『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓(岩波新書)』(小谷みどり/岩波書店)

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 独身貴族もいずれは老いる。やがてくる〈ひとり死〉を迎えたとき、自分の葬儀はどうなるのだろうか。

 『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓(岩波新書)』(小谷みどり/岩波書店)は、〈ひとり死〉時代が本格化した未来の葬儀の変化を予測している。今後、一度も結婚していない生涯未婚者が続々と高齢者の仲間入りを始める。介護や看護は、プロに頼むことができる。しかし、亡くなったときに誰が葬式を出すか。従来は身内が行ってきたことだ。

 「死んだ後のことはどうでもいい」「遺骨は捨ててくれ」と公言する人は少なくない。自分は「無になるから」でよくても、公衆衛生上の観点から、遺体はその場に放置できない。自分は希望しなくても、誰かが動かなければならない。

 著者が2012年に実施した調査によると、葬儀の意味を問う項目で最も多かった回答は「故人とお別れする儀式」で全体の68.5%、次いで「故人の霊をとむらう儀式」が全体の24.6%であった。ほとんどの人が葬儀は「故人とお別れする儀式」であると考えているため、故人自身に身内や友人、知人がいない場合は、葬儀を執り行う意味がない。

 〈ひとり死〉時代に対応すべく、すでに自治体単位でいくつかの取り組みがなされている。例えば神奈川県横須賀市では、「エンディングプラン・サポート」と呼ばれる事業が2015年7月から開始されている。市役所の職員が葬儀、墓、死亡届出人、リビングウィルについての意思を本人から事前に聞き取り、書面に残して保管しておき、同時に葬儀社と生前契約を結ぶという仕組み。「エンディングプラン・サポート」を受けられる条件は、預貯金が250万円以下、土地と家屋を合わせた固定資産評価額が500万円以下、年金などの月収が18万円以下で、頼れる親族がいないひとり暮らし高齢者であること。このような生前に葬儀契約を支援する事業は、同県大和市などでも開始されている、という。

 海外に目を移すと、日本と同じように少子高齢化と長寿化、核家族化が進む台湾では、やはり日本同様、家庭内介護の限界と高齢者の孤立が新たな社会問題として露呈し始めている、という。そんな台湾では、数年前から合同葬儀が増えてきている。財源は市民からの寄付。簡素化した会場に複数人の遺影を並べ、簡略化された葬儀を一度に行うため、費用の軽減が図られている。

 また、スウェーデンでは、ビグラヴニングスアヴィフトと呼ばれる税金のようなものが国民に課せられており、これが葬式や納骨費用に充てられているという。

〈ひとり死〉を迎える人のなかでも、お金がなく、弔う家族がおらず、社会とつながりがない人たちは、「悲しむ人がいない死」で終わっていく。

 本書は、それが「時代の趨勢だから仕方ない」「それでも、葬儀や墓は大事だ」と述べたいのではない。「弔いが形骸化していく社会は、私たちにとって幸せなのか」という問題提起をすることで、周囲との人間関係を見つめなおす機会になることを、巻末で願っている。

文=ルートつつみ