北朝鮮が弾道ミサイル発射 ICBM発射実験に成功と発表(KCNA/UPI/アフロ)

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 北朝鮮への対応において、何かと不都合があって関係者が口にはしないものの、厳然とした真実がいくつかある。どれも、日米韓が一枚岩で協力するのを難しくする事実である。お互いその不都合な真実を認めた上で、協力を誓うほうがより固い結束になると思うが、どうだろうか。

●ICBMの重要性が日米韓でまったく違う

 北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を持つことの重要性が、日米韓でまったく異なる。

 米国は北朝鮮がICBMを持つと直接の攻撃を受ける脅威にさらされるので、大騒ぎになっている。

 一方、日本にとっては、北朝鮮が日本を射程に入れた中距離弾道弾を持ったときからあとは、ICBMを持ったからといって、危険度が増えているわけではない。だから、北朝鮮のICBMの開発は、日本にとっては米国ほど重要ではない。

 また、韓国にとっては、すでに通常兵力でソウルを猛攻撃されうる状態になっており、それ以後は北朝鮮が中距離弾道弾を持とうが、ICBMを持とうが、危険度は増えない。だから、北朝鮮の中長距離ミサイル開発は、韓国にとって日米ほど重要ではない。最近、海外各国のメディアがソウルの街中でインタビューしても、市民が平然としているのも、彼らにとっては危険度が変わっていないからだ。

 このように、ICBMの重要性が日米韓で異なるという「不都合な真実」には触れないで、日韓の政治的リーダーは北朝鮮がICBMを持つことの危険性を訴え、その近辺にレッドラインがあると強調している。それは、日韓の市民にとっては、腑に落ちないものがある。

 米国の危険性が増しているのを同盟国として座視しないという意思表明なのだと、率直に説明したほうがわかりやすい。

●在韓米軍が米軍を弱めている
 
 米国による北朝鮮への先制攻撃の可能性について語るとき、米軍は約2万9000人の在韓米軍を危険に晒す先制攻撃はしないといわれる。これが事実なら、在韓米軍が米軍の戦略的自由度を減じている。あるいは、たとえ事実でないとしても、そう外部から思われているだけで、戦略的自由度を減じている。つまり、在韓米軍の存在そのものが米軍を弱めている。

 現在の米軍は、高度に機械化・無人化されており、軍人の命がとても高く扱われるので、攻撃するときに米国軍人が近くにいないほうが、動きやすいのだ。逆にいうと、米国が先制攻撃を一つの選択肢としたときには、在韓米軍が撤退し始める。その時に、北朝鮮は米国の敗退と誤解し、増長してさらに過激な行動をしてくる可能性もある。

 在韓米軍は、残っていても困るし、引き上げても困るにっちもさっちもいかない存在になってしまっている。これも、不都合な真実である。

●日本が核保有を検討しないほうが周囲は不信を持つ
 
 日本の核保有について、国内では検討することすら大きな非難を巻き起こす。唯一の被爆国として、国民感情が許さないと。

 しかし、周辺国からしてみると、「国民感情」を理由に核を持たないと言われても、安易にそのまま信じる気になれない。国民感情などは、一つの事件で一夜にして変わることもあるからだ。リアリズムが支配する国際政治においては、「国民感情」を理由として持ち出すとかえって不信感が増す。

 国としての損得を考えれば、どういう条件のもとでなら核を持つほうがいいのか、あるいは、持たないほうがいいのか。そして、現在はその条件を満たしているのか。そういうことを政府や国会が、「感情」ではなく、ちゃんと理屈立てて議論をしたほうがいい。

 その結果、今の条件下では、核兵器を持たないほうが国益にとっていいという合意ができるのが好ましい。そうした検討は、国民感情を理由に検討すらしないよりも、日本の動きの予測可能性を増す。そうすれば、周辺国ももう少し安心できるし、その条件が変わらないように気をつけることもあるかもしれない。

 こうした不都合な真実を率直に認めて議論していかないと、民主主義国の外交は、いつかよりを戻せないほど国と国、国と国民が乖離していってしまう。それこそが、先の大戦から学んだことではないだろうか。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)