■震災で業態転換 水産加工に活路

 主力商品はたこわさび、ほたてわさびなど、独自の「丸荒」ブランドのギフト用水産加工品。

 都内をはじめ、全国の百貨店で販売し、好評を得ている。水産加工で培った技術を生かしたバウムクーヘンを開発。水産加工会社と洋菓子というギャップと、確かな味で、大きな話題を呼んでいる。

 昭和49年に創業し、水産卸売業者として順調に成長していたが、東日本大震災の津波で5つあった工場のうち4つを失った。商品を買い付けていた地元の漁業者にも大きな被害があり、大幅な業態の転換が迫られた。たどり付いたのが鮮魚などを加工し、付加価値を高めるという戦略だった。

 商品開発は試行錯誤の連続。従業員の知恵を借り、家庭の味を再現した特別な技術を使わない、素材の味を生かした珍味は評判を呼び、とりわけ、ぶつ切りにした大粒のミズタコを用いた「たこわさび」は好評だったという。商品の卸先も販売力のある百貨店などにしぼり、ブランド力の低下を防いだ。

 平成25年には震災前と同程度の約8億円まで売り上げを回復。「ハマーレ歌津」にアンテナショップを出店し、自慢の加工食品のほか、バウムクーヘンを提供している。心がけているのは話題性と品質の両立。品質には徹底してこだわる。失った4つの工場の機能を集約した新工場の建設も進み、今年度中の完成を目指す。

 「しっかりした商品、他にない商品をお客さんに届ける」の信念の元、南三陸の味を日本中に発信する。(林修太郎)

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 ◆及川吉則社長(51) オール南三陸でまちを活性化

 −−強みは

 「企画力、アイデアはどこにも負けていない。社員の発案を受け入れる風通しのよさがある。たとえば、シャケを麹漬けにした商品は社員のアイデアが実ったものだ」

 −−加工業に転換したメリットは何か

 「鮮魚などの卸売業では、漁の出来不出来や、市場での相場に左右される割合が大きい。産地間の値下げ競争に巻き込まれることもある。加工業に転換したことで業績の安定感が増したと思う。加工することで一定の利益を確保し、地元産の海産物の買い支えもできる。地域の人にみてもらいながら、オール南三陸の体制づくりをしながらまちを活性化していきたい」

 −−バウムクーヘンを開発したきっかけは

 地域の子供たちに、近所であまり食べられないものを食べさせたかった。バウムクーヘンと水産加工は結びつかないと思うかもしれないが、火加減や味付け、パッケージングなどのノウハウに、水産加工と共通する部分は多くある。また、バウムクーヘンは日持ちもするしロスも少ない。漁の出来不出来にかかわらず、計画的に生産できる点もよい」

 −−将来の目標は

 「現在の売り上げは震災前のそれと内容が重複しない。新工場が完成すれば、現在の加工業に加え、以前の卸売りの分も加わる。あと何年かたてば、南三陸産のおいしい海産物もたくさん穫れるようになる。それまでは加工の引き出しを増やす段階だ。5年後には会社を軌道に乗せ、10年後には売り上げを震災前の倍まで増やしたい」