米国時間9月12日に行われるアップルのイベントは「iPhone10周年」を記念した特別なものになりそうだ(2016年のiPhone発表イベントで筆者撮影)

アップルは米国カリフォルニア州クパティーノで9月12日午前10時から、スペシャルイベントを開催すると通知した。アップルのウェブサイトなどで、日本時間9月13日午前2時からライブストリーミングで、イベントの模様を見ることができる。

今回のイベントは、「iPhone 10周年」を記念するイベントになるとみられており、アップルがこれからの10年のスマートフォンやテクノロジーに対して、どのようなビジョンを示すのかにも注目が集まる。

新しい施設でイベントを開催

イベントを前にして、新型iPhoneに関する情報は数多く報じられてきた。これまでのiPhone 7シリーズの後継機種に加えて、「iPhone X」や「iPhone 8 Edition」などと言われる新しい要素を採用したiPhoneが期待されてきた。また搭載されるソフトウェアも6月の開発者会議WWDC 2017で発表済みだ。


開催場所は「The Steve Jobs Theater」だ

その上で、どんな隠し球があるのか、また成否を占うポイントはどこにあるのか、3つのポイントで解説する。

第1のポイントは発表会場だ。アップルはメディア向けに発送した招待状に、開催場所として「The Steve Jobs Theater」という名称を記した。

この開催場所は、アップルが2017年4月から使用を開始し、現在も建設が続いている新社屋アップルパークに所在する1000人収容のホールの名前だ。共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏を記念したホールであり、今回外部向けのイベントに使用するのも初めてとなる。


2016年9月、アップルパークを紹介するティム・クックCEO(筆者撮影)

アップルのティム・クックCEOは、2016年3月にこれまでの本社にある通称「タウンホール」と呼ばれる会場を用いた9.7インチiPad ProとiPhone SEを発表したイベントで、「今回のイベントで、タウンホールでの発表は最後になる」として、アップルパークへの移転が間近であることを告げた。

しかしながら、2016年10月にMacBook Proシリーズ刷新の発表を行ったイベントでは、再びタウンホールが用いられ、建設が遅れていることが明らかとなっていた。

前述の通り1000人収容ということで、5000人以上の聴衆を集める世界開発者会議WWDC 2017の基調講演には、Steve Jobs Theaterは用いられなかった。こうした経緯の中で、今回のiPhone発表イベントが、新しいホールの初公開となった。

タッチアンドトライコーナーも併設

アップルパークのドローン撮影映像によると、Steve Jobs Theaterの地上部分は正円のロビーとなっており、ここから地下に降りると、1000人収容のホールとステージ、バックステージなどが広がった構造となっているようだ。

イベント自体はホールで行われることになるが、ホールの地階部分は発表された新製品のタッチアンドトライコーナーが設置されるとみられており、発表会自体をSteve Jobs Theater内だけで完結できる仕組みになっている。

新型iPhoneそのものも注目だが、アップルデザインとしては最大級となるアップルパークがどのような構造になっているのか、どのようにして新しいアップルの雰囲気を演出しているのかにも注目していきたい。

第2のポイントは価格だ。10周年を記念したiPhone X(10)、もしくはiPhone 8ともいわれる有機ELディスプレイを搭載する新型iPhoneは相当高額になりそうだ。以前から、今回の最上位モデルはこれまでのiPhoneよりも価格が大幅に高くなり、1000ドルを超えるともいわれてきた。

アップルはこれまで、iPhoneの価格について、4.7インチモデルでは649ドル〜、5.5インチモデルでは769ドル〜と設定してきた。大型ディスプレイモデルに120ドルのプレミアムを設定し、また記憶容量が倍増するごとに100ドルずつ高い価格を設定してきた。

3モデル発表されるとみられる新型iPhoneのうち、iPhone 7、iPhone 7 Plusの後継モデルは、引き続き、この価格展開を維持するものと考えられる。一方で最上位の新型モデルについては、全く異なる、より高い価格設定、つまりiPhone 7 Plus 256GBモデルの969ドルよりも高い価格設定になると考えられている。

その理由は、数多く搭載されるとみられる新しいパーツの存在だ。KGI Securitiesのアナリスト、Ming-Chi Kuo氏によると、価格上昇の最大要因は、5.8インチで端末の前面全てを覆う有機ELディスプレイになると分析する。

Kuo氏によると、これまでの大画面モデルであるiPhone 7 Plusでも45〜55ドルだったディスプレイパネルは、新型iPhoneでは120〜130ドルに高騰するという。

有機ELパネルを供給できるのはサムスンだけ

このディスプレイパネルを提供できるのは、iPhone発売時点ではサムスン電子1社のみであり、競争がない分、価格が高止まりしている可能性があると指摘する。

有機ELパネルの採用はiPhoneでは初めてだが、既にAndroidスマートフォンのハイエンドモデルでは採用が進んでいる。薄型化や曲面の実現、低消費電力、そして黒の表現が豊かになる点で、スマートフォンには適したディスプレイと言われてきた。

アップルの採用は有機ELパネルそのものより幅広い普及を後押しする反面、iPhoneの需要に耐えうるサプライヤーがサムスン以外に育っていなかったことを意味する。2018年以降は、LGやジャパンディスプレイもiPhone向けのパネル供給に参画すべく、アップルによる投資も行われてきたが、2017年の新型iPhoneには間に合っていないのが現状だ。

価格の問題はともかくとして、パネルが需要を満たすよう円滑に供給されていくのかも問題となる。

例えば、朝鮮半島情勢の緊迫化で、万が一交戦という事態になれば、経済活動そのものが停滞する可能性があり、アップルが有機ELパネルの供給を受けられないリスクをはらんでいる。もちろん、アップルによる現状でのリスク回避は不可能だ。

アップルはすでに「有機ELの次」と言われているマイクロLEDへの研究開発や投資を行っている。また米国のドナルド・トランプ大統領と鴻海精密工業のトップ、テリー・ゴウ氏が記者会見で発表した、ウィスコンシン州でのディスプレイパネル工場建設は、アップルの米国製パネルの採用の可能性をにおわせる。

第3のポイントは発売日だ。例年のスケジュールと今年のカレンダーから予測すると、9月12日のイベント開催後、9月15日に予約開始、そして1週間後の9月22日にiPhone発売、というスケジュールが組まれることになりそうだ。

日本も、新型iPhone最速発売の国になる

アップルは円滑な供給を行うため、iPhone発売日に発売する国を10カ国前後に限ってきた。メインの市場である米国、第2の市場となる中国、そして英国やドイツなどの西欧諸国に加えて、日本も最初の発売国のリストに含まれてきた。

今回の新型iPhoneについても、日本は最初の発売国に入ってくると考えられる。となると、日本は時差の関係で、ニュージーランドや豪州とともに、もっとも早いタイミングで発売される国になることが考えられる。そのため、世界のメディアから注目が集まるだろう。

iPhoneは、発売後しばらくは目玉のモデルが品薄となり、手に入れにくい状況が続くことが多い。例えば筆者が住む米国であっても、iPhone 7 Plusのブラックモデルは、9月の発売から2カ月たっても店頭在庫が揃わない状況が続いてきた。

入手しにくいのは毎年のことだが、有機ELディスプレイパネルを採用する最上位のiPhoneについては、その供給数がさらに厳しくなることが考えられる。発売されてもしばらくは入手できる人はほんの一握りになる可能性が高そうだ。

今回は有機ELモデルの発売国リストだけは、他の2種類のiPhoneとは別に用意される可能性もある。もしそうであったとしても、日本が最初の発売国に含まれるのではないか、と筆者は考えている。アップルは、これまで一貫して日本市場を重要市場と位置づけてきており、その姿勢は変わらないだろう。

イベント当日、Steve Jobs Theaterからのリポート、新型iPhoneの詳細レビュー、その他新製品のレビューを掲載していきます。また、さらに深い情報をほしい読者の皆さまには、松村太郎のシリコンバレー最新リポートもあわせてお読みになることをおすすめします。