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恋愛ゲーム「イケメンシリーズ」などを展開するゲーム開発会社「サイバード」(東京都渋谷区)が、裁量労働制の不適切な運用があったなどとして、渋谷労働基準監督署から是正勧告を受けた(勧告は8月14日付)。

対象となった元社員の女性が9月8日、厚生労働省記者クラブで会見を開いた。労基署に相談していたという、この女性は「長時間労働が続き、高橋まつりさんの事件が話題になっているころに体調を崩した。まつりさんの気持ちが少し分かった」と話した。

裁量労働制をめぐっては、今秋の臨時国会で、対象拡大が検討される予定。女性を支援する労働組合「裁量労働制ユニオン」の坂倉昇平代表は、「現状の対象ですら違法に適用されているケースが多い」と警鐘を鳴らした。

●みなし時間大きく超える残業で体調不良、裁量労働なのに「遅刻するな」

裁量労働制とは、実際の労働時間と関係なく、決められた時間分の労働をしたと「みなす」制度だ。ただし、誰にでも適用してしまうと、際限なく働かせてしまうことができるため、採用できるのは、一部業務につく裁量の大きな労働者に限られている。

この女性の場合は、19の業務だけに適用できる「専門業務型」だった。組合によると、会社は「ゲーム用ソフトウェアの創作の業務」という枠で女性に裁量労働制を適用。しかし、実際の業務は、ゲーム体験イベントやウェブサイト、SNSの運用など、自社商品の宣伝で開発とはまったく縁がなかった。

女性のみなし残業時間は月45時間だったが、タイムカードにあるだけで70時間程度、このほか労働組合は記録されていない休日出勤などもあったと主張している。女性は長時間残業が続いたことで適応障害と診断された。

体調を崩して以降は、朝が起きれなくなったといい、遅く出勤することもあったが、上司からは「裁量労働」なのに、定時を守るようになどと指示されたという。女性は現在、未払い残業代約130万円などを求め、会社と団体交渉をしている。

サイバードは是正勧告を受けたことについて、「認識が不適切だったのは確か。労基署と相談しながら、裁量労働制については見直しをしている」としている。

●法律で縛っても「労基署のチェック機能」働きづらい現状

裁量労働制の導入に当たっては、女性のような専門業務型にしても、現在対象拡大が検討されている企画業務型にしても、労基署に届け出を出さなくてはならない。

つまり、今回の件でも、渋谷労基署が一度は問題なしと判断しているということだ。渋谷労基署は、「違反があれば指導する。ただ、提出書類に虚偽の内容などを書かれると(弾くのは)難しい」という。

坂倉氏は「事実上、労基署のチェック機能は働いていない。法律で対象をどれだけ厳格に定めても、やり得になっているのが現状だ。対象条件が曖昧で、そもそも会社が『問題ない』と曲解しているケースもある」と警鐘を鳴らす。

なお、厚労省によると、裁量労働制の不適切な運用について、是正勧告の件数などの統計は存在せず、純粋な数は把握していないという。

(弁護士ドットコムニュース)