あなたも「英語学習のドM体質」になってはいませんか?(写真:monzenmachi / PIXTA)

こんなに努力しているのに英語がまったく上達しない――。そんな状態に陥っている人はいったいどうしたらいいでしょうか。
かつて同じ悩みに苦しみながら、それを乗り越え、オックスフォード大学大学院で応用言語学を研究するまでになったのが水野稚氏です。『1年で話せた人が絶対やらない英語勉強法』著者でもある水野氏に、その乗り越え方について聞きます。


「英語が話せるようになりたい」と思いつつも、なかなか結果を出せない人には、共通する傾向があります。

それは、一生懸命取り組んでいるつもりが、間違った方向に向けて努力をしている可能性が高いことです。ちょっと過激かもしれませんが、「英語学習のドM体質」が原因のひとつかもしれません。

英語の勉強で挫折しやすい「ドM体質」3つのパターン

これは、「(英語が)できない自分が悪い」と自分を責める人に多く見られる傾向です。

多くの英語学習者を見ていて、「ドM体質」の傾向は、次の3つの思考パターンに分けられます。どれか思い当たるでしょうか?

英語は、我慢したり苦しんだりしないと上達しない
結果が出ないのは、すべて自分の努力不足だ
きちんとした立派な学習目標を設定しなくてはならない

は「難行苦行タイプ」です。努力至上主義ですから、「英語学習が楽しいはずはない」「苦しくてなんぼ」という前提で学びます。「楽しく学ぶ」という世界があるとは考えておらず、思うような結果が出ないと「まだまだ苦しみが足りない」とひたすら自分を追い込んでいくタイプです。

△蓮崗ー蠅兵己完結タイプ」です。たとえば、ネーティブスピーカーの先生とうまく会話ができないなど、英語力に自信を失うような場面に遭遇すると、「自分の努力が足りないからだ」と決めつけて自己完結してしまいます。単に先生や教授法との相性の問題かもしれないし、ほかの理由があるかもしれないのに、すべてを自分の努力不足だと思い込みがちなタイプです。

は「本音にフタをするタイプ」です。英語のニュースの理解や、仕事のためにTOEIC800点以上を取るなど、「立派な学習の目的」が必要だという前提で学びます。それが本音ならよいのですが、「英語ができないとグローバル社会を生き残れない」というような不安や恐怖心に駆られた学習動機に裏づけられている人。こうした場合、自分の興味や関心、趣味から離れた教材を選ぶので、3日坊主に終わることが多いです。

1つでも心当たりがあった方、要注意かもしれません。

こんなことを言っている、私もかつては「英語学習のドM体質」で、「必死に」「歯を食いしばって」をモットーとしていました。目に見えて成果が上がったのは、不思議なことに、必死に努力をしなくなってからです(詳しくはのちほどお話しします)。

「ひたすら英語」はあまり効果的ではない

自分の学び方に自信がない人ほど、ほかにも次のような、ちまたで宣伝されていることを鵜呑みにしがちです。

・ ひたすら英語のシャワーを浴びてみる
・ 英語を英語でひたすら理解する
・ 英語で考えようとする
・ 新たな英単語をひたすら増やそうとする

上記は一見すると問題ないようですが、どれにも「ひたすら」というキーワードが入っており、いわば「努力のための努力」になっている点からお勧めできません。

「英語のシャワーを浴びる」ですが、意味のわからないものをいくら聞いても、聞けるようにはなりませんし、せいぜい「英語を学んでいる気分になれる」くらいでしょう。

「英語を英語で理解・英語で考える」は、いかにも英語通という感じがしますよね。ところが、いわゆる「バイリンガル」と呼ばれる人々も、どちらか一方の言語で思考することが学術的にもわかってきています。

最後の「新たな英単語を増やす」ですが、確かに英語力の向上には語彙力が欠かせません。でも、新たな単語をやみくもに増やすよりも、「今すでにあるもの」を生かしたほうが、効率的で無理や無駄がありません。

ところで、ネーティブの語彙数はどのくらいかご存じですか? 諸説ありますが、大卒で2万〜3万語です。ちなみに、日本人の英語同時通訳者は1万〜1万5000語、TOEICなど各種英語試験の高得点者は8000語が目安です。

多く感じますか? でも、学習指導要領では高校卒業時に3000語、大学受験には約5000語が必要と言われていますので、決して皆さんの語彙力が極端に低いわけではありません。

だからこそ、ただやみくもに単語の数を増やすよりも、もっと重要なことがあります。それは「類義語の使い分け」です。すでに知っている単語を本当の意味で「使える単語」に変えることが、語彙力向上の鍵です。

たとえば、「教える」を意味する英単語を調べてみると、teach、educate、instruct、tellなどがあります。それでは、それぞれの単語を的確に使い分けられるでしょうか? 漠然とこれら単語の意味を「教える」と覚えていても、なかなか使いこなせるようにはなりません。

駅までの道を聞きたいときに、”Could you teach me how to get to the station?”と尋ねたら、どんな意味になるでしょうか?

teachは、「レッスンを通して教える」ことですから、「道を覚えるために、レッスンに行っていいですか?」と尋ねてしまうことになります。正しくは、「情報を教える」という意味のあるtellを使います。

「すでに知っている単語では足りない」と新しい単語を増やすほうにばかり意識が向きがちですが、知っている単語を最大限に活用して、そのうえで新たな単語を足していくことをお勧めします。

自分に合う「楽しく続けられる方法」を見つけた者勝ち

最後に、筆者がいかに脱却できたかというエピソードをご紹介します。ドM体質のパターンで書いた3番目の話とも関連しますが、私自身の英語力が伸びたきっかけは、本当に読みたい英語の文章を見つけたことでした。

かつては、英字新聞に載っている単語をノートに書き写したり、難しそうな英文学作品に挑戦してみたりしましたが、どれもいわば「立派すぎる」目標だったために、続きませんでした。何度も挫折したのです。気合いの入りすぎた英字新聞による学習は、たった2日で終わりました。

そんなとき、星占いが好きだった私は、英語のサイトに、より多くの情報があることを知りました(ちなみにイギリスは星占い大国です)。恋愛運などについて、無料で読めるサイトが日本語よりずっと多くあったのです。本気で知りたいので徹底的に読みますよね。動機は不純で、まったく立派なものではありません。でも、だからこそのめり込めたのです。しかも、占いは形容詞やあいまいな言い方、仮定法の宝庫ですので、ずいぶん語彙力や文法力が鍛えられました。

また、「バイリンガルの漫画」もずいぶん読みました。『ドラえもん』や『金田一少年の事件簿』などです。これらは、もともと日本語で知っている漫画を英語と日本語の2つの言語で読めます。吹き出しが英語で、欄外に日本語が載っているので、辞書いらず。


ほかにも、ドラえもんは過去や未来に旅するシーンも多く、難しい文法事項とされる「時制」や「仮定法」のオンパレードですから、視覚とともに「感覚的」に文法がわかるようになります。事件ものやサスペンスものは、やけに殺人事件関連の語彙が増えたりしますが、アガサ・クリスティやエドガー・アラン・ポーを原著で読む力の基礎にもなります。

好きなうえに楽しいことですから、「努力」をしているという感覚さえなく、いくらでも取り組むことができました。そうやって英語学習の入口が楽しいものに変わったことで、そのうちに力が自然と身に付いて、以前挫折した英字新聞を読みこなすことができるようにもなっていました。

マイナスの感情から始めるのではなく

ところで、「論語」にはこんな一節があります。

之れを知る者は之れを好む者に如(し)かず。
之れを好む者は之れを楽しむ者に如(し)かず。
あることを理解している人は、それを好きな人にはかなわない。
あることを好きな人は、それを楽しんでいる人にはかなわない。

ストイックに努力するのが楽しい人は、もちろんそれでよいと思います。でも、もし努力しても結果が出ていないのなら、再考の余地があるかもしれません。英語の学習がつらいと思っている方は、「本音で」英語で読んでみたい、話してみたいことを見つけるほうが先決です。

「我慢しないと」「努力が足りない」「もっと苦しまないと」などとマイナスの感情から学ぼうとするのではなく、好きという気持ち、楽しいという気持ちに正直に向き合ったものだと、楽しく続きます。そうやって力が付いて、ハードルを越えていくこと自体に楽しみを覚えると、難易度が高いものにも挑戦したいと思うようになるのです。

まずは自分が「楽しい!」「ワクワクする!」と感じるもので、英語学習をはじめてみませんか。