「待ってました!」と思わず叫んでしまいそうな見出しが躍る、踊る。

 自民党の参議院議員、今井絵理子氏との不倫を報じられた神戸市議会議員の橋本健氏の辞職報道である。

 政務活動費を不正に受け取った疑惑が発覚し、一気に辞職へ。

「橋本市議 SPEED辞職へ」(サンケイスポーツ 8月29日)
「疑惑市議 SPEED辞任」(日刊スポーツ 8月29日)

 見事にそろった。「SPEED」とはもちろん今井絵理子議員がかつて所属していたグループ名にひっかけたもの。


サンスポ(上)、ニッカン(下)ともにSPEEDにひっかけた

 日刊スポーツは「今井絵理子議員とは『一線越えていない』反論も政活費は『一線越えた』?」とご丁寧なダメ押しもあった。

 そういえば橋本健氏と今井絵理子議員の不倫報道直後、

「今井議員 スピード謝罪」(7月28日)

 と読売新聞が小さい記事だがしっかりダジャレをかましていた。誰もが思いつくことを堂々と言ってしまう「オヤジジャーナル」の圧巻である。


2009年、SPEED時代の今井絵理子氏 ©杉山拓也/文藝春秋

「まだネタないか?」からの深刻な事態

 さんざん脱力見出しを紹介してきたが、今回私が書きたいのはここから。

 橋本市議はマスコミにとってネタにしやすかった。「元SPEED」とか「一線を越えてない」とか、わかりやすいワードがあってイジりやすかったのだ。

 でも、だからこそ政務活動費の不正も発覚したと言える。

 次の記事は橋本市議の報道が変わってきた例だ。

「政活費で今井絵理子議員を応援か 神戸の自民市議が30万円返還へ」(東京新聞夕刊 7月27日)

《神戸市議会で自民党会派に所属する橋本健市議(37)が昨年六月の参院選公示直前、選挙活動中だった自民党の今井絵理子参院議員(33)との対談を盛り込んだ市政報告約二万部を政務活動費(政活費)で作成、支持者らに配布していたことが二十七日、会派や市議会事務局への取材で分かった。》


2016年、参議院選挙当選時の今井絵理子議員と安倍首相 ©浅沼敦/文藝春秋

 こういうのがぽろぽろ出てきて「まだネタないか?」「この市議会議員なんだかうさん臭いから他も調べてみよう」と追っていたら、ホントに深刻な案件を思わず突き止めてしまったのである。

 この政務活動費ネタ、ちょうど昨年の今頃は富山市議会で大騒動になっていた。政務活動費を不正受給していたとして14人もの市議が辞職。

 このときも最初は「議員報酬の引き上げ」(月額60万円から70万円)に疑問を持った地元テレビ局が、「議員たちは何にお金を使っているのか?」と情報公開請求をおこなったことがきっかけだった。ひょんなことから、とんでもない不正を暴くことになったのだ。

政務活動費問題をブレイクさせたのは「号泣議員」

 今回の神戸の橋本市議は「印刷業者に架空の発注をし政務活動費を不正に受け取った」疑惑だが、富山でも印刷会社と口裏を合わせた白紙の領収証がゾロゾロ出てきた。

 神戸も富山も同じ手口。だとするとこれはもう「慣習」の域で、もしかしたら日本全国の地方議会もみんな同じことをやっているのでは?そんな邪推も成り立つ。

 神戸と富山は「たまたまわかりやすいネタ」が最初にあってマスコミがさらに調べたら出てきただけなのだ。そこがゾッとする。

 救いなのは、国会議員だけでなく地方議員のずさんさにも最近は注目が集まりだしたこと。その「立役者」として私があげたいのは元兵庫県議の野々村竜太郎氏である。あの「号泣県議」。政務活動費と地方議員の問題を一気にブレイクさせた。


号泣する野々村竜太郎兵庫県議(当時) ©時事通信社

 最初は「号泣」という絵面のインパクトに目が行き「わかりやすい物件」だったが、そのうち地方議員もヤバいな、と多くの人が思い出したのだ。それはつまり「自分たちが気づかなかったから、こんなにヌクヌクとしていられたんだ」という苦い衝撃でもある。

 その後も近くの庭の石ころをどけてみたら、見たこともない虫が気持ちよさそうにウジャウジャいた。あまり気づかれないことをいいことに、私たちが見過ごしていたばっかりに。

 国会議員だけでなく近くの地方議員にも注目していくべきだと教えてくれた野々村さん、ある意味ありがとう。

(プチ鹿島)