味の素、冷凍ギョーザが担う世界戦略の重責

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味の素は冷凍ギョーザで国内シェアの約50%を握る。飲食店や海外企業の買収で、世界展開を加速させる計画だ(記者撮影)

「この店を中心に、味の素の世界戦略をどう立てられるか考えていきたい」――。味の素冷凍食品の吉峯英虎社長はそう意気込みを語る。

冷凍食品メーカー大手・味の素冷凍食品は9月7日、焼きギョーザを主力メニューにしたレストラン「GYOZA IT.」(ギョーザ・イット)を東京・赤坂に開業する。

「GYOZA IT.」とは、同社によると「ギョーザしよう」という意味。食べ物は焼きギョーザを中心にタパスや鉄板焼き料理を、飲み物はワインやスパークリングワイン、発泡日本酒などをそろえた。

狙いは焼きギョーザの世界展開


9月7日に開業し、5年間の期間限定となる「GYOZA IT.」(記者撮影)

席数は120席、平均客単価は昼で1000円前後、夜は3500円以上を見込む。主なターゲットは訪日外国人観光客で、スタッフは15カ国語に対応、5年間で延べ30万人の来店を目標にしている。

味の素は1970年に味の素レストラン食品(現味の素冷凍食品)が設立され、1972年に冷凍食品事業に参入。5年後のギョーザ発売50周年に向けて、5年間という期間限定の出店となる。その狙いを「この店を起点にして日本式の焼きギョーザを世界に広めること」(吉峯社長)と説明する。

ギョーザといえば中国というイメージが強い。ただ、発祥の地である中国ではチャオズと呼ばれる、水ギョーザや蒸しギョーザが主流で、日本式の焼きギョーザは少数派だ。

中国では主食として食べられているため、副食として食べられる焼きギョーザは「現地でほとんど展開していない」(味の素冷凍食品マーケティング本部マーケティング企画部長の大田茂氏)。

ギョーザのように、小麦粉で作った皮で具を包んで食べる料理は英語でダンプリングと呼ばれている。中国のみならず、イタリアの「ラビオリ」やポーランドの「ピエロギ」、チベットの「モモ」ほか、中央アジアやロシア、モンゴルなど、ユーラシア大陸で幅広く食べられている料理だ。


焼きギョーザを世界に広められるか?

味の素冷凍食品にとっても、ギョーザは重要な戦略商品となっている。味の素グループの冷凍食品事業の国内と海外の合算売上高は約2000億円。日本水産やニチレイに比べて規模は小さいが、冷凍ギョーザに限れば国内で約50%と圧倒的なシェアを誇る。

国内の冷凍食品市場はほぼ横ばいにとどまるが、冷凍ギョーザに限れば落ち込む年もあるが、おおむねプラス成長を維持している。

味の素冷凍食品は来る50周年に向けた拡大策の一環として、この7月にロゴやブランドビジョンを刷新。同7月中〜下旬の期間限定でJR両国駅に「ギョーザステーション」を出店するなど、販促活動を積極化させている。

一方、味の素グループとしては成長の見込める海外展開にも手を打つ。2019年度までの中期経営計画では、海外売上高を5274億円と2016年度比で約1000億円増やす計画を掲げるが、その重点戦略を担うのが冷凍食品事業だ。

2014年に米国の冷凍食品メーカーであるウィンザー社を約840億円で買収。買収効果も加わり、北米ではギョーザなどを含むアジア系冷凍食品の分野では市場シェアの4割ほどを握るようになった。

次に狙うのが欧州市場の開拓だ。味の素冷凍食品の推計によれば、欧州の冷凍食品の市場規模は約5.2兆円に達する。このうち、ギョーザを含むアジア系冷凍食品の市場規模は640億円ほど、このうち6割ほどが家庭用向け市場だ。わずか1%強の規模にとどまるが、近年は2ケタ成長を続けているという。

特にギョーザは伸び代が大きい。「小麦粉で作った皮で肉と野菜を包む料理なので、日本食の中でも特に栄養バランスもよくヘルシーだと思われているのではないか」と大田氏は話す。

だが、味の素グループの欧州食品事業の売上高は2016年度で約58億円。冷凍食品の販売が主で、そのほとんどが日本食レストランなど向けの業務用だ。

本格的な市場参入のためには「家庭用の販売チャネルを持っていないことが課題だった」(大田氏)。そこで親会社の味の素は7月、フランスの冷凍食品メーカー、ラベリ・テレトル・スージェレ社を買収。「北米の次は、欧州をターゲットに冷凍ギョーザを広めていく」(味の素冷凍食品の吉峯社長)方針だ。

かつて世界に「Ajinomoto」を広めたように、日本式の焼きギョーザを世界に広めることができるのか。GYOZA IT.の成否が、ひとつの試金石となりそうだ。