ジカ熱の原因ウイルスで妊婦が感染すると新生児が小頭症を患う危険性があるということで知られる「ジカウイルス」を、増殖メカニズムから治療が難しく最悪の癌の一種として恐れられる「膠芽腫」の細胞だけを狙って殺す癌ウイルス療法に活用することにアメリカの研究者が成功しました。

Zika virus has oncolytic activity against glioblastoma stem cells | JEM

http://jem.rupress.org/content/early/2017/09/05/jem.20171093

Zika virus used to treat aggressive brain cancer - BBC News

http://www.bbc.com/news/health-41146628

ジカ熱はジカウイルスによって引き起こさせる感染症で、感染経路はウイルスを媒介する蚊であることが知られています。妊婦がジカ熱を発症すると、新生児が小頭症を患うという関連性が強く推察されており、2016年に南米を中心にしたジカ熱の大流行で多くの小頭症新生児が誕生したことが世界的な問題となりました。

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有効なワクチンがないジカ熱ですが、ジカウイルスを使って悪性の脳腫瘍を根治するという研究成果が科学誌Journal of Experimental Medicineで発表され、大きな反響を呼んでいます。

ワシントン大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校の共同研究グループは、ジカウイルスによって悪性の脳腫瘍の一つである膠芽腫をことごとく殺す実証実験にマウスで成功しました。グリア細胞由来の脳・神経腫瘍のグリオーマ(神経膠腫)の一種である膠芽腫は、増殖能力が極めて高いだけでなく、脳内に浸透するように広がる浸潤性を持つため正常細胞と悪性腫瘍との境界が見分けにくく、全摘手術や放射性治療が困難で、最悪の脳腫瘍として知られるものです。



By Libertas Academica

マイケル・ダイヤモンド博士らの研究グループは、膠芽腫を発症したマウスの脳腫瘍内にジカウイルスを直接注射で投与することで、2週間後に脳腫瘍が著しく小さくなることを確認しました。ジカウイルスではなく塩水を注射した対象群に比べると、ジカウイルスを注入されたマウスは生存期間も有意に長いこともわかっています。

また、ジカウイルスを脳腫瘍に注入しても脳細胞に副作用を引き起こさず、膠芽腫のみを攻撃したことも確認されたとのこと。ジカウイルスが成人の脳に大きな被害をもたらさず、新生児の脳に障害を与える原因は、新生児の脳に豊富に含まれる幹細胞を攻撃するからだと考えられています。幹細胞を攻撃するジカウイルスは、激しいスピードで増殖を続ける膠芽腫の幹細胞だけを選択的に攻撃したことで、膠芽腫の成長が殺されたと研究者は推察しています。



ウイルスが癌細胞を殺すことを利用した癌治療(癌ウイルス療法)自体は珍しいものではありませんが、最悪の脳腫瘍である膠芽腫をジカウイルスが攻撃するという発見は、打つ手のなかった膠芽腫の治療法開発を大きく前進させる可能性があります。ダイヤモンド博士は、ジカウイルスを使って膠芽腫を攻撃する臨床試験を18カ月以内に開始することを希望しています。