ネイマールショック」

 この夏のFCバルセロナをひと言で表現する言葉だ。チームの柱であったネイマールがパリ・サンジェルマン(PSG)に移籍。多額の違約金を手にしたものの、どのクラブもバルセロナがお金を持っていることを知っており、獲得を狙った選手たちの金額は何倍にも高騰した。

 結局、バルセロナは思い描いていた補強をすることはできず、ネイマール退団後は1億500万ユーロ(約136億円)でボルシア・ドルトムントからウスマン・デンベレを、4000万ユーロ(約52億円)で中国の広州恒大からパウリーニョを獲得しただけに終わった。

 
バルセロナとの契約延長がまだ合意に達していないメッシ

 バルセロナ加入を熱望したといわれるマルコ・ベラッティ(PSG)、フェリペ・コウチーニョ(リバプール)の移籍は、新聞紙面の中だけで終わった。それだけではない。獲得間近であったニースのジャン・ミシェル・セリも、移籍成立直前で突然のキャンセルに。そしてリオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタとの契約延長は合意に達していない。

 これらの混乱について責任のなすりつけ合いがメディアやサポーターを通して始まっており、ジョゼップ・バルトメウ会長の不信任、退任を要求する声が日に日に大きくなっている。

 そのバルトメウ会長は数日前、カタルーニャ地元紙のインタビューの中で、ネイマールが退団したことで、「MSNにあまりにも依存していた個の力を重視したサッカーは解体される」と述べている。「組織的なサッカーをするバルセロナへと戻る大きなチャンスだ」とポジティブに物事を考えようとしているのだが、周囲の反応は冷めたものでしかなかった。

 その理由は、第一にバルセロナの黄金期を支えたシャビの後継者を見つけ出せずにいることだ。今夏獲得した選手たちも、どちらかと言えば、速攻を得意とするプレーヤーである。獲得を望んだベラッティやコウチーニョのようなMFのうち、ひとりでも獲得をすることができていれば、ここまでのネガティブなキャンペーンが行なわれることはなかったはずだ。

 それにもちろん、ネイマールを失ったことへの喪失感がある。チームを去った選手のことは早いうちに忘れるのが得策だが、あまりにも失ったものが大きすぎるため、そのブラジル人FWのポジションでプレーをすることになるジェラール・デウロフェウやデンベレに対する要求、そしてプレッシャーは尋常ではなく大きなものとなっている。

 バルトメウ会長はエルネスト・バルベルデ監督に対して「バルサのモデルと下部組織を尊重する監督」と期待を寄せている。だが今シーズン、下部組織からトップチームへの昇格選手はなし。期待されたDFマルロンはニースにレンタル移籍。トップチームでプレーしていたこともあるムニル、セルジ・サンペルも、レンタルでリーガの他チームへ移籍した。セルジ・ロベルトを最後に、トップチームに定着した生え抜き選手は出てきていない。

 こうなると、ともかく大事なのはピッチの中での結果である。前哨戦のスペインスーパーカップではレアル・マドリードの前にいいところなく敗れたが、リーガでは開幕から2連勝を果たし、好スタートを切った。デンベレとパウリーニョがともにピッチに立つのはこれからであり、彼らの補強が成功か失敗かを判断するのはそれからでも遅くないはずだ。

 原点回帰。サッカーの歴史上でも最高のチームと言われたバルセロナの姿を取り戻そうとするそのミッションは、決して簡単なものではない。だが、リーガやチャンピオンズリーグで優勝を争う強いチームを作るというのであれば、メンバーは十分に揃っていると言っていい。

 ショックから立ち直る一番の薬は、喜びや満足感を手にすることだ。バルセロナサポーターが満足できるだけのサッカーを見せること。それがバルベルデ率いるチームに今シーズン一番に求められているものであり、誰もが認める強いバルセロナを取り戻すための第一歩と言えるだろう。

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