「そのアイシャドウどこの?」「○○だよ」という会話についていけない。デパートのコスメ売り場を歩いても、新作が全然わからない。そんな時、このままでいいのかなとハッとしますよね。

なんでも新作に飛びつけばいいわけではないけど、置いていかれるのも嫌。そのようなコスメをめぐるビミョーな思いを、働く多様性のある女性に向けた「次の上質を知る」ためのウェブサイト『NikkeiLUXE(日経リュクス)』編集長の米川瑞穂(よねかわ・みずほ)さんに聞いてもらいました。

まじめにコツコツ頑張る女子がターゲット

--米川さんは、『etRouge(エルージュ)』*の編集者でもいらっしゃいますよね。すごく攻めたビジュアルで格好いいなと思いました。コピーも「知性が口紅をつけたら、最強。」と、モテ目線でないコスメの取り上げ方が素敵です。

*日経BP社が年に4回発行している美容系フリーマガジン

米川瑞穂さん(以下、米川):ありがとうございます。

--あの……。失礼かもしれませんが、日経BP社といえば、「THE ビジネス!」というイメージがあって。エルージュのような媒体や米川さんのような雰囲気の方がいると知って驚きました。

米川:私も、新卒で入社した時は美容のことをするとは思わなかったです(笑)。会社の中でも珍しい存在だと思いますよ。やっていることもそうだし、見た目も金髪ですしね。ただ、エルージュが奇抜ということはなく、読者ターゲットも、まじめにコツコツというタイプなんですよ。

--なるほど。でも彼女たちは、コスメに対するプライオリティはそんなに高くなさそうなイメージがあります。だから、美容誌を開いた時に、10万円以上するクリームを見てびっくりしちゃう。「えっ、これ買っていいの?」ということもあるのでは?

忙しすぎてコスメの冒険ができない?

米川:戸惑ってしまいますよね。働く女性のメディアを作っていて思うのは、歳を重ねるごとに、定番品以外を選ばなくなる傾向にあるということなんです。背景には、仕事が忙しくて流行ばかり追えない。コスメの研究に時間を割けないという現実的な面もあると思います。

--確かに、ファンデーションなんかもリピート買いしがちです。

米川:今までと同じものを買うのもいいんですけど、そこであえてトレンドのものや新技術が使われているものを買ってみることで新しい感性に触れることができると思うんです。マットなのに薄づきだとか。ちょっとだけ新しいものを取り入れるのはすごく大事なことだと思っているんです。

それに、昔からの定番品だけでお化粧をしていると、雰囲気がアップデートされないので「あの世代の人」のままの可能性が……。

お金をかけるなら、楽しく、上質なものを

--お化粧で世代分けされてしまうのはちょっと悲しいですね。

米川:そうですね。でも、ちょっとコスメを変えるだけでその垣根も自然となくなるのかな、と。具体的には、目元のメイクを、ブラックのアイラインでぐるりと囲むのをやめてブラウンに変えてみるとか。

--買い替えと同時に、アップデートしていくのが理想なんですね。今ってインスタとかを見ていると安くていいものを使っている“目利き”みたいなものが良いとされている気がします。だから、ハイブランドのコスメを使うのは、なんだかいかにもという感じがして……。

米川:プチプラでも良いものがたくさん出ていますよね。でもハイブランドのコスメを使うことに引け目を感じるのはもったいない。コスメって、値段によってパウダーの粒子の大きさが違うんですよ。アイシャドウもファンデーションも、粒子が細かいほど繊細な輝きで女性を美しく見せてくれる。最先端技術を搭載しているから値段もそれなりになると思えば選ぶのが楽しくなりますよね。

後編は9月8日(金)公開予定です。
(取材・文:薮田朋子、写真:青木勇太)