民進党両院議員総会を終え、退出する山尾志桜里元政調会長(中央)=9月5日、東京・永田町の同党本部(写真=時事通信フォト)

写真拡大

前原誠司新代表のもと新生を誓う民進党の新体制がやっと決まった。いったん山尾志桜里衆院議員を幹事長に抜てきする人事を固めながら、大島敦・元総務副大臣に変更する朝令暮改は、相変わらず民進党のダメダメぶりを露呈した。民進党は前身の民主党時代から幹事長人事でつまずくことが多い。なぜ同じ失敗を繰り返すのか――。

■人事内定の夜に進行していた“醜聞”

山尾氏の抜てきは9月2日夜、党関係者やマスコミに伝わった。翌3日の新聞各紙は一斉に「山尾幹事長」を軸とした人事の概要を報道。代表代行には、代表選を争った枝野幸男・元官房長官と大島氏、政調会長は階猛氏、選対委員長に長妻昭氏という布陣が報じられた。

老壮青、男女のバランスに配慮。代表選の「負け組」からも枝野氏と長妻氏を起用した。特に当選2回で、国会などでは突破力がある山尾氏の起用は注目された。「保育園落ちた日本死ね」でという匿名ブログを取り上げて安倍晋三首相と国会でやりあって「女」を上げた山尾氏が、幹事長になれば、新生・民進党の顔として話題性に事欠かない。と、思われた。

ところが、である。「山尾幹事長」が固まった2日、超弩級のスキャンダルが進行中だった。その時、山尾氏は都内のホテルでイケメン弁護士と密会中。それを週刊文春が察知、取材を進めていたのだ。結局、“文春砲”が致命傷となり「山尾幹事長」は白紙に。いったん代表代行に横滑りする方向になったが、それも消え、主要ポストからは完全に外れてしまった。その経緯については、テレビのワイドショーなどでも詳しく報じられているのでご存じの人も多いだろう。

最終的に民進党の新布陣は、3日の新聞辞令から、山尾氏の名が完全に消え、大島氏のポストは代表代行から幹事長に変わった。他のポストは変化ない。

いずれにしても反転攻勢を図ろうとしていた前原氏が出足で大きくつまずいた。代表としての任命責任も大きく問われるだろう。そして山尾氏という民進党の主役候補を当面失ったことも痛い。

前原氏は5日、代表として臨んだ両院議員総会でのあいさつ冒頭「人事で心配をおかけしていることをおわびしたい」と陳謝。最初からおわびを口にしなければならない状態で、安倍政権を攻めるのは難しい。

■後任は「フー・イズ・大島」

今回の人事の問題点は「山尾幹事長」をめぐるドタバタだけではない。後任に大島氏を選んだことも、中長期的にみれば大問題に発展する可能性がある。

自らが「フー・イズ・大島」と語る通り、知名度はない。当選6回、60歳と、同党ではベテランの域に達しているが目立ったポストについた経験もない。今回、彼が幹事長に選ばれた最大の理由は、昨年、今年と2度の代表選で前原氏の選対本部長を務めたことに尽きる。つまり論功行賞人事なのだ。

論功行賞といえば2002年のことを思い出す。民主党代表選で3選を決めた鳩山由紀夫氏は、中野寛成氏を幹事長に起用した。非主流派は、中野氏が代表選で鳩山氏を支援していた論功で幹事長に抜てきした、と批判。ところが当事者の中野氏は危機意識が薄く「論功行賞より、論より証拠」「中野未完成(寛成)です」という自虐駄じゃれを連発。批判はさらに高まっていった。

■「自虐駄じゃれ」にみる危機感の薄さ

中野氏が14年前に飛ばした自虐駄じゃれは、今回大島氏が口にする「フー・イズ・大島」に通じる軽さを感じる人は少なくないだろう。今はまだ、山尾氏のスキャンダルが注目されているので大島氏への風当たりは、さほどでもない。しかし早晩、大島氏に対する批判が高まることも想像に難くない。

02年は10月に衆参7つの選挙区行われた補選で民主党は1勝しかできなかった。にもかかわらず中野氏は「(今回は)勝者なき選挙だった」と能天気な発言をし、批判が収まらなくなり、結局鳩山氏は同年暮れ、代表を退いた。ことしも10月22日に、衆院3補選がある。その結果しだいでは15年前の悲劇が再現する可能性さえちらつく。

この政党は、幹事長の人事でつまずくことが「お家芸」でもある。最近で言えば、昨年、代表の蓮舫氏は野田佳彦元首相を幹事長に指名。野田氏は蓮舫氏の兄貴分で党内の信望もあるが、なんといっても2012年、首相の時に衆院解散を断行して惨敗、多くの仲間を失った印象は強い。政権を失った「A級戦犯」の幹事長起用に党内外で疑問の声が上がり、蓮舫・民進党は浮上する機会を失った。

■党首以上の権力を握った「小沢幹事長」

「野党幹事長」というポストの役割は何なのか。与党の場合、党首は首相になるため、ナンバー2の幹事長が党務全般を受け持つ。だから幹事長には権力が集中する。ところが民進党のように野党の場合、党首も党務を全面的に仕切るため、幹事長の役割、権限は与党ほどはない。

それなのに民進党内で、幹事長というポストはなぜ注目されるのか。その原因は、小沢一郎氏にある。小沢氏は、若いころから幹事長ポストにこだわった。首相になって身動きが取れず1、2年で使い捨てになるよりも、幹事長として実権を握り続ける方がいいと考えていたのだ。その結果、自民党、新進党、民主党で幹事長を歴任。いずれも党首を上回る権力を集中させ辣腕をふるった。

民進党議員は、「小沢幹事長」の印象が強く残っている。特に09年に発足した鳩山民主党政権で、幹事長として政権を思いのままに動かしたころのことが忘れられない。だからこそ、幹事長人事に過敏になり、決まった人事に異論反論を繰り返し、党のバラバラ感をさらけ出しているのだ。

■「前原メモ」は生かされるか

前原氏は国会議員としての活動で失敗した時、同じ失敗を繰り返さないためのメモをパソコンに打ち込み、読み返している。その中には「紛争の火種は、初期消火する」という趣旨の書き込みがあるのだという。党勢が低迷し、離党予備軍リストが公然と出回っている今、紛争の火種は至る所にあるが、24年間に及ぶ政治活動の反省が詰まった「前原メモ」は、今回効果を発揮して初期消火できるだろうか。全体状況をみて極めて厳しい状態であることは間違いない。

(写真=時事通信フォト)