明治時代に鳥取県が島根県に併合された後、鳥取の発展には人材育成が要と思い立ち、私財をなげうって山陰初の私立中学「鳥取県私立育英中学校」を開設した豊田太蔵(1856〜1937年)。

 その生涯を描いた小説「晩登(ばんとう)」が7日、発行される。参院選の合区などで改めて地方が問われる今、地方創生の原点ともいうべき生き方に焦点を当てている。

 鳥取中央育英高校(北栄町)の同窓会が創立110周年記念事業として、同校の前身・育英中の創設者を小説化した。米子市在住で県内の歴史をテーマにする小説家、松本薫さんが執筆。ペン画家の森井裕子さんが挿絵を描いた。A5判395ページ。

 豊田は明治9年に島根県に併合、同14年に再置と、揺れ動く鳥取県で青年期を送り、太平洋側に比べ発展が滞る山陰に慨嘆。「教育の遅れ、人材の不足」が原因と中学校設立を企図する。制度の壁、資金難などの障害が立ちふさがり、夢の実現には20年もの歳月を必要とした。豊田の雅号「晩登」を題名にする小説は、不屈の意志で地方における教育を振興した豊田の姿を活写している。

 「晩登」の小説化プロジェクトを2年前から進めてきた同同窓会は、「参院選で鳥取・島根が合区になるなど、現在と豊田が生きた時代がダブって見える中、豊田の人生は地方創生に向かう人に勇気を与える」と話している。同書は今井出版から発売し、1500円。