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もくじ

ー 戦いを余儀なくされたフェラーリの解
ー 「SF映画のセットのような別世界の感覚」
ー 18歳未満お断り? 生々しくも恐ろしい
ー 2台のスペック比較/もうひとつの選択肢

戦いを余儀なくされたフェラーリの解

レースは血統を育てると言われるが、フェラーリの場合、「使いやすいスーパーカー」という競争にシフトした。

なぜか。当時、ポルシェ(993)とホンダ(NSX)に販売台数が奪われ始めていたからだ。

そこでフェラーリが送り出したのがF355。スタイリングにはまだ308の面影を宿すが、その内側には目を洗うようなパフォーマンスと驚くばかりのダイナミック性能、そしてドイツ車にも匹敵するクオリティを秘めていた。

ポール・クリフォードは今回の取材車を2年前に購入した。「以前はマセラティ3200GTを持っていたが、もっと信頼性の高いクルマに乗り換えたいと考えた」と、彼はF355を選んだ動機を説明する。

「今日まで通常の整備にしかコストがかかっていないですよ。すごく安いクルマではないけれど、ちょっと古いメルセデスを買うのと同じぐらいですよ。実のところ」

GTBやスパイダーもあるなかで、GTSは最も数の少ないF355だ。右ハンドル仕様は500台たらずしかない。

クリップを緩めるだけでルーフパネルを取り外せ、それをシート背後に格納すればコクピットはフレッシュエアに包まれる。

隣にはTVRタスカンが停まっている。

「SF映画のセットのような別世界の感覚」

デイヴ・ハワードの2004年型タスカンSは第2世代の後期モデル。ヘッドランプカバーと液晶式メーターで、初期モデルと簡単に見分けられる。

ハワードはキミーラ450からこれに乗り換えた。「わたしはTVRのコミュニティが好きなんです。それに、乗ってみたら、評判とは違ってタスカンのほうがキミーラより運転しやすいとわかりました。冷却ファンが駐車中も回り続けてバッテリーを浪費したことがあったけれど、トラブルはそれだけですよ」

ひとたびタスカンに乗ると、細かいことは大目に見たくなる。軽量素材を多用したボディに、自社製の「スピード6」を搭載。パワーウエイトレシオは、F355さえ影が薄くなってしまうほどだ。

V8のような背中を蹴飛ばす加速感はないが、リミッターに当たってシフトアップするまでパワーが素早く直線的に盛り上がる。しかもタスカンのコクピットは、まるでハリウッドのSF映画のセットのような別世界の感覚。

美しく機械加工されたアルミのノブがあちこちに配され、風変わりなメーターは……。まぁ、アクセルを強く踏み込んだらもう役には立たない。

真っ直ぐ前方を見つめる以外にないからだ。それでいてタスカンは、おとなしく扱えば驚くほど従順なクルマでもある。

18歳未満お断り? 生々しくも恐ろしい

F355もそこは同じで、お婆ちゃんに郵便局まで行ってもらうのにも使えそうだ。しかし同時に、信じがたいほど容易に速く走れるクルマでもある。

すべての操作系がフィーリングに満ちており、わずかなインプットに対しても瞬時に予測しやすい反応を返してくれる。

パワーステアリングの重さも完璧だが、最大の美点はまったくフラットな姿勢でコーナーを駆け抜けることだろう。これはどんな速度でも、たとえわたしが度胸を決めてチャレンジしたときでも変わらない。

飛ばせば、ノイズはそれなりだ。まるで何か急ぎの約束でもあるかのように、V8はいつもせわしなくサウンドを奏でており、4000rpmを超えるとそれが非日常の叫びへと変化する。

「18歳未満お断り」の札を下げたほうがよさそうなほど、生々しくも恐ろしい叫び声だ。

一度これを聞いたら、もっと聞きたくなる。切れ味のよい6速ギアボックスや電子制御ダンパーのおかげもあって、F355は手袋のように身体にフィットする。

ルーフパネルを開けて走れば、これこそわたしにとって完璧なドライビングマシンなのである。

あなたはどちらを選ぶだろうか。

2台のスペック比較

モデル名フェラーリF355 GTSTVRタスカンS
生産台数 11206台 1832台 
シャシー スチールモノコック チューブラースチール 
エンジン DOHV型8気筒3496cc DOHCV型6気筒2498cc 
エンジン配置 リア縦置き フロント縦置き 
駆動方式 後輪駆動 後輪駆動 
最高出力 385ps/8250rpm 365ps/7000rpm 
最大トルク 37.1kg-m/6000rpm 42.9kg-m/5250rpm 
トランスミッション 6速マニュアル 5速マニュアル 
乾燥重量 1430kg 1120kg 
0-97km/h加速 4.6秒 4.2秒 
最高速度 277km/h 288km/h 

もうひとつの選択肢

ホンダNSX

美しく、速く、信頼性豊かなNSX。ハンドメイドのクルマであり、強い意志があれば日本メーカーにも正しいスーパーカーが作れることを示す生きた証でもある。

もっと高価であるべきだが、それは誰にも言ってはいけない。

■生産期間 1990〜2005年 
■生産台数 1559台 
■最高速度 269km/h 
■0-97km/h加速 5.8秒