大和証券グループ本社執行役社長CEO 中田誠司氏

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2017年4月、国内二大証券会社のトップが交代した。両社長とも営業経験が長く、営業部門のトップを務めてきた。2人に自身のキャリアでのターニングポイントといま描く今後の戦略を聞いた。後編は大和証券グループ本社の中田誠司新社長。

―― 証券マンとしてキャリアのなかで大事にしてきたことは。

当社での34年間のうち、20年間は法人部門でキャリアを積んできた。法人営業になりたての頃は、接待で平日は毎晩宴席、週末はゴルフが当たり前の時代だった。しかし、新任の私が担当するのは他社が主幹事を務める会社が多く、接待できる立場ではなかった。そこで、他社との差別化を図るため、顧客を訪問する際は、常に顧客の課題を解決するためのストーリーを組み立てて提案することを徹底した。

当時はまだそういう営業は珍しく、お客さまにアポイントを取ると、「今日はどんな話が聞けるのだろう」と楽しみにしていただけた。ただ、そのやり方は担当するすべての会社にはできないため、10社程度の重要な顧客に絞り込むことで、いろいろな案件を引き受けることができた。その後、法人部門の本部長になってからも、すべてを網羅しようとせず、ターゲットを絞り込み、そこにリソースを集中するよう指導を徹底した。

―― 今後のキーとなる戦略は。

「クオリティナンバーワン」を追求していく。顧客のニーズを引き出して喜ばれる提案をするには、知識と、自分でストーリーを考え組み立てる能力が必要だ。しかし、これまでのように本部から支店へのトップダウンでは、上に従うだけで自分たちで考えない。そのため、支店単位で顧客の状況を踏まえて戦略を考え、行動する組織体制に変更した。この変更は、顧客本位の業務運営にもつながる。そのために必要な知識やスキル、マインドは、入社後3.5年目の社員を対象とした研修制度を新設して徹底的に磨いてもらう。

―― 営業職の再雇用の年齢制限の撤廃を打ち出したが、そのねらいは。

超高齢化社会が今後本格化する。日本の人口動態と資産移動を分析すると、今後20年間は、国民の金融資産の大半は65〜90歳ぐらいの年代に滞留する。その世代へのアプローチが重要になる。今年度下期から、パイロット店で超高齢のお客さま専用の営業チャネルをスタートさせる予定だ。今は、高齢になっても心身ともに元気なお客さまが増えている。そうした状況に合わせて、当社で高齢の営業員が活躍しても不思議ではないし、年齢が近いメリットもある。社員にとっても、大和でしっかりと仕事をしていれば、何歳でも働き続けられるというキャリアパスが見えれば安心できる。女性の就業率も、そろそろ頭打ちになる。今後日本の労働生産性を高めていくには、もっとシニアにフォーカスすべきだ。

――19時前退社にも取り組んでいる。

10年前から継続しており、育児中の女性も働きやすくなった。また、退社後の自由時間に勉強する人が増え、CFPホルダーは金融機関のなかでナンバーワンになっている。

―― 人工知能(AI)の活用は。

コンタクトセンターでAI搭載のオペレーターを使うなど、業務効率化やサービスを補完する部分で活用していきたい。ただ、AIがビジネスの中心にくるとは考えていない。フェース・トゥ・フェースでのコンサルティングの重要性は、今後も変わらないはずだ。

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大和証券グループ本社執行役社長CEO 中田誠司
1960年、東京都生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券へ入社。2007年大和証券グループ本社執行役。09年取締役、16年副社長などを経て、17年4月より現職。

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(大和証券グループ本社執行役社長CEO 中田 誠司 構成=増田忠英 撮影=研壁秀俊)