコメントを控え、目の前の試合に集中している。まずは、未来ではなく、長谷川監督が書き綴ってきた成功物語の“ラスト”をしっかりと見届けるべきではないだろうか。

《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》