インディカー・シリーズ第16戦、ワトキンスグレンではアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が今季初優勝を果たした。去年のインディ500でギャンブルの燃費作戦を成功させて初優勝したロッシは、ついにインディカーの強豪たちとの真っ向勝負の末にキャリア2勝目を手に入れた。彼がこの先、何度も勝利を重ね、スタードライバーへと成長する可能性も大いにあるが、もう今シーズンも残すところあと1戦。今回は白熱するチャンピオン争いに焦点を当てよう。

 31点のリードを持ってワトキンスグレン入りしたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、予選3位で先輩チームメイトたちより上位のグリッドを確保。これは一気にリードを広げるものと思われたが、ピットインからコースに戻る際にピット出口でクラッシュし、自滅した。


ポイントで首位のジョセフ・ニューガーデンを急追するスコット・ディクソン

 一方、ランキング2番手につけるスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)は、予選2位から2位でフィニッシュ。ニューガーデンとのポイント差は、もうないにも等しい3点にまでギュギュッと縮まった。歴代2位タイのタイトル獲得回数4回を誇るディクソン。もし5回目を獲ると単独歴代2位となる。ちなみにトップはAJ・フォイトの7回だ。

 ポイント3番手のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)も、ワトキンスグレンで奮闘、4位でフィニッシュしてチャンピオン争いに踏みとどまった。ニューガーデンとのポイント差は22点だ。

 インディカーのポイントシステムでは、ウィナーに50点が与えられるが、ソノマでの最終戦はダブルポイント(ポイントが通常の2倍になる)なので100点に。2位は普段の40点が80点、3位は35点が70点、4位は32点が64点、5位は30点が60点となる。

 カストロネベスが勝った場合、もしニューガーデンが2位でも一気にポイントが20点縮められる。そこにポールポジション(1点)やリードラップ(1点)、最多リードラップ(2点)という、倍づけされないボーナスポイント4点が絡む。つまり、カストロネベスには自力でタイトルを掴む可能性も十分にあるということだ。

 そうなったらデビュー20年目の初タイトル。見てみたい気もするドラマだ。チャンピオンになったらエリオは、晴れてインディカーを引退してスポーツカーに転向するのだろうか。それともチャンピオンとしてもう1シーズン戦うのか。

 2人がポイントトップで同点、なんてケースも考えられる。その場合は勝利数がモノを言うので、今年最多の4勝を挙げているニューガーデンはほとんど心配しなくていい。ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が最終戦で勝って優勝数で並んだ場合は別だが、パワーはワトキンスグレンで6位だったため、ニューガーデンとのポイント差は68点と大きく、大逆転はかなり難しい状況にある。

 そこへいくと、逆転タイトルの可能性はディフェンディング・チャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)の方がまだ大きい。ワトキンスグレンでは9位と振るわなかったが、残り1戦で差は34点。去年の最終戦ソノマで優勝したのもパジェノーだった。最終戦でドッカーンと好パフォーマンスを炸裂させれば、チャンピオンシップを防衛できる。

 ポイントリーダーのニューガーデンはどこまで有利なのか? ダブルポイントを考えれば、あまり大きな優位はないようにも見える。ワトキンスグレンで犯したミスはプレッシャーによるものかもしれない。

 一方、ディクソンのモチベーションは、もちろんマリオ・アンドレッティ、セバスチャン・ブルデー、ダリオ・フランキッティと並ぶタイトル獲得数タイから抜け出し、AJ・フォイトの7回に次ぐタイトル獲得数「5」を実現することにあるだろう。そのディクソンはソノマで2007、2014、2015年と3回も勝っている。それに対してニューガーデンは未勝利で、トップ3フィニッシュも経験がない。数字からもディクソン優位に見える気がするが……。

 ニューガーデンの戦い方が難しいのは、同じマシンで戦うチームメイトたちにもタイトル獲得の可能性があり、彼らとのバトルに気を遣わなくてはならないところだ。第15戦ゲートウェイでパジェノーに接触して怒りを買ったことも、マイナスに働きそうだ。パジェノーに対しては必要以上に慎重に戦わなくてはならないだろう。

 カストロネベス、パワーにしても大先輩。どちらともクリーンに戦うことが求められる。実はこの2人の先輩たちは結構、あちこちでぶつかってきた経験の持ち主なので、彼らとのバトルで共倒れになるおそれもニューガーデンにはある。

 そしてもうひとつ。ソノマで勝つ可能性があるのはチャンピオン候補だけではない。ワトキンスグレンで勝ったロッシにも十分チャンスはある。アンドレッティ・オートスポートは昨年ソノマで非常に速かったのだ。そのためアンドレッティ・オートスポート勢はライアン・ハンター-レイ、佐藤琢磨、マルコ・アンドレッティも勝てるマシンで戦うと予想されている。また、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)もソノマを得意としており、今年も彼は速いだろう。

 すでに4勝を挙げているニューガーデン。幸運に恵まれた勝利もあったが、運も実力のうち。チャンピオンとなる資格は十分だ。あとはこのチャンスをきっちりとモノにできるか。ワトキンスグレンのミスは忘れ去り、チームメイトのことも強く意識しすぎずに戦えたら本物だと言っていい。チャンピオンシップ獲得のチャンスはなかなか訪れるものではない。それをニューガーデンが掴めるのか。それともラインキング上位で唯一のホンダ勢であるベテランのディクソンが、またしてもさらっていくのか。9月17日にすべてが決まる。

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