フランス代表のFWアントワーヌ・グリーズマン。オランダ戦では先制ゴールを決めた【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

オランダに4-0勝利も、次戦でまさかのドロー

 2018年ロシアW杯に向けたヨーロッパ予選を戦っているフランス代表。8月31日のオランダ戦には4-0と大勝したものの、3日後に行われたルクセンブルク戦はまさかのドロー。ポグバ、グリーズマンや世界的名手が名を連ねるチームに有望な若手選手が加わり陣容は充実しているが、そのいっぽうで過去の大会でも見られた課題が改めて浮き彫りになった。(文:小川由紀子)

----------

 今回のW杯欧州予選でのフランスは、8月31日のオランダ戦は4-0と快勝したが、3日後のルクセンブルク戦では0-0のドロー。まさに『3歩進んで2歩下がる』といった感じだった。

 肝と思われた同グループ3位のオランダ戦に勝利、しかも同日、勝ち点で並ぶグループ首位のスウェーデンはブルガリアに3-2で敗れていた。次の相手は負けたことのないルクセンブルク。「連勝でW杯出場に王手だ!」という気運がめいっぱい高まっていたところへの予期せぬドローで一気にガクっと転落した。

 ちなみにフランスサッカー連盟(FFF)のデータによれば、ルクセンブルグには過去に一度だけ敗れている。1914年というはるか昔の話だ(4-5)。しかしその後は15回戦ってフランスが15勝。

 その強敵フランスを無得点に抑えてのドローという結果に、終了のホイッスルが鳴った後のホルツ監督以下ルクセンブルクの陣営は、まるで優勝したかのような喜びようだった。

 デシャン監督は試合後、「総体的に見れば、この2試合の前よりも状況は好転している。悲観する必要はない」と話した。

 たしかにこの2戦の前は、スウェーデンとフランスが同勝ち点だったが、得失点差でスウェーデンが首位に立っていた。今回1勝1敗だったスウェーデンが勝ち点+3に留まったため、フランスは1点差ながら単独首位に立ったのだ。

 とはいえ、数字的には4位のブルガリアまで首位勝ち抜けのチャンスが残されているグループAにあっては安泰というには程遠い。レキップ電子版のアンケートも、『フランスの首位勝ち抜けに不安がある」との問いに49%がOui(イエス)、Non(ノー)が48%と、揺れる国民の思いを表していた。

2試合とも際立ったパフォーマンスを見せたモナコの新鋭

 今回の2戦から読み取れたフランス代表の現状は、レ・ブルーはまだ発展途上にある、ということだ。

 2016年のEUROは、フレッシュな若手として2014年のW杯ブラジル大会を経験したポグバやグリーズマンが中心選手となり、あと一歩のところで優勝は逃したが、この延長上に18年のロシア大会での栄光がある、とさらなる成長を感じさせるものだった。

 しかし今回選ばれたメンバーは、半数が2016年のEURO未経験組。フランス代表は2016年組の熟成形ではなく、新たなメンバーを加えた発展形へと進んでいる。

 その核となるであろう選手がオランダ、ルクセンブルク両戦で光っていたトマ・ルマールだ。

 この夏、アーセナルのベンゲル監督が何が何でも欲しがっていた中盤のユーティリティ・プレーヤーは、現リーグアン王者のモナコがムバッペ以上に手放したくなかった選手(結局今季はモナコに残留)。昨季もムバッペが大々的にクローズアップされていたが、チャンスメークに長けたルマールの貢献は計り知れない。

 今回の予選も2試合ともに先発フル出場。中盤を広く動き、味方が「ここでいったん預けたいな」という場面で絶妙なタイミングとポジショニングで受けてくれる重要なパスの中継ポイントであるだけでなく、攻撃チャンスへの効果的な絡み、ゴールに直結するラストパス、さらには自らシュートも決められる(オランダ戦では2得点)。

 またその快足で相手のカウンターをブロックするなど守備面での貢献度も高い。彼はいまのデシャン陣営にとって、カンテと並んで「替わりの効かない選手」だ。

 今回の2戦を試合ごとに見てみると、オランダ戦は4-0とスコアだけ見ると景気が良いが、そこまで良い出来だったか? というと個人的にはそうは感じなかった。

 この試合でのオランダはことに突破力に乏しかったし、フランスは14分にグリーズマンが先制点を奪い、その後も右サイドのコマンが積極的にディフェンスの裏を狙うなどスピーディな攻撃アクションで押し込んではいたが、62分にMFストロートマンが退場になって相手が一人少なくなってからも、数的優位はなかなか追加点に結びつかなかった。その中で、中距離から絶品の左足シュートでゴールをこじ開けたのがルマールだった。

改めて浮き彫りになったレ・ブルーの問題点

 その後デシャン監督は、ジルーに替えてムバッペ(75分)、コマンに替えてラカゼット(80分)、89分にはグリーズマンも下げて、リヨン時代にラカゼットとのコンビが絶妙だったフェキールを投入して攻撃陣を一新、狙い通りカウンターからルマールが追加点、そしてロスタイムにはムバッペがダメ押しの一点をあげた。

 3点目のカウンターのシーンは、グリーズマン、ルマール、ラカゼットの3人が完全に抜け出した状態でゴールに迫り、ルマールがダメでもラカゼットが決められる、という余裕の展開。俊足のムバッペもいるとあっては、いまのレ・ブルーのカウンター攻撃は相当脅威だ。

 ムバッペの得点は、右サイドバックのシディベとのコンビネーションから。モナコ時代の僚友だけあって息もぴったりだった。デシャン監督もその点を評価したのか、次のルクセンブルク戦では、コマンに替えて右サイドでムバッペを先発させた。

 ムバッペ以外は同じ先発メンバーで挑んだルクセンブルク戦は、序盤から数多のゴールチャンスがあったにもかかわらず、相手GKジョベールの度重なるファインセーブや守備陣の渾身の守りに阻まれた。

 デシャン監督は、「相手GKのプレーは英雄的だった。我々に決定力がなかったのは確かだが、その理由を聞かれても答えられない。それがフットボールというものだ」と試合後話したが、実際には、すでにオランダ戦で見え隠れてしていた弱点が、このルクセンブルク戦であらためて浮き彫りになったと思われる点はいくつかあった。

 まずはジルーについて。攻撃手のバラエティとしてポストプレーヤーは置いておきたいところだろうが、今ひとつタイミングが周りと噛み合っていない場面も多く、『効いていなかった』という印象。

 彼はベンゼマがエースだった時代、またアーセナルでも途中出場からゴールを奪える好ストライカーだが、相手にプレッシャーをかけるという点に関しては少し弱い。先発でなくジョーカーとしての起用も効果的な気がする。

 それから、左サイドバックのクルザワ。彼は勢いのあるサイド攻撃が魅力で、そこから繰り出すクロスの数は多い。が、せっかくの好機で誰もいない遠方に放り込んだりと、精度は決して高くない。より慎重に、限られたチャンスを確実に得点につなげられるような冷静なパス出しができれば、決定機演出の確率もより上がるはずだ。

ルクセンブルク戦ドローを良い教訓にできるか

 同じことはポグバにも言える、オランダ戦でも、ファーポスト付近にコマンがフリーで構えていたのに自分でGKの真正面に打ち込んだ場面があったが、ルクセンブルク戦でも安易なミドルを連発するなど、最後のアクションを見極める判断力がもうひとつ欲しいところ。

 ポグバは超人的な活躍をする時と、2016年のEUROでもそうだったように、妙にバランスの悪いプレーをする時との差が大きい。

『中盤はカンテとボグバ』、という構想は、デシャン監督の中ではおそらくかなり堅まっている。グリーズマン同様、ポグバももはや彼自身の出来がレ・ブルーの出来を大きく左右する存在だが、彼はどうもクラブの方がパフォーマンスが良い気がする。案外「背負うと萎縮する」タイプかもしれない。

 また、デシャン監督は「決定力に乏しかった理由などわからない」と言ったが、ルクセンブルク戦では、ゴール前でのアクションが連動していないシーンも多々あったから、相手の熱のこもったディフェンスを賞賛する以外にも、自分たちで見直す点はある。

 そもそも本戦でも、フランスは、グループリーグではこのルクセンブルク戦のような展開を想定しなければならないのだ。過去の大会でもそうだったように。

 グループ内の強豪からは何がなんでもドロー狙いで勝ち点1を獲る、という姿勢で挑んでくるチームとフランスは相見えることになる。強豪同士のオープンゲームの方がよほど実力を出しやすいだろうが、こういった試合でいかにゴールをこじ開けるかはフランスにとって大きな課題だ。今回のルクセンブルク戦が良いレッスンになれば勝ち点2を失った甲斐はある。

 残る10月の2戦は、敵陣にて、ホームで無敗のブルガリア戦、そしてラストは、スタッド・ド・フランスでのベラルーシ戦だ。ベラルーシは今予選初戦でも0-0で引き分けているから、仮にブルガリア戦で勝ち星をとれず、背水の陣でこの最終戦に挑むことになると、フランスはちょっと危うい状況に追い込まれそうだ。

(文:小川由紀子)

text by 小川由紀子