ロシア・ワールドカップ出場を決め、岡崎や香川と喜びを分かち合うハリルホジッチ監督。写真:サッカーダイジェスト

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 「チームこそスター」という揺らがない信念があるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は特定の個に依存しない傾向にある。それは今回の最終予選での起用法を見ても分かるはずだ。
 
 昨年9月のUAE戦で先発出場したメンバー(本田圭佑、岡崎慎司、清武弘嗣、大島僚太、長谷部誠、酒井宏樹、吉田麻也、森重真人、酒井高徳、西川周作)のうち、今も不動に近いレギュラーは長谷部、酒井宏、吉田の3人だけ。当時、原口元気や山口蛍は控えに甘んじており、川島永嗣、昌子源、大迫勇也、久保裕也、井手口陽介などは招集すらされていない。
 
 そこから1年の時を経て、本田や岡崎がベンチに座る光景も珍しくなくなったわけだが、これはつまり、チームの新陳代謝が進んでいるということだろう。
 
 少なくとも、主力メンバーをほぼ固定して競争意識を煽れなかったアルベルト・ザッケローニ監督に比べれば、ハリルホジッチ監督は勇気ある采配でアジア予選を戦った。
 
 ホームのサウジ戦も勝ったからよかったものの、仮に引き分け以下だったら更迭されていたかもしれない。そうしたプレッシャーとも戦いながら、強気なスタンスで大迫、久保あたりを抜擢してきたのは、最大の目標を予選突破ではなく、本大会での上位進出に定めているからだろう。実際、ハリルホジッチ監督は事あるごとに「世界で戦えるチームを作る」というニュアンスのコメントを発してきた。
 
 そう考えると、大島のサプライズ起用や酒井高のボランチへのコンバートも、今となっては有意義なテストに映る。親善試合とはひと味違う雰囲気に包まれるワールドカップ予選の舞台でチャレンジしてこそチームの成長につながるとハリルホジッチ監督は確信しているのだろう。
 
 何にも恐れないという意味で、この指揮官は勝負師だった。
 
 では、敵地のイラク戦でも井手口、遠藤航、昌子と代表経験の浅い選手を揃って先発させたハリルホジッチ監督の、いわばギャンブル的な采配を選手たちはどう受け止めているのか。大迫はこう答えている。
 
「監督の決断を信じて戦うしかないです。メンバーを固定していないぶん、いろんな選手にチャンスがある。抜擢された試合で結果を残せばA代表に定着できるはずだし、前向きに捉えています」
 メンバーを固定しないのは、ハリルホジッチが相手ありきの戦略を練るタイプの指揮官だからだ。もしかすると、チャレンジに見えるその采配も本人に言わせれば「用意周到」となるかもしれない。
 
 あえて守備的な戦術で臨んだアウェーのオーストラリア戦、今野を有効活用するためG大阪の戦い方を参考にして4-1-2-3システムを採用した敵地のUAE戦など、ハリルホジッチ監督は確かな戦略を持って戦っていた。スタイルがないというより、臨機応変に戦い方を変えられるのが“ハリル流”なのだ。
 
 思えば、アルジェリア代表をベスト16に導いたブラジル・ワールドカップでも、ハリルホジッチ監督は大胆な采配を見せた。
 
 ベルギーとのグループリーグ初戦を1-2で落とすと、続く韓国戦はスタメンを5人も入れ替える荒療治で勝利に導く。そして、ロシアとのドローを挟んで迎えた決勝トーナメント1回戦では意外にも格上のドイツに真っ向勝負を挑み、相手を慌てさせた。結局、延長戦の末に1-2と敗れたが、その手腕は各方面から称賛された。
 
 世界では「弱小」の部類に入る日本がワールドカップという過酷な戦場で結果を残すためには、“奇襲”も得意なハリルホジッチが打ってつけの指揮官かもしれない。
 
 予選期間中はなにかと批判の矢面に立たされたが、「アジア最終予選で黒星スタートのチームは本大会に行けない」「過去ワールドカップ予選でオーストラリアに勝ったことがない」というふたつのジンクスを打ち破り、グループBで首位通過という文句なしの結果を見せつけられては、続投を支持しないわけにはいかないだろう。
 
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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