仕事に活かそうと思ってせっかく読んだ本をすっかり忘れてしまってはもったいないですよね。

写真拡大

人は読んだそばから忘れている

「あれ? 昨日読み終わった本、なに書いてあったっけ?」
「その本なら読みましたよ。でも……、中身が思い出せない……」

せっかく時間をかけて読み終わった本。読んでいるときは、頭に入っている気がしていたのに、後で内容を思い出そうとしてもなかなか思い出せなくて落ち込んだことはありませんか?

ただ、それもそのはず。人は「忘れる生き物」だからです。

ある記憶の実験によると、がんばって記憶したものでも、「1時間後には半分以上」、そして「1日後には8割近く」も忘れてしまう、という結果が出ています。ましてや、ただ読んだだけの本の内容をほとんど思い出せないのも、ある意味、仕方がないともいえるのです。

「覚えた」という錯覚を生むメカニズムとは?

「でも、読んでいるときは覚えるというか、頭に入ったような気がしたんだけれど……」

そんなふうに思う人がいるかもしれません。確かに、読んでいるときに、われわれは本の情報を一時的ですが、頭に入れています。そのときには「頭に入った」「覚えた」という感覚が生じます。しかし、これは本当に「覚えた」わけではないのです。

これは、「ワーキングメモリ(作業記憶)」と呼ばれている、一時的に情報を蓄えるところに入っただけなのです。われわれは本を読むときに、この「ワーキングメモリ」に情報を一時的に蓄え、思考したり、他の情報と結びつけることを行っています。

ただし、このワーキングメモリの容量は極めて小さいので、本を読み進めて新たな情報が入ってくると、前にあった情報は押し出されてしまいます。すでに持っている記憶と結びついた情報は忘れにくいのですが、結びつかなかった情報は、ワーキングメモリから出たらすぐに忘れてしまいます。

これが、「覚えたような感覚はあっても、実際には覚えていない」ことが起こるメカニズムです。あなたが必要な情報を覚えるためには、この「ワーキングメモリ」がもたらす錯覚に惑わされず、覚えるための行動をとる必要があるのです。

本の内容を忘れない最も効果的な行動とは?

どうすれば、読んだ本の内容を忘れず、覚えていることができるのでしょう?

そのための最も効果的な行動は「思い出す」こと。つまり、本を読んでいる途中に、読んだ内容について「思い出す」ことを意識的に行うのです。

先ほども説明したように、人はすぐ忘れるのでなかなか思い出せないのですが、それでも読んでいる途中であれば、すぐに思い出せることがあります。そうやって思い出せることは、あなたがすでに知っていることと結びつきやすかったり、強く印象に残ったりしたことです。

これらを思い出すことによって、繰り返しによる記憶の強化が起こり、忘れにくくなります。そして、いったん記憶に定着し始めると、さらに思い出しやすくなるので、繰り返しの回数が増え、そのことによってさらに記憶が定着する、というよい循環が起こります。

また、思い出せなかったこと、特に、大事なことで思い出せないことは、「思い出せない」こと自体が気になり、また本をチェックしたくなります。そうしてまた読むと、「ああ、そうだった!」と強く印象に残り、忘れにくくなります。

このように、読んでいる途中で「思い出す」行動を意識的に行うことで、記憶しやすい部分、大事な部分を繰り返し、忘れにくくなっていくのです。

「思い出す」をクセづけるための行動は?

この「思い出す」行動は、自分が「いかに忘れているか」の現実と向き合うことになるので、最初は苦しいかもしれません。

ただ、やっていけば、だんだんと自分の忘れる程度、スピードなども自覚できて、慣れてくるのでぜひやってみてください。なお、この「思い出す」をやり続けるために、オススメの行動があります。

それは、本について誰かに語る、というものです。

本を買ったり、読み始めたら、そのことについて、周りの人に対して話そうとするのです。そうすると、強制的に「思い出す」ことになります。また、人に話すなかで、本の内容が整理されてきます。さらに、人に話すことを意識することで、本を読んでいるときにも話しやすいよう、内容を自分なりに整理しながら読むようになります。これがまた記憶しやすくしてくれます。

あなたの周りにも、そんなふうに本についてよく話す人がいませんか?

これまであなたは、そんな人を「あの人は本の内容をよく覚えているなあ」と感心していたかもしれません。でもそれは、「覚えているから話せる」というよりも、「話しているから覚えられるようになった」かもしれないのです。

ぜひ、あなたもただ「読む」だけではなく、「思い出す」、さらには「話す」ことをして、あなたにとって大事な内容を忘れずに活用していきましょう!
(文:宇都出 雅巳)