最年少の『スパイダーマン』、トム・ホランドが示した等身大のヒーロー像 親近感溢れる魅力を読む

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 2002年から始まった『スパイダーマン』三部作。続く2012年からリブート化された『アメイジング・スパイダーマン』二部作。そしてこの度、再リブート化され、『スパイダーマン』シリーズとしては第六作目にあたる『スパイダーマン:ホームカミング』。公開が始まる前から大きく取り上げられていた本作だが、過去2つのシリーズとは趣が大きく異なった印象だ。もちろん本作が、マーベル・シネマティック・ユニバース入りし、アベンジャーズが登場したことによる、世界の大きな広がりを見せたのも理由の一つだろう。しかしこの印象の違いの決定打は、やはり主演のトム・ホランドにあるのではないだろうか。

(参考:動員ランキング初登場2位 『スパイダーマン:ホームカミング』の成績をシビアに分析する

 トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドに続き、今までで最も若い、15歳という設定のピーター・パーカー/スパイダーマンを演じたトム・ホランド。現在21歳の彼は、スパイダーマン俳優の中でも最年少だ。ピーターの「頼りなさ」といった設定を、的確に演じることで示したかつての2人。対するトム・ホランドは見た目の幼さそのままに、どうにも頼りない、まだまだ子どもなピーターを演じているのだ。

 前の2つのシリーズではいずれも、平凡な青年(といっても天才的な頭脳の持ち主である)が思いがけず、スパイダーマンとしての強大な力を手にしてしまった過程が描かれていた。そしてそのことから生まれる、喪失と葛藤の物語は、ドラマとしての重要度を占めていたのだ。本作でそれらは割愛されている。映画の始まりからピーターは「スパイダーマンであること」にはしゃぎ、アベンジャーズ(に象徴される、大人たち)に一目置かれているのだと勘違いしては、また勝手にはしゃいでいる。先の2人に比べてポジティブ過ぎる印象は、スマートフォンで自撮りまでしてしまう姿からも見てとれる。監督のジョン・ワッツも口にする通り、まさに今時の典型的なティーンエイジャー。クラスに1人は居そうな親近感を伴って、微笑ましく目に映るのだ。

 本作公開前からあちこちで見るCMや予告で、ハイテンションなトム・ホランドには元気をもらっていた。彼自身「スパイダーマンであること」に興奮が収まらず、目を輝かせて語りかけてくるさまには、こちらまでつくづく嬉しくなってしまったほどだ。「シネマカフェ」のインタビューによると彼はかつて映画に初めて出演した当時、「ヒーローを演じるなら誰がいい?」という質問に「スパイダーマン」と答えていた。そして現在の、「ラッキーなことに、僕の夢は叶ったんだ。でも自分で掴み取ったというよりは、夢が舞い込んできた感じかな」と語る姿は清々しく謙虚ながらも、ピーターの置かれた状況と重なっているように思える。

 物語の終盤、憧れのトニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)から直々にとある通告を受けるピーター。その時の彼の決断からは、悪戦苦闘を繰り広げたどのバトルシーンよりも、逞しく見えた。初めて彼に頼もしさを感じた、瞬時の選択と決断が、今後どのように展開していくのか楽しみで仕方がない。

 “大いなる力には、大いなる責任が伴う”とは、『スパイダーマン』の世界の根底に流れるテーマ。トム・ホランド自身とピーター・パーカーが、このテーマをどのように共有し、作品に反映させていくのか、そして何よりもトム・ホランド演じる、若きヒーローの成長を見守っていきたい。

(折田侑駿)