米国の市場調査会社IDCがこのほど公表した、仮想現実(VR:virtual reality)と拡張現実(AR:augmented reality)用ヘッドセット市場リポートによると、今年(2017年)4〜6月期における世界台数は、210万台となった。この台数は、1年前に比べ25.5%増加したものの、前の四半期から若干減少している。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

規模はウエアラブルの10分の1以下

 VRは、目の前にある実際の場面から離れ、完全にデジタル世界に没入するという技術。これを実現するものとしては、米フェイスブック傘下のオキュラスVRや、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)などが販売するヘッドセット(ヘッドマウントディスプレー)がある。

 一方のARは、目の前の現実の環境にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術だ。例えば、メガネ型ヘッドセットなどの情報機器を使い、現実の風景にさまざまな情報を表示すれば、工場などの作業現場で業務の効率化が大幅に向上するとして、産業分野での可能性が期待されている。

 しかし、今回のIDCのリポートを見る限り、この市場が本格開花するには、まだしばらく時間がかかりそうだ。例えば、同社が先ごろ報告していたウエアラブル機器の今年4〜6月期における世界出荷台数は2630万台。VR/AR用ヘッドセットの市場はこれと比較しても、規模が相当小さい。

(参考・関連記事)「転換期に入ったウエアラブル機器市場」

ARヘッドセットはわずか2%弱

 しかも、さまざまな分野で期待されているARは、さらに規模が小さい。IDCによると、この4〜6月期に世界で出荷されたVR/AR用ヘッドセットのうち、VR用ヘッドセットの比率は98%強。AR用は残りの2%弱にとどまっている。

 ARは、昨今流行しているモバイルゲームにも使われている。また、昨年大ヒットした「ポケモンGO」も手伝って、この技術はすでに一般消費者に身近なものになったと言われている。しかしIDCによると、AR用ヘッドセットはまだ、収益性の高い一部の産業分野で、企業向け製品として開発資源が投入されているのみ。この状況は今後しばらく続きそうだという。

ARの普及はスマホから

 一方で、AR技術はまずスマートフォンから普及が進むとIDCは見ている。例えば米アップルは、まもなくリリースするモバイルOS(基本ソフト)の新版「iOS 11」で、AR用アプリの開発を支援する「ARKit」を導入する。米グーグルも同様に、先ごろ、Android用のARプラットフォーム「ARCore」を発表した。

 これらにより、今年の終盤から来年にかけて、膨大な数の新たなスマートフォン用ARアプリが登場する。こうした動きを経て、消費者向けのメガネ型ARヘッドセットが製品化されていくが、それがある程度の量産化と手頃な価格になるまでには、しばらく時間がかかるとIDCは指摘している。

首位はサムスン

 VR用ヘッドセットの市場を見ると、現在のところ、この市場を牽引しているのは、スマートフォンを組み込み、その画面をディスプレーとして使う「スクリーンレス・ビューワー」。これには、韓国サムスン電子 の「Gear VR」や、グーグルの「Daydream View」といった製品がある。この4〜6月期のVR/AR用ヘッドセット世界出荷台数に占める、スクリーンレス・ビューワーの比率は50%強だった。

 そしてこれに、パソコンやゲーム機などと接続して使う「テザードヘッドセット」が43%のシェアで続いた。こちらは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation VR」や、オキュラスVRの「Oculus Rift」、台湾HTC(宏達国際電子)の「HTC Vive」といった製品がある。このうち、ソニーとオキュラスVRは製品価格の引き下げが奏功し、出荷台数の増加につながった。

 なお、この4〜6月期のメーカー別出荷台数は、1位から順に、サムスン(56万8000台)、ソニー(51万9400台)、オキュラスVR(24万6900台)、中国TCL通訊科技(10万6400台)、HTC(9万4500台)となった。

筆者:小久保 重信