「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『三度目の殺人』『散歩する侵略者』

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

参考:広瀬すず、福山雅治らに「生きてるんだな」と天然発言 『三度目の殺人』舞台挨拶レポ

■『三度目の殺人』

 プロ野球リーグ戦も残りわずか。連日試合結果にそわそわしている横浜DeNAベイスターズファンの石井がオススメするのは、是枝裕和監督最新作『三度目の殺人』。

 『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』と、“家族もの”の劇映画が続いた是枝監督ですが、本作はタイトルが示す通り、フィルモグラフィの中でも異質の1作になっています。古今東西で映画の舞台とされてきた“法廷もの”である本作は、ある種、是枝作品の中でも一番“映画的な空気”をまとっていると言えるかもしれません。

 まず、画面から漂う緊張感が冒頭から尋常ではありません。“殺人犯”三隅を演じる役所広司の顔。シネスコの横いっぱいに拡がる画面の中心に据えられたその顔は、観客がこれから対面する事件に向き合う覚悟をつきつけられたような迫力がありました。「その獣は、にんげんの目をしていました」というキャッチコピーの通り、獣なのか、“にんげん”なのか最後まで分からない三隅を、役所広司がこれ以上ないほどの怪演で体現しています。

 その後も繰り返し、福山雅治、広瀬すず、斉藤由貴ら役者陣の顔がクローズアップで捉えられます。彼らが一体何をいま考えているのか、発言している言葉は真実なのか。セリフではなく表情から訴えかけてくるその顔に、観ている側は一瞬も気が抜けません。特に広瀬すずは、『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』やCMなどで見せる天真爛漫な表情とは一変した鬼気迫る演技を披露しています。

 そして、何と言っても福山雅治VS役所広司の演技合戦! メインビジュアルにもなっているふたりが対峙する接見室でのシーンは、同じ空間にも関わらず、回数を重ねるごとにまるで違う場所にも見えてくるから不思議です。変幻自在の演技を繰り出す役所広司と、それを受け止める福山雅治、この攻防がとにかくすごい。緊迫の攻防は映画館の大きいスクリーンでこそ際立つものなので、このシーンのためだけにも是非足を運んでいただきたいです。

 生きていくことの甘さと苦さ、そして美しさが絶妙なバランスでブレンドされ、人間の本質を意外なところから気付かせる、それが是枝作品の魅力だと思います。それはこれまでとは異なる題材と言えども、本作でも遺憾なく発揮されていました。観終えた後、本作のタイトルに込められた意味をしばらく考え続けてしまうのでは。

 なお、リアルサウンド映画部では、是枝裕和監督のインタビューを近日掲載予定です。

■『散歩する侵略者』

 今年は『美しい星』『メッセージ』と“宇宙人もの”にハマっている、リアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田がオススメするのは、『散歩する侵略者』。

 劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台『散歩する侵略者』を黒沢清監督が映画化した本作は、“宇宙人による侵略”を描いています。その侵略の仕方が、これまでの同ジャンルの作品とは異なる発想が軸になっているところにとても惹かれました。人の体に乗り移った侵略者たちは、次々に人間の“概念”を奪っていく。「家族」や「仕事」、「所有」、「自分」……。侵略者たちが人間から概念を奪い、それを学習していく様子から、観ているこちらも改めてそれらの概念を考えさせられます。

 その概念が奪われた時の、人間たちの反応にも注目。彼らは皆、涙を流します。それは、大切なものが奪われたという悲しみの涙なのか、縛られたその概念からの解放による安心の涙なのか。そして、本作では一番最後に、ある概念を奪われてしまう人物がいる。その直後の表情から、その人物がどんな気持ちでいるのか、その人にとって、人間にとってその概念がどれほど尊く、大きいものなのかを考えさせられるはずです。

 3人の侵略者と、“ガイド”と呼ばれる侵略者のパートナーを担う登場人物たち、誰の視点に立って観ていくかでも、様々な楽しみ方があります。本作にも出演している東出昌大さんが、スピンオフドラマ『予兆 散歩する侵略者』の予告映像で、『あなそれ』で話題になった“冬彦さん”のような表情をしていたので、そちらもぜひチェックしたいところ。

(リアルサウンド編集部)