7月19日、融創中国と富力地産との戦略的パートナシップを結ぶとして会見を開いた万達集団(ワンダ・グループ)トップの王健林氏(Getty Images)

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 習近平政権の腐敗取り締まりの対象は、権力と癒着する企業家、いわゆる政商にも広がっている。中国一の大富豪・王健林氏も例外ではない。王氏が率いる複合企業・大連万達集団(ワンダ・ グループ)はここ数カ月間で、約8割の国内産業を売却し、経営の主体である不動産から完全撤退せざるを得ないほど、追い込まれている。かつて「打倒ディズニー」と豪語した敏腕経営者は、今やすっかり勢いを失った。

 家族経営の零細企業から世界有数のコングロマリットに飛躍したワンダ・ グループ。創業者の王健林会長は米経済誌「フォーブス」2015年の中国の長者番付トップとなり、資産は約300億ドル(約3.62兆円)とされる。その成功の裏には、政治権力との癒着があると言われている。

 米ニューヨークタイムズは2015年4月、「万達帝国の王健林、ビジネスと権力階級を意のままに操る」と題する記事で、王氏は共産党高層に人脈を広げ、利権関係を築いたと報じた。記事では、重慶市元共産党トップの薄熙来(汚職などで無期懲役服役中)、政権から退いた賈慶林・元中央政治局委員、王兆国・元中央政治局委員の名が挙がった。

多額の銀行融資を受けていたワンダ・グループ

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 中国では、党高官や政府上層部に人脈がなければ、意のままに資金調達するのは不可能だ。ワンダ・ グループは中国建設銀行など複数の国有銀行から潤沢な融資を受けて、あらゆる分野に参入した。

 2012年から、ワンダ・グループはレバレッジによる海外企業の買収を積極的に仕掛けており、現時点で海外の映画館やスポーツ関連企業の買収・合併(M&A)に約2500億元を投じているとされる。官製メディアは最近、海外投資の資金は銀行の借り入れだと報じ、同社が資金の海外流失を招いていると批判した。

 銀行は資金の回収ができなければ、多額の不良債権を抱えることになる。こうした積極的な海外企業の買収によって、国内の金融リスクが高まっていく。 

 加えて、中国の外貨準備高は、3年も経たないうちに約4兆米ドル(約440兆円)近くから約3兆米ドル(約330兆円)と、1兆米ドル(約110兆円)も減少した。政府はデレバレッジ(債務削減)に躍起になっている。

王健林氏、外貨流出の「元凶」と見なされたか

 

 ワンダ・グループの有利子負債額は発表されていないが、報道によると、6000億元規模(約10兆円以上)に上るという。中国当局は6月、国内大手行による大連万達集団への融資中止を命じた。これは、習近平氏の指示によるものだとも伝えられた。王健林氏は多額の外貨流出をもたらす「元凶」と見なされているようだ。

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 ここ数カ月間、ワンダ・グループは全77のホテル、テーマパーク、商業施設、複合型リゾート施設など8割の国内事業を売却し、主体である不動産業から完全撤退すると発表した。負債率を減らすためだとしている。

 複数の中国メディアによると、8月下旬、王氏と家族は中国国内空港からプライベートジェットでロンドンに飛び立とうとしたが、空港で一時身柄を拘束されて出国を止められたという。現在、一家には海外渡航禁止令が出ているという。同社は報道を否定している。

 最近、大企業トップがあいつぎ身柄が拘束された。銀行・証券に参入する大手企業グループ「明天集団」の創業者である肖建華氏会長や、臂平氏の孫娘の婿で、保険大手の安邦保険集団の呉小暉会長らに続いて、王氏とそのワンダ・グループは次の取り締まり対象との見方が強まっている。

大物政商の「後ろ盾」の凋落

 改革開放がはじまって30数年間、中国では企業経営は政治権力のバックアップがなくては大成できず、政界と経済界の利権関係は常識となった。

 「ほぼすべての汚職案件には、幹部の周辺に、甘い汁を吸おうとする商人たちが群がっている。どの汚職事件にも、権力と金の裏取引がある。権力を制限することは中国社会の難題の一つ」。中国官製メディアが報じた習近平・国家主席の談話の一部だ。

 大物政商の相次ぐ逮捕は、彼らの「後ろ盾」となっていた勢力の凋落を意味する。著名な経済学者・何清漣氏は記事で、「いまや呉小暉氏の『臂平氏の孫娘の婿』という肩書きや、王健林氏の上層部に通じる人脈は、無価値となってしまった」と指摘した。

(翻訳編集・叶清)