コーチングの冴えた大ベテランの湘南DF坪井慶介。最終ラインを引き締めた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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[J2 31節]湘南 2-2 横浜FC/9月2日/BMW
&[J2 32節]山口 - 湘南/9月9日/維新公園

 目下J2得点ランク1位のイバと高速アタッカーの津田知宏を封じ込めろ――。9月2日の横浜FC戦、湘南ベルマーレのDF坪井慶介に与えられたのはそんな難度の高いミッションだった。
 
 すると試合開始早々の25秒、GKからのフィードに抜け出したイバの背中を抑え込んだとして、坪井はイエローカードを受けてしまう。残り89分、あと一回警告を受ければ退場処分になってしまう。いきなり厳しいシチュエーションに立たされたのだ。
 
 それでもプロ16年目を迎える37歳の大ベテランは、「まったく動じなかった。気にはなりませんでした」という言葉どおり、むしろ、守備の強度を高めて対応。湘南ゴールに幾度となく襲い掛かってくる強力2トップにゴールを許さず、淡々と試合を進めていった。
 
 坪井は振り返る。
 
「イバ選手をはじめ、横浜FCの攻撃陣は個の力が強烈なので、細心の注意が必要でした。ただ、なにか極端なことをしようとはせず、自分ができるコーチングを常に怠らず、集中を保つことを考えました」
 
 25秒のイエローカードによって、プランを大幅に変えたわけではない。むしろ自分に与えられた役割を改めて明確にし、集中力・コーチング・守備の強度――そういった点の質とレベルの水準を一定に保ち、冷静に対応することに注力した。
 
 坪井は身体を張ったブロック、素早いプレスとインターセプトでゴールを許さない。危うい場面はあったものの、コンパクトな陣形を保つなかでボール奪取からショートカウンターに持ち込み、幾度となくホームチームにチャンスをもたらした。
 
「ただ、勝利につなげられなかった。そこは選手として反省しなければいけない。悔しいです……」
 
 68分、坪井は奈良輪雄太と交代する。すると結果的にそこから71分、90+5分に2失点を喫し、土壇場で2-2の引き分けに持ち込まれてしまう。湘南の者貴裁監督は「私の間違った采配だった。3点目を狙いにいったものの、結果的には、選手を交代する前のほうが3点目を取れるチャンスがあった」と自身の采配について振り返り、反省していた。

 警告も影響しての坪井の交代であった。ただ確かにカードを切ったあと、それまで絶妙に保たれていた拮抗が徐々にズレて、そこから選手や布陣を変えるたびに、指揮官の狙う推進力はなかなか生まれなかった。者監督のいうとおり、すべては結果論になってしまうが、サッカーの奥深さを物語るような展開になったと言えた。
 
 そして坪井は指揮官の言葉に首を振り、「結果」を残せなかったことを何よりも悔やんでいた。
 
「者さんが悪いだなんて、誰も思っていません。あくまでも僕ら選手の責任。試合に出て勝たせられなかったのだから、そこは悔しいです。責任を果たせなかったんですから」
 
 その言葉からは警告になったワンプレーは悔やんでなどいないが、チームに与えた影響を申し訳なく感じていることが伺えた。岡本拓也が26節の松本戦で負傷退場したあと欠場が続き、島村毅の出場停止も重なり、今回、先発出場のチャンスが巡ってきた。そこで最低限の「結果」は残したと言えたが、満足などしていなかった。

 勝点3を逃した展開と言えたのは事実だ。それでも坪井が示したイバや津田への対応と周囲との連係は、終盤戦に突入する湘南にとって大きな収穫となったはず。
 
 9日にはアウェーで山口と対戦する。果たして坪井の2試合連続スタメン出場はあるのか? 無論、起用法にかかわらず、残り11試合、坪井は全力でボールを奪い取り、声を枯らして湘南を盛り立てる。唯一無二の目標である、J1昇格のために。
 
取材・文:塚越 始