専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第120回

 さあ、みなさん、今回は誰でも一度は通る”青春の門”的なコースの、あるあるネタを紹介しましよう。

 それはどこか? というと、河川敷の大衆コースです。ゴルフを覚えたての頃、一度は連れていってもらったことがあるでしょ。今でも、リハビリとか、初心者のお付き合いとか、こっそり練習ラウンドをする”こそ練”とかで、何かとお世話になっているのではないでしょうか。

 そこでのありがちな話は、冷静に考えれば当たり前のことだけど、意外とびっくりという出来事が多いです。

 まず、河川敷コースに行って驚くのが、クラブハウスは結構立派だったりするのですが、いざ堤防を越えてコースに出てみると、朽ち果てたスタートハウスがもの悲しいです。このギャップに、まず驚かされます。

 河川敷コースの多くは、クラブハウスが土手や堤防の外側にあり、そこは立派な鉄筋の建物になっています。ただし、コースは大きな意味で言えば川の中、つまり堤防の内側にあるわけです。そこでは河川敷独特のルールがあって、恒久的な建造物は建てられません。

 増水や洪水のときには、すみやかに移動できるもの、という取り決めがあるんですね。ゆえに、豪華なスタートハウスなんておおよそあり得ません。そして、よくよく見れば、スタートハウスにはタイヤがついていることに気づきます。移動できるトレーラーハウスになっている場合が多いです。その他、トイレも工事現場にあるような簡易式のもの。これも、川が増水したら移動します。

 また、河川敷コースでは管理上、ゴルフ場と他の河川敷との境界を区別する柵やフェンスがありません。だから、ボールを大きく曲げたりして、他の敷地に打ち込んだりすると、散歩しているおやじに当たりそうになります。

 一応、防護ネットはありますから、大丈夫っちゃ大丈夫ですけど、よくネットに穴が開いている場合があるのも河川敷コースの”特徴”です。ネットがあるから安心なんて思わないで、気をつけてプレーしましょう。

 境界の柵がないわりには、ゴルフ場は結構な借地料を年間契約で払っているそうです。以前、河川敷でコースや練習場を経営している方に、そんな話を聞きました。だから、お客さんがガラガラだと赤字だそうで、早朝から夕方までフル回転していないと、儲からないみたいですよ。

 ちなみに、ゴルフ場と他の場所との境界は、境界標というコンクリート製のOB杭のデカいやつで区分してあります。でも、そんなのには誰も気づかないでしょうから、散歩中の人がコースに迷い込んだり、ラウンドしている人がボールを探しにいったらコースを出てしまって通行人に出くわしたり、ということがしばしばあるのです。

 さて、いよいよラウンド。河川敷コースでは、昔ながらの手引きカートが当たり前です。「貧乏くさい」なんて文句を言う人もいますが、それも河川敷コースならでは。風情があって、いいと思いますけどね。

 結局、河川敷には充電するところがないので、電動カートは現実的にはちょっと厳しいです。堤防の外にあるクラブハウスが近いところでは、電動カートを準備しているコースもあるようですが。

 あと、二輪で立ったまま移動できるセグウェイを導入しているコースがありますね。もちろん、充電スペースや格納スペースは、河川敷の外になります。

 そうそう、河川敷コースと言えば、人種の坩堝(るつぼ)です。河川敷を住居にしている謎の人々がたまにおりますから……。たぶん、借地料は払っていないでしょう。

 クリークを挟んで川岸の遊歩道では、そんな”河川敷の主”が早朝散歩をしている姿が見受けられます。なるべくそっとしてあげましょう。

 さらに、池では釣りをしている人に遭遇したことがあります。あれには驚かされましたね。「ここはゴルフ場でしょ?」と思ったのですが、池が大きくて、コースの向こう側の岸はどうやらコースではないような様子。だから、釣り人がいても問題はないみたいです。

 池と言えば、雨上がりの増水時に行くと、河川敷コースでは池が大きくなっていることがあります。所詮、川の中の池ですから、水脈がつながっている場合もあるんですね。ですから、川が増水したら、当然池の水も増すわけです。逆に、池だった場所が干上がって、ただの窪地になっていることも河川敷コースではよく見かけます。



河川敷コースでは、思わぬ光景を目にすることが結構あるようで...

 河川敷コースでは、もちろん野良犬もいます。野犬というのか、誰かが河川敷に捨てたのでしょうか、野生化していますから、撫でたりしないでプレーに集中しましょう。

 昼頃を迎えると、どこからともなく音楽が聞こえてきたりします。どこぞでバーベキューでもやっているんでしょう。同時に、いい匂いが漂ってきます。こうなるともう、プレーどころではありません。無性に”ルービー”が飲みたくなってきます。

 肝心のプレーですが、河川敷コースを舐めていると痛い目にあいますよ。どのコースもクリークや池が結構あって、ナイスショットだと思っても、コロコロ転がってつかまってしまうことが多いですから。

 芝は雑草と混合になっている場合が多いです。これは、生命力の強い雑草の種が勝手に飛来して生えてしまうのでしょう。決して、コース側の”手抜き”というわけではありません。

 グリーンは高麗で遅め、というのが一般的です。それも管理上、仕方がありません。

 以前は増水してコースが水没してしまうのが数年に1回くらいでしたが、最近はゲリラ豪雨が多くて、わりと頻繁にコースが水没してしまいます。

 そうなると、流木の撤去に始まり、芝を洗って綺麗にして……と、結構手間がかかって、1週間ぐらいコースを休業せざるを得ないことも多いです。とにかく、増水したら、水が引くまで待たなければいけませんからね。それから、ようやくメンテナンスです。

 結局、繊細なベントグリーンだと、維持するのが大変。ということで、河川敷コースでは高麗グリーンを使っているところが多いのです。

 そんなわけで、大雨や干ばつのあとなど、河川敷コースでは見たことのないライのオンパレードです。全部地面だったり、泥で芝が茶色になっていたりとかね。

 そこで鍛えたら、相当うまくなると思います。その結果、昔は河川敷コースから、幾多のプロが輩出されたものです。

 河川敷コースはわりと近くにあって、電車で行けるコースが多いというのもいいですよね。しかも、手入れをしないで雑草を伸び放題にすると、「スコットランドのコースに似ている」という人もいます。

 電車で行ける全英オープンの会場だと思えば、いと幸せなり。まだ経験されていない方は、ぜひ一度、お試しあれ。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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