『マンガで読む嘘つき中国共産党』(新潮社/辣椒)より

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 中国では、なぜいまだに反日教育が行われているのか。そして、中国国内で中国共産党批判をしたらどうなるのか。それらの実態を暴いた『マンガで読む嘘つき中国共産党』(新潮社/辣椒)が、今年1月に発売された。

 9月7日付記事『中国、「反日洗脳」教育の実態…幼稚園から「日本鬼子」、反日絵画コンクールを開催』では、著者で「中国亡命漫画家」の辣椒(ラージャオ)氏に話を聞き、中国当局から受けた迫害や中国の言論弾圧についてお伝えした。

 後編では、中国で人気の「抗日ドラマ」や中国共産党の「3つの自信」と「7つの禁句」などについて、さらに辣椒氏の話をお伝えする。

●中国共産党が存在する限り日中友好は不可能

――真の日中友好のためには、何が必要だと考えますか。

辣椒氏(以下、辣椒) 過去に何度も、日本の記者からの同様の質問に答えたことがあります。

 中国共産党が存在する限り「中日友好」は不可能であり、中国共産党の独裁が続く限り、中国は存在し続けると同時にあらゆる「中日友好」の試みは無駄だと思います。中国共産党は、党の安定を保つために「日本は中国の敵である」という状況を必要としているからです。

 私は、先見の明を持っている日本の友人たちには、中国の民主化運動について、一緒に努力してほしいと提唱しています。「中国民主化」と「分離主義運動」を推進し、党国一体の中国解体および連邦国家を再構成すること。これが叶えば、中日友好も実現する可能性があります。

――中国では、今もテレビドラマや映画で「抗日劇」が人気のコンテンツになっているという現実も、本書で触れられています。抗日劇では、徹底的に「中国が正義で日本が悪」という構図のようですが、これらも反日感情を煽っているのではないでしょうか。

辣椒 中国では「共産党がなければ、新しい中国はない」と教えられているので、抗日ドラマは今後も続々と放送されるでしょう。最近では、内容があまりに荒唐無稽で非現実的だという声もありますが、それでも人気プログラムのひとつです。子どもの頃から抗日ドラマを見ていれば、対日感情にいい影響は与えないでしょう。

●中国国民が決して教えられない「7つのタブー」

――本書では、「中国共産党は『3つの自信』があると強弁している」とも伝えています。

辣椒 中国共産党は「理論への自信」「進む道への自信」「制度への自信」というスローガンを掲げていますが、実際はなんの自信もなく臆病です。

 中国には「七不講」(7つの禁句)があります。「人類の普遍的価値」「報道の自由」「公民社会」「公民の権利」「(共産)党の歴史的誤り」「権貴(特権)資産階級」「司法の独立」のことです。

 中国当局は、北京や上海などの大学教員に対して、この7つの項目について学生に教えることを禁止しています。その姿勢こそが、中国共産党は自信がないということの表れです。

「権貴(特権)資産階級」は聞き慣れない言葉ですが、権力と資本が癒着した資産階級のことで、一党独裁下の市場経済化で不正・腐敗が蔓延する中国の現状を批判的に解説する際に使われています。中国は腐敗国家です。そして、政治の腐敗が多いために中国人の間には不満が溜まっています。

――「自信がある」にもかかわらず、国家的に7つものタブーを制定するというのは、確かに不自然ですね。

辣椒 「3つの自信」は前国家主席の胡錦涛が掲げたもので、後任の習近平国家主席が内部会議で「7つの禁句」を提出しました。さらにその後、習近平が「3つの自信」を「4つの自信」に拡大させたという説もあります。

 4つとは、「中国経済の成長が合理的区間と所期の目標内にあること」「中国経済の発展の質と効果が確実に向上していること」「中国経済には力強い内的原動力があること」「アジア太平洋の発展の良好な見通し」です。

 しかし、自信が3つでも4つでも、実際にはひとつもありません。中国共産党は中国人の世論を恐れています。どんなに言論を弾圧して「7つの禁句」を定めても、人々の不満は簡単には収まりません。

 中国で教えられていない「7つの禁句」は、民主主義国家であれば誰もが教えられていることです。中国人にとっては悲劇以外の何物でもありません。

――本書をはじめとする風刺マンガは、まさに「7つの禁句」に触れるものだと思いますが、なぜ中国政府はそこまで風刺や世論を恐れるのでしょうか。

辣椒 風刺マンガを恐れているのは、中国共産党だけではありません。おそらく、すべての独裁国家がそうでしょう。

 中国共産党は、風刺マンガを利用して「敵」に打撃を与えることは歓迎しますが、自分たちと意見の異なる風刺マンガや中国共産党自体の風刺は絶対に容認しません。この場合の「敵」はさまざまです。「分離独立派」や「民主派」、場合によっては日本も当てはまるでしょう。

 ただし、風刺の矛先が中国共産党に向かったときは、ありとあらゆる手段を使って弾圧を行います。言論を弾圧する彼らにとって、風刺マンガも言論のひとつなのです。

●独裁色を強める習近平、なぜ人気が高い?

――習主席は言論弾圧を強化しているとされています。中国の言論弾圧の状況ついてはいかがでしょうか。また、習主席の中国国内の人気というのは、どうなのでしょうか。

辣椒 中国のあらゆるメディアや媒体は、中国共産党の宣伝機関にすぎません。その宣伝機関が鼓舞している影響もあり、大変残念ですが、習近平の人気はとても高いです。

 昨年、習近平が毛沢東や臂平と同じく中国共産党の「核心」と位置づけられました。これに対して、中国共産党の制約を受けない海外メディアは批判する姿勢です。しかし、中国国内で中国共産党の制約を受けていないメディアはもう存在しないと言いきっていい状況です。

 企業だけでなく、個人が発信する言論もかなり厳しい制約を受けています。そのため、中国の世論はもう参考にする価値がないに等しい。彼らは支持のみで反対することができないからです。

 ほかに、中国共産党には「大外宣」という政策があります。この政策下で、中国共産党は海外の中文媒体と華人団体を買収しているため、反中国共産党の中文媒体と華人団体はごく少数になっており、その影響力には限度があります。今や、中国共産党は国内外の中国系メディアをほぼ完全に掌握したといっていいでしょう。

――秋の中国共産党全国代表大会を前に、「ポスト習近平」の1人と見られていた重慶市党委員会書記の孫政才氏が逮捕され、失脚しました。習主席は独裁色をますます強めていくのでしょうか。

辣椒 これは、習近平が非常に大きな野心を持っていることの証明です。彼は中国共産党の歴史的政治形態である「老人幕後干渉」を排除することに成功し、胡錦濤や江沢民が習政権に口出しできない体制をつくりました。「老人幕後干渉」とは、日本語で言う「院政」です。

「ポスト習近平」についていえば、習近平はこれからもトップの座に居座ることを考えているので、後釜は不要です。きっと、独裁の道を歩むでしょう。

●劉暁波は中国政府に謀殺された?

――7月に人権活動家の劉暁波氏が肝臓がんで死去しました。中国の民主化を求めていた劉氏は2010年にノーベル賞平和賞を受賞しましたが、国家政権転覆扇動罪で服役中だったため、受賞式への出席は認められませんでした。がんに罹患後は家族が国外治療のために出国を求めていたものの、中国当局は認めなかったといわれています。政府の姿勢について、どう思いますか。

辣椒 一部では、「劉氏は中国政府に謀殺された」という説もあります。すべての経過を見ると、私はこの説を支持します。現在も多くの政治犯が謀殺されていますが、私たちは力不足でどうしようもありません。

 現在、外国政府に「中国の劣悪な人権問題を改善しよう」という動きがありますが、中国共産党はそれを無視しており、政治犯の置かれている状況を改善しようという考えはまったくありません。

――ありがとうございました。
(構成=長井雄一朗/ライター)