多くの猫を興奮させる作用を持つマタタビ。実は人間にとっても古くから、血行促進や強精、疲労回復など多くの効果があるとされている。

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「猫にマタタビ」とは、非常に好きなものの例えで、与えれば効果を発揮することを指すことわざ。本物のマタタビの実や葉からはフェロモンが放たれており、猫が嗅いだり食べたりすると“酔っぱらって恍惚とした状態”になると言われている。そんなマタタビだが、じつは人間の健康にも好影響があるそうだ。その成分や効能について、植物生態学に詳しい東京農工大学・藤井義晴教授に聞いた。(フリーライター 末吉陽子)

なぜ猫を興奮させる?
カギは3つの化学物質

 マタタビはキウイフルーツと同類であるマタタビ科マタタビ属のつる性落葉木。樹木に巻きつきながら成長し、夏にはウメに似た花が咲き、果実がなる。世界を見渡しても、千島列島を含む日本全土と朝鮮半島の山間部など限られた地域にしか自生していないという珍しい植物だ。

 そのマタタビが猫にとって“媚薬”とされる所以は、3つの含有物質にあるという。

「マタタビに含まれる特異的な成分として、『ネペタラクトン』『イリドミルメシン』『イソイリドミルメシン』という物質が挙げられます。まず、1つ目の『ネペタラクトン』ですが、イヌハッカというハッカの仲間にも含まれるもので、猫の性フェロモンと構造が似ていることから、性的な興奮を呼び起こしていることが考えられます。次に2つ目の『イリドミルメシン』ですが、い草の香り成分で、働き蟻の肛門腺分泌物やマンゴーにも含まれ、こちらも猫を興奮させる作用があります。最後に3つ目の『イソイリドミルメシン』も、『イリドミルメシン』と似た構造を持っている物質です」

 この3つの物質は、猫に特有の生理作用を及ぼすという共通点があるため、総称して「マタタビラクトン」と呼ばれている。そもそも、なぜそれらの物質が猫を興奮させるのだろうか。

「これらの物質は異なる生物に作用して、特定の行動を引き起こしたり、生理に何らかの影響を及ぼしたりする『アレロケミカル』の一種です。植物に含まれるアレロケミカルが動物に作用する成分を持っていることは割とあって、極端な例としては大麻に含まれる『カンナビノール』が挙げられます。これを人間が摂取するとうっとりとするわけですが、なぜそのような作用を及ぼすのか、未だ十分に明らかになっていません」

「『マタタビラクトン』もなぜマタタビが猫を興奮させる物質をもっているのかよく分かっていませんが、おそらく採取などの攻撃に対して相手を陶酔させることで身を守ろうと生成されるようになったと考えられています」

 植物は動くことができないため、様々な方法で身を守ろうとする。アレロケミカルは、植物の生存競争を通して、自然と創り出されるものなのだそう。

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