香川真司が日本代表としてW杯で輝くことはできるか。競争が激化する今、正念場だ【写真:Getty Images】

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言葉からにじみ出るW杯への並々ならぬ思い

 日本代表は先月31日のオーストラリア戦と5日のサウジアラビア戦を終え、無事に来年開催されるロシアW杯の出場権を確保した。課題が表出した一方、新たな選手の台頭などポジティブな収穫も多かった今回の2試合。コンディション不良もあって出番はなかった香川真司も、これまでの実績に関係なく安泰ではなくなった。9ヶ月後に世界の舞台で輝くために、背番号10に求められることとは何だろうか。(取材・文:河治良幸)

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 ホームでオーストラリアに勝利した日本代表は来年行われるロシアW杯の出場権を掴んだが、最終戦でサウジアラビアに敗れ、悔しさの残る幕切れとなった。もちろん大事なのは、ここから本大会に向け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のもとでいかにチームを強化していくか。この2試合は今後の選手選考の判断材料にもなる。

 オーストラリア戦はこれまで主力を担ってきた本田圭佑と香川真司を起用せずにアジア最強レベルのライバルに完勝を飾った。本田はそこからサウジアラビア戦に先発し、45分の出場時間で自他ともに満足なパフォーマンスを見せることができなかった。

 その一方で、香川はオーストラリア戦翌日の9月1日に、6月のシリア戦で負った左肩が完治していないと判断され、サウジアラビア遠征には帯同せず。そのまま所属クラブのドルトムントに戻っている。

「結果こうなったことをプラスに。素直にW杯に行くことがまずは目標だったので、自分が出て活躍する舞台に出ることが達成できたことは良かった」

 離脱前にそう言い残していた香川はロシアW杯をキャリアの大きな目標として捉えている。ブラジルW杯では予選後の1年間で明らかに調子が低下し、本大会まで状態を上げ切れないままチームを世界での勝利に導くことができなかった。そこから香川はことあるごとに日本代表への思いを口にしており、並々ならぬ意気込みを感じさせる。

「10月、11月もあるので。そこでどれだけの試合ができるか、相手とできるかが大事だし。個人がチームで意識高くどこまでできるか。ボク個人もさらにレベルアップするには、厳しい環境でどこまで結果を残していけるか。ドルトムントで素晴らしい環境があるので、戦っていきたい」

ハリルホジッチが確立した新たな勝ち方。香川にチャンスは?

 そう語る香川に悲壮感はなく、厳しい現状も前向きに捉えていることは間違いない。ただ、オーストラリア戦で[4-3-3]のインサイドハーフを務めた山口蛍と井手口陽介が見せたプレーは、香川の特徴と異なるものであったのも事実だ。仮に香川が良い状態でこの代表ウィークに入っていたとしても、戦術的な理由で先発していなかったかもしれない。それほどオーストラリア戦の狙いは明確だった。

 中盤で相手の起点を封じ、ボールを奪い、素早く裏のスペースを突く。指揮官が2ヶ月前から研究していたというオーストラリアに対し、見事なまでにはまった戦術と選手起用は香川の立場に大きく影響するものだったのだろうか。それはイエスともノーとも言えるだろう。

 オーストラリア戦で日本代表が見せたパフォーマンスはハリルホジッチ監督が2年半植えつけてきた方向性がダイレクトに出たように見えるかもしれない。実際にスタンダードである守備の“デュエル”や裏を積極的に狙う意図は明確だったが、オーストラリアのシステムやスタイルに応じた戦い方も表れていた。

 例えば素早くサイドの背後を狙うことで、相手の3バックの弱点を突くためのプランが普段以上に出ていた。相手のボランチにインサイドハーフの2人が徹底してプレッシャーをかけるというのも、現在のオーストラリアが必ずと言っていいほど彼らを起点としたショートパスからチャンスを作る傾向を見抜いた上での作戦だった。

 このオーストラリアと同じシステムやスタイルのチームが相手であれば、まさしく井手口と山口のインサイドハーフが最もはまるかもしれないが、攻撃の起点や攻め方が異なるチームであれば、守備の狙いどころも変わってくる。またオーストラリアと違い、あらかじめサイドにスペースを与えてくれないチームに対しては縦を狙う前の段階で中盤のタメや崩しのバリエーションも必要になってくる。

香川の特別な存在価値。まずはコンディション回復を

 オーストラリア戦でアンカーをつとめた長谷部誠を欠いたサウジアラビア戦では山口がアンカー、インサイドハーフには井手口とともに柴崎岳が起用された。しかし、スペインでたくましさを増した背番号7はポゼッションの預けどころとして何度か持ち味を出したものの、攻撃のスピードアップで周りと合わないシーンが目立ち、ラストパスも相手の守備にカットされるなど、期待ほどの存在感は発揮できなかった。

 今回の柴崎の起用から想定できるのは、ハリルホジッチ監督が闇雲に縦を狙うだけでなく、中盤に攻撃のクオリティを高める選手を今後も起用していく余地があるということだ。もちろん相手がどんなチームであろうとスタンダードとして守備での貢献は求められるが、そこは香川も欧州で身につけているところであり、山口や井手口ほど先鋭的でなくとも要求される仕事をこなすのは可能だ。

 もちろんチームの中で香川の存在価値を決定づけるのは攻撃面でのスペシャリティであり、チャンスメイクやゴール前のフィニッシュに質や決定力を加える仕事になる。香川自身が言うように、まずはドルトムントで出場時間を増やし、コンディションをしっかり上げることが最低限のノルマになる。そして、役割の似たライバルとの競争の中で、攻撃のスペシャリティを発揮していけるかが再び主力として重用されるためのカギになる。

 10月にはハイチとニュージーランドをホームに迎えての親善試合が予定されているが、香川にとって真価を示すべきタイミングは欧州遠征が見込まれる11月だろう。そこで日本代表のスタンダードと個人のスペシャリティを発揮できるかどうかで、その後の位置づけも大きく変わってくるはずだ。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸